「周りの同世代は、一体いくら貯金しているんだろう?」――気ままな反面、病気や老後のリスクをすべて一人で背負う「おひとりさま(単身世帯)」にとって、他人の懐事情は最も気になる、しかし最も聞きづらいテーマではないでしょうか。
よくニュースなどで目にする「平均貯蓄額:〇〇万円」という数字を見て、「みんなそんなに持っているの!?」と驚く必要はありません。なぜなら、そこには一部の富裕層が跳ね上げる「平均値の罠」が潜んでいるからです。
本当に目を向けるべきは、データを上から順に並べた真ん中の数値である「中央値」です。
本記事では、金融広報中央委員会の最新調査データをもとに、30代から60代までのおひとりさまの「貯蓄のリアル」を一覧表で直視します。
その上で、統計が如実に物語る「貯蓄がある人」と「貯蓄がない(ゼロ)人」の二極化の壁を突破し、このインフレ時代を生き抜くための資産形成ルートを解説します。
1. 【おひとりさま世帯の金融資産保有額】年代別に「平均値・中央値」を一覧表でチェック
まずは、最新のおひとりさまの貯蓄状況について、金融経済教育推進機構「2025年 家計の金融行動に関する世論調査」をもとに確認していきます。
平均貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構「2025年家計の金融行動に関する世論調査」をもとにLIMO編集部作成
1.1 30歳代・おひとりさま世帯の「金融資産保有額(平均・中央値)」はいくら?
- 金融資産非保有:32.3%
- 100万円未満:14.2%
- 100~200万円未満:14.2%
- 200~300万円未満:4.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.8%
- 500~700万円未満:5.5%
- 700~1000万円未満:3.1%
- 1000~1500万円未満:5.5%
- 1500~2000万円未満:4.3%
- 2000~3000万円未満:2.5%
- 3000万円以上:3.4%
- 無回答:3.1%
- 平均:501万円
- 中央値:100万円
30歳代では平均が500万円を超える一方で、中央値は100万円にとどまっています。
金融資産を持たない人が32.3%いるほか、100万円未満が14.2%と、少額にとどまる層も一定数存在します。
一方で、3000万円以上の資産を保有する人も3.4%見られます。
1.2 40歳代・おひとりさま世帯の「金融資産保有額(平均・中央値)」はいくら?
- 金融資産非保有:32.1%
- 100万円未満:15.1%
- 100~200万円未満:7.1%
- 200~300万円未満:5.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.2%
- 1500~2000万円未満:1.2%
- 2000~3000万円未満:2.8%
- 3000万円以上:9.9%
- 無回答:2.5%
- 平均:859万円
- 中央値:100万円
40歳代では中央値は30歳代と同じ100万円ですが、平均は859万円まで増加しています。
3000万円以上の割合が約1割を占めている点も特徴です。
1.3 50歳代・おひとりさま世帯の「金融資産保有額(平均・中央値)」はいくら?
- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代になると中央値は120万円まで上昇し、平均も1000万円近い水準となります。
まとまった資産を保有する人がいる一方で、金融資産を持たない人が35.2%、100万円未満が10.1%と、貯蓄が少ない層も見られます。
1.4 60歳代・おひとりさま世帯の「金融資産保有額(平均・中央値)」はいくら?
- 金融資産非保有:30.4%
- 100万円未満:9.1%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:2.4%
- 300~400万円未満:4.5%
- 400~500万円未満:3.1%
- 500~700万円未満:6.0%
- 700~1000万円未満:4.8%
- 1000~1500万円未満:8.1%
- 1500~2000万円未満:4.1%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:15.6%
- 無回答:2.2%
- 平均:1364万円
- 中央値:300万円
60歳代では中央値が300万円まで上昇し、平均も1364万円となっています。
退職金や相続などの影響が考えられる一方で、金融資産非保有を含めて約4割が100万円未満となっている点も確認できます。
2. 「貯蓄がある人」と「貯蓄がない人」の違いとは
ここまで年代別の平均や中央値を見てきた通り、貯蓄額には大きなばらつきがあることがわかります。
その差は、主に以下のような点に表れます。
2.1 具体的にお金を把握しているかどうか
貯蓄の有無で差がつきやすいのが、お金の状況をどれだけ具体的に把握しているかという点です。
たとえば家計収支では、収入と支出を見える化することで「なぜ貯められないのか」を把握できるだけでなく、「何に使うべきか」「どの支出を抑えるべきか」といった判断もしやすくなります。
また、貯蓄額についても、現在の残高や毎月の積立額、このままのペースで将来いくらになるのかなど、具体的に確認しておくことが重要です。
さらに、老後の年金見込み額も「ねんきんネット」で確認できます。
公的年金だけで生活するのは簡単ではないため、自身の受給見込み額を把握しておくことが大切です。
2.2 自動的に貯まる仕組みを活用しているかどうか
日々忙しく、お金の管理に時間を割けない人も多い中で、「先取り貯蓄」の仕組みを取り入れることが有効です。
金融機関によっては、給与日にあわせて一定額を自動で積み立てるサービスが用意されているため、こうした仕組みを利用することで、無理なく貯蓄を継続しやすくなります。
2.3 お金に関する情報を取り入れているかどうか
資産運用にはリスクがあるため、「難しそう」「よくわからない」と感じて、情報収集自体を避けてしまうケースもあります。
しかし、情報を知っているかどうかで選択肢は大きく変わります。
はじめに基礎的な情報を押さえたうえで、内容をしっかり理解することが大切です。
そのうえでリスクを適切に捉え、自分の許容範囲の中で判断していくことが求められるでしょう。
3. 今日から始める家計の見える化と資産形成のスタートライン
「中央値のリアルな数字を見て少しホッとした」という方も、「自分が平均を大きく下回っていて焦った」という方も、大切なのは他人の数字に一喜一憂することではありません。
インフレで現金の価値が目減りし続ける今、おひとりさまが取るべき家計防衛策を整理します。
- まず「手取りの1割」を強制隔離する: 貯蓄がない人の共通点は「余ったら貯める」という思考です。給与天引きや自動振替を使い、口座に入った瞬間に見えないお金にすることが条件です。
- 固定費という「聖域」にメスを入れる: 食費や娯楽費を我慢する節約は長続きしません。スマホの格安プランへの乗り換え、サブスクの整理、不要な民間保険の解約など、「一度やれば一生引き下げられる固定費」から見直してください。
- 少額でもいいから「投資の果実」を得る: 貯蓄ゼロから脱出できたら、速やかに新NISAなどを活用し、インフレに負けない資産の置き場所を作ることです。月5000円からでも、世界経済の成長に乗る経験がマネーリテラシーを高めます。
おひとりさまの老後準備とは、誰かに頼れないからこそ、「過去の自分の選択(仕組み)が、未来の自分を救うシステム」を作ることそのものです。
まずは今月、通帳アプリを開いて固定費の総額を書き出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
4. 監修者のコメント
おひとりさまの貯蓄データを読み解く上で危惧しているのは「平均値と中央値の乖離」が年々広がっている、つまり「持てる者」と「持たざる者」の格差が完全に固定化しつつあるという事実です。
これは「意志の強さ」の問題ではなく、単に「貯まる仕組み(システム)」が家計に組み込まれていないだけの場合もあるでしょう。
特に単身世帯の場合、「自分が倒れたら家計の全機能がストップする」という致命的なリスクを常に抱えています。裏を返せば、意思決定者が自分一人しかいないため、あなたが「仕組みを変える」と決断した瞬間から、家計は大きく好転します。
「まだ若いから」「もう遅いから」と言い訳をせず、現行の新NISAなど国が用意した非課税枠を使い倒すリテラシーを身につけてください。
他人の平均値を超える必要はありません。過去の自分より一歩前に進むための方法を考えてみてください。