4. 成長投資か、株主還元か。経営陣が抱えるジレンマ
機関投資家の目線で見ると、INPEXの経営陣は難しい舵取りを迫られています。
「成長投資と株主還元を両立させようとしているが、矛盾していないか」という疑問が投げかけられると、泉田氏は資本配分のセオリーを解説しました。
基本的には、高いリターンが見込める成長機会があるなら、株主還元よりも事業投資を優先するのが正しい経営判断です。
しかし、仮にその投資案件のROICがWACC(7〜8%)を下回る場合、投資すればするほど企業価値を破壊することになってしまいます。それならば、自社株買いや配当として株主に還元した方が良いという判断になります。
「高いROICが取れる事業に投資をする、かつ規模が大きく取れるんだったらそれはなお良しっていうそういうことなんですよね」
INPEXは今期、成長投資を大幅に増額する計画を立てていますが、会社全体のROIC予想は6.0%に留まっています。
会社としては将来の成長のために投資を行いたいものの、それだけでは株主の要求リターンを満たせないため、累進配当や自社株買いといった手厚い株主還元も同時に行わざるを得ないという、苦しい台所事情が透けて見えます。
5. まとめ:投資家が注目すべき今後のポイント
地政学リスクという強力な追い風を受け、市場の「上方修正期待」を一身に背負って急伸するINPEXの株価。しかし、この上昇トレンドが本物かどうかは、今後の業績推移にかかっています。
泉田氏が指摘するように、もし次の四半期決算を経ても会社予想が据え置かれ、ROICが6.0%のままで着地するようなことがあれば、市場の期待を大きく裏切ることになり、現在の株価水準を維持するのは難しくなるでしょう。
投資家としては、原油価格の動向だけでなく、会社が発表する業績の修正や、事業ごとのROICが投資家の期待値(WACC)を上回ってくるかどうかに注目していく必要があります。
動画では、INPEXを取り巻くマクロ環境の変化や、AI・データセンター普及による電力需要増がもたらす構造的な追い風についても、泉田氏がさらに詳しく解説しています。詳しくはぜひ、YouTubeチャンネル「イズミダイズム」の動画本編をご覧ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
参考資料
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著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日