安定した職業の代表格ともいえる「国家公務員」ですが、その給与や退職金事情が気になるという方も多いでしょう。
2026年3月26日に第一生命保険株式会社が公表した「大人になったらなりたいもの」調査結果でも、中学生男子や高校生男女の第2位に「公務員」がランクインしました。
また、同調査で保護者の方が「お子さんに、大人になったらなって欲しい職業」として挙げた職業でも、男女ともに第2位が「公務員」となっています。
多くの方が関心を寄せる「公務員」ですが物価の上昇や社会保険料の負担が増加する現代においても、そのイメージは変わらないのでしょうか。
実際のところ、同じ公務員であっても、退職する理由や勤務した年数によって、受け取れる退職金の額には大きな違いが生まれます。
この記事では、最新の公式データをもとに、国家公務員の給与や退職金に関する「リアルな実情」を詳しく解説していきます。
現在公務員として働いている方はもちろん、民間企業に勤務されている方にとっても、ご自身の将来に向けたマネープランを考える上で、きっと役立つはずです。
1. 国家公務員の給与体系とモデル給与例
人事院の資料によると、国家公務員の給与は、基本給にあたる「俸給」と、各種手当である「諸手当」から構成されています。俸給は、職務の複雑さや責任の度合いに応じて定められた俸給表によって決まります。
1.1 初任給の例
具体的な給与水準のイメージとして、人事院が示しているモデル給与例を見てみましょう。本府省勤務の場合における、新卒初任給の例は以下のとおりです。
- 総合職・大卒(行(一)2級1号俸の場合):月額約30万円、年間給与約490万円
- 一般職・大卒(行(一)1級25号俸の場合):月額約29万円、年間給与約470万円
※上記は俸給月額の例であり、実際の支給額には扶養手当や住居手当、期末・勤勉手当(ボーナスに相当)などが加算されます。
1.2 転職して公務員になった場合
初任給以外の例も確認しましょう。
人事院では、「国家公務員に採用される前に職歴があり、一般職試験(大卒)に合格して採用された場合」というケースでもモデル給与例を公表しています。
- 大学卒業後6年の職歴があり、一般職試験(大卒)に合格して採用された場合(行(一)1級49号俸の場合):月額約41万円、年間給与約630万円
- 大学卒業後10年の職歴があり、選考により採用(係長級・一般職(大卒)相当)された場合(行(一)3級13号俸の場合):月額約47万円、年間給与約730万円
- 大学卒業後10年の職歴があり、選考により採用(課長補佐級・総合職(大卒)相当)された場合(行(一)5級1号俸の場合):月額約56万円、年間給与約880万円
※上記は一例であり、初任給は採用後の職務に応じ、有する経歴、能力等を考慮して決定されます。
このような俸給月額が、勤続年数や役職に応じて積み重なり、最終的な退職手当の算定基礎となるのです。
2. 国家公務員の退職金は平均いくら?退職理由別の支給額をデータで解説
続いて退職金についても見ていきましょう。
内閣官房内閣人事局が公表した『退職手当の支給状況』によると、国家公務員の退職手当は、全体の平均で約1000万円となっています。
ただし、この金額には自己都合で退職したケースなども含まれています。定年まで勤め上げた場合に限定すると、平均支給額は2000万円を超える水準になることがデータからわかります。
2.1 【常勤職員】退職理由別の平均支給額
- 定年:2160万1000円
- 応募認定:2470万3000円
- 自己都合:345万4000円
- その他:263万円
- 合計:1094万3000円
2.2 【行政職俸給表(一)適用者】の場合
- 定年:2148万8000円
- 応募認定:2277万円
- 自己都合:331万5000円
- その他:210万円
- 合計:1389万6000円
これらのデータが示すように、退職金の額は「どのような理由で退職したか」によって大きく変動するのが実情です。
一方で、平均額は一部の高額な退職金を受け取った事例によって、全体の数字が引き上げられている可能性も考えられます。「実際に高額な退職金をもらっているのは、ごく一部の人ではないか」と感じる方もいるかもしれません。
そこで次の章では、退職金の「金額帯別の受給者数」に焦点を当て、どの層に最も多くの人が分布しているのか、いわゆるボリュームゾーンを明らかにしていきます。
3. 退職金のリアルな金額は?支給額の分布から見る最多価格帯(ボリュームゾーン)
続いて、内閣官房内閣人事局の『退職手当の支給状況』を基に、常勤職員の退職手当について、支給額別の受給者数を確認してみましょう。
- 500万円未満:113人
- 500~1000万円未満:120人
- 1000~1500万円未満:292人
- 1500~2000万円未満:2166人
- 2000~2500万円未満:6953人
- 2500~3000万円未満:1228人
- 3000~3500万円未満:61人
- 3500~4000万円未満:15人
- 4000~4500万円未満:61人
- 4500~5000万円未満:22人
- 5000~5500万円未満:6人
- 5500~6000万円未満:4人
- 6000~6500万円未満:27人
- 6500~7000万円未満:5人
- 7000~7500万円未満:0人
- 7500~8000万円未満:0人
- 8000万円以上:0人
退職金の金額帯別に受給者数を比較すると、最も人数が多いのは「2000万~2500万円未満」の層であることが明確にわかります。
この結果は、定年までしっかりと勤め上げた公務員にとって、「退職金2000万円前後」という金額が、一つの現実的な目安であることを示しているといえるでしょう。
4. 勤続年数で退職金はこう変わる!年数別の平均支給額を比較
最後に、「勤続年数」という視点から、平均退職金額がどのように変化するのかを見ていきましょう。
4.1 【常勤職員】勤続年数ごとの平均退職金額
- 5年未満:169万1000円
- 5年~9年:394万円
- 10年~14年:729万円
- 15年~19年:855万8000円
- 20年~24年:1366万円
- 25年~29年:1581万4000円
- 30年~34年:2030万3000円
- 35年~39年:2328万6000円
- 40年以上:2246万4000円
4.2 【行政職俸給表(一)適用者】勤続年数ごとの平均退職金額
- 5年未満:86万8000円
- 5年~9年:376万3000円
- 10年~14年:768万8000円
- 15年~19年:1023万7000円
- 20年~24年:1510万円
- 25年~29年:1658万8000円
- 30年~34年:2061万円
- 35年~39年:2216万6000円
- 40年以上:2158万4000円
※「x」は秘匿
勤続年数が長くなるにつれて退職金の額も増加する傾向にあり、常勤職員の場合、勤続年数が30年を超えると平均で2000万円台に達することがわかります。
近年、民間企業においては退職金制度そのものを見直したり、廃止したりする動きも見られます。
このような社会情勢を考慮すると、たとえ勤続年数が5年未満と短くても、一定額の退職金が支給される点は、公務員という職業が持つ大きな魅力の一つといえるかもしれません。
5. まとめ:定年退職で2000万円も可能だが、計画的な資産形成が重要に
最新のデータから見えてきたのは、国家公務員であっても「定年まで勤め上げることで、約2000万円というまとまった退職金が現実的になる」という事実です。
これは裏を返せば、キャリアの途中で自己都合退職を選択した場合、受け取れる金額は大幅に下がることを意味しており、「公務員だから無条件で老後が安泰」とは一概にはいえません。
また、公務員の退職手当の水準も、過去のピーク時と比較すると減少傾向にあります。
この状況は、民間企業で働く人々にとっても共通の課題です。「退職金があるから大丈夫」と過度に安心するのではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISA(少額投資非課税制度)などを上手に活用し、現役で働いているうちから計画的に資産を形成していくことが、これからの時代においてますます重要になるでしょう。
ご自身のライフプランと照らし合わせながら、将来に向けた準備を早めに始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
太田 彩子