4月に入り、新年度がスタートしました。
今月15日は年金の支給日でもあり、ご自身の老後の生活設計について改めて考える方もいらっしゃるかもしれません。
「実際に、自分は年金をいくら受け取れるのだろうか」「受給開始のタイミングはいつが最適なのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、厚生労働省の公表データに基づき、厚生年金のリアルな受給額や、受給開始時期を調整できる「繰上げ受給」「繰下げ受給」の重要なポイントについて、わかりやすく解説していきます。
1. 厚生年金の受給額、月10万円未満と20万円以上ではどちらが多いのか?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給月額は15万289円です。
では、実際の受給者の中で「月10万円未満」の人と「月20万円以上」の人では、どちらの層が多いのでしょうか。
1.1 男女で見る厚生年金の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
1.2 受給額別の割合【全体1608万5696人】
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 30万円以上の割合:0.12%
データを見ると、月10万円未満の受給者は全体の19.0%である一方、月20万円以上の受給者は18.8%でした。
この結果から、わずかな差で10万円未満の層が多いことがわかります。
つまり、高額な年金を受け取っている人が多数派というわけではなく、比較的低い受給額の人も一定数いるのが実情です。
また、月15万円以上を受け取る人は全体の約半数を占めますが、20万円以上に達する人は2割弱にとどまっています。
この分布状況からも、公的年金だけでゆとりある老後生活を送るためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用や、より長く働くためのキャリアプランニングといった、自助努力による備えが重要になるといえるでしょう。
2. 年金の「繰上げ受給」とは?早く受け取る代わりに生涯減額される仕組み
老齢年金は、原則として65歳から受給が開始されます。
しかし、本人の希望により60歳から64歳の間に前倒しで受け取ることも可能で、これを「繰上げ受給」といいます。
早期に年金を受け取れるメリットはありますが、その代償として受給額が減額され、その減額された金額が生涯続くというデメリットがあります。
減額率は繰上げた期間によって決まり、1カ月あたり0.4%ずつ減っていきます。
繰上げ受給における減額率の計算方法
減額率は、繰上げたカ月数に応じて次の式で計算されます。
- 減額率(最大24%) = 0.4% × 繰上げたカ月数
※昭和37年4月1日以前に生まれた方は、減額率が「0.5%(最大30%)」となり、現行制度より高くなっています。
※一度請求手続きをすると取り消しはできず、減額された年金額が一生涯続きます。
例えば、最も早い60歳0カ月で請求した場合、年金額は24%減額されます。
一度手続きをすると変更はできないため、慎重に検討する必要がある制度です。
では、年金の「繰下げ受給」はどのような制度なのでしょうか。
3. 年金の「繰下げ受給」とは?受給額は増えるが注意点も
繰上げ受給とは反対に、年金の受給開始を65歳よりも後に遅らせることで、受給額を増やせる制度が「繰下げ受給」です。
繰下げた期間に応じて年金額は増え、1カ月あたり0.7%ずつ加算されます。最大で75歳まで受給開始を遅らせることが可能で、その場合の増額率は最大84%にもなります。
繰下げ受給における増額率の計算方法
増額率は、65歳になった月(誕生日の前日を含む月)から受給を開始する月までのカ月数によって決まります。
- 増額率(最大84%) = 0.7% × 繰下げたカ月数
最も遅い75歳まで繰下げた場合、年金額は84%増額されます。
※昭和27年4月1日以前に生まれた方は、繰下げの上限年齢が70歳のため、最大増額率は42%です。
※この制度を利用する場合、年金を受け取らない待機期間中の生活費をどのように確保するかが重要なポイントになります。
ただし、受給開始までの生活資金を自己資金で賄う必要がある点や、年金受給額が増えることで所得税・住民税や社会保険料の負担が増加する可能性がある点には注意が必要です。
また、万が一、年金を受け取る前に亡くなってしまった場合、増額分は支給されないことも覚えておくべきでしょう。
4. 繰上げ受給と繰下げ受給、実際にはどちらが多く選ばれている?
繰上げ受給や繰下げ受給は、実際にどのくらいの人が選択しているのでしょうか。
厚生労働省のデータによると、令和6年度末時点での利用率は、繰上げ受給が1.2%、繰下げ受給が1.9%となっており、繰下げ受給を選択する人の方が多くなっています。
特にここ数年は繰下げ受給を選ぶ人が少しずつ増える傾向にあり、年金額を増やしてから受け取りたいという考え方が広まりつつあることがうかがえます。
高齢になっても働き続ける人が増えていることも、この傾向の背景にあると考えられます。
4.1 70歳時点では繰下げ受給を選択する人が増加傾向に
70歳時点での受給状況に絞って見ると、繰下げ受給を選択する人の割合はさらに高まります。
令和6年度には4.2%に達しており、過去と比較して増加傾向が明確になっています。
法改正によって繰下げ可能な年齢の上限が引き上げられたことも、この流れを後押ししている要因の一つです。
その一方で、繰上げ受給を選択する人の割合は低い水準で推移しており、早期に受け取ることよりも「増やして受け取る」ことを重視する人が増えているといえそうです。
5. 自身のライフプランに合わせた受給方法の選択を
厚生年金の平均受給月額は約15万円ですが、実際の受給額には個人差が大きいのが実態です。
月10万円未満の人と月20万円以上の人の割合はほぼ同じであり、高額な年金を受け取っている人が多数派というわけではありません。
繰上げ受給は早くから年金を受け取れるメリットがある反面、生涯にわたって年金額が減額される点に注意が必要です。
一方で、繰下げ受給は年金額を大幅に増やせる可能性がありますが、受給開始までの生活費の確保や、税金・社会保険料の負担増といった課題も考慮しなければなりません。
これらの制度の特徴をよく理解した上で、ご自身の健康状態やライフプランに最も合った受給タイミングを選択することが、将来の安心につながるでしょう。
※当記事は再編集記事です。




