2. なぜ値上げしても売れる?圧倒的なマーケティング力
近年、日用品業界では原材料価格の高騰が大きな課題となっています。
「中東情勢などの影響で原材料の輸入コストが上がり、業績に悪影響が出るのではないか」という心配の声が上がると、泉田氏は決算説明会資料のデータを用いて、花王の驚くべき対応力を明らかにしました。
2.1 原材料高を跳ね返す価格転嫁力
企業の営業利益が前年からどう変化したかを要因別に分解した図を「ウォーターフォールチャート」と呼びます。これを見ると、2025年12月期は原材料コストの上昇によって85億円の減益要因が発生していました。
しかし、花王はこれを単に被ることはしませんでした。トイレタリー(洗剤などの日用品)や化粧品の販売価格を引き上げることで、90億円の増益要因を生み出し、原材料高のマイナスを完全にカバーしたのです。
泉田氏はこの企業の姿勢を高く評価し、次のように語っています。
「原材料が上がったら販売単価を上げていますね。価格に転嫁しつつも数量も増えているので、増益となっています」
一般的に、商品の値段を上げれば消費者は買い控えをし、販売数量は落ちてしまうものです。しかし花王は、価格を引き上げながらも販売数量の増加によってさらに160億円の増益要因を生み出しています。
2.2 データに基づく緻密な戦略
なぜ、値上げをしても消費者は花王の商品を買い続けるのでしょうか。その背景には、同社の強力なマーケティング戦略があると泉田氏は分析します。
「花王は昔からマーケティングが強いと有名。データをゴリゴリ見ながら、これは値上げする。これは値上げしない。など動いているのではないでしょうか」
消費者を騙すようにこっそり容量を減らすのではなく、原材料が上がった分を正当に価格に転嫁する。それでも顧客が離れないのは、花王のブランド力と、どの商品をどのタイミングで値上げすべきかを見極める緻密なデータ分析力があるからです。
この価格コントロールの巧みさこそが、インフレ環境下でも花王が利益を伸ばし続けられる最大の理由と言えます。
