新しい親になる人は児童相談所から、「そろそろ赤ちゃんが生まれそうです」という知らせから始まります。赤ちゃんの性別はこの段階ではまだわかりません。生まれるまでは毎日手を合わせてお祈りすることになります。明日には会えるかなとか早く顔が見たいね、といった心境だと思います。

しかしここでまだ大事な問題が残っています。出産した母親が「我が子を縁組に出すべきか」と迷い場合もあるからです。なので、出産後の児童相談所職員は母親に何度も足を運んで意思の確認をするのです。病院を訪ねては母親の本当の気持ちにじっくりと耳を傾けるのです。

乳児院に預けたほうが良いのか養子縁組にするか、あるいは自分で何とか育てる方がいいのか、そしてそれは可能なのかといった諸々のことを短い期間で選択しなければならのです。

■何よりも子どもの幸せを願っての制度

勘違いしてはいけないのは、この制度はあくまでも子どもの幸せを願っての制度だということです。子どもが欲しい親の制度では無いということです。そして親になる覚悟とは親の側から育てている途中で子に対して離縁の申し立はできないという制度であることを本気で認識しなくてはいけません。

なので、養子にだす親の側の環境が、例えば予期せぬ妊娠をした「10代の未婚」の方の子どもであっても育てる覚悟が必要になりますし、あるいは、「中学生や高校生」が産んだ赤ちゃんも中にはおります。

生まれてくる子どもは親を選べないので、もっと過酷なのは精神障害のある母親から生まれてくる場合もあるといった、知的障害者が性被害を受けて妊娠出産というケースもあります。育てる側はもろもろの事情を飲みこんだ上で覚悟を決めてそして何よりも愛情を込めて家族になっていくことになるのです。

佐々木 泉二