『わたし、定時で帰ります。』が最終回を前に盛り上がりを見せていますね。筆者も毎週固唾を飲んで見守っています。
とくに気になるのが賤ヶ岳さん。働きながら子育てをしている身としては彼女や夫の働き方や子どもとの関わり方に興味津々です。夫が育児休業を取得している姿を見て「うらやましいなあ」と思ったものです。そこで今回は父親の育児休業の取得や子育てへの参加について考えてみました。
産後の育児休業を夫が取得!
賤ヶ岳さんのご主人は、産後の育児休業を取得した双子の面倒を見ていました。産後の育児休業を取得するのは女性ばかりという日本では、非常に珍しい形態です。内閣府男女共同参画局が発表した統計によると、2018年の男性の育児休業取得率は6.16%でした。これには1日だけ育児休業を取得した割合も含まれています。それに対して女性の取得率は83.2%です。
賤ヶ岳さんご夫婦のようなスタイルで子育てができる世帯は、まだまだごく少数ということがわかります。
子育て天国&女性の就業率が高いスウェーデンでも40年かかった
日本では、まだまだ男性の育児休業取得は「当たり前のこと」とは言えず、取得したくてもできない方や、取得しようと考えない方がほとんどです。そのせいもあってか、子育て中の女性の雇用形態は非正規が多くなっています。『平成29年 国民生活基礎調査の概況』によると、就業している母は70.8%と増加傾向にあるものの、そのうち正規の職員・従業員は24.7%、非正規の職員・従業員は37%、その他は9.1%となっています。
その理由は様々だと思いますが、大きな要因の一つが、子育てと仕事の両立の難しさだと思います。保育園問題、育児と家事、仕事の両立問題などさまざまなハードルを乗り越えなければ働くことはできません。
ところが、子育て支援先進国のスウェーデンでは、3歳から6歳までの子どもを持つ女性の就業率は83.6%となっています。0歳児に限っても73.3%です。(日本の0歳児の母の就業率は42.4%。『平成29年 国民生活基礎調査の概況』より)
日本とスウェーデンの環境は大きく異なりますので、単純に比較できませんが、スウェーデンでここまで子育て中の女性の就業率が高いのは、子育て天国とも言える育児支援制度にあると考えます。
産休、育児休業は男女ともに取得可能で育児休業中でも所得の8割が支給されます。また、子どもの看護休業も完備されており、急な発熱などで休んでも手当が支給されます。家事代行を依頼したら費用の50%が「税額控除」となります。
産休育休中の所得保障の手厚さなどにより、男性の育児休業取得率も88.5%(12年)と日本とは大違いです。
「スウェーデンってすごい!日本もこの制度を取り入れればいいのに!」と筆者は思いました。
しかし「すべての育児休業取得日数における男性の取得割合の推移」を確認して愕然としました。なんと、スウェーデンで男性を含む育児休業制度が取り入れられてから現在の取得率に至るまでに40年もかかっているのです。1974年に男女の育児休業制度が導入された当時の、男性の取得率はたったの0.5%。これはすべての育児休業取得日数における男性の取得日数の割合なので、日本の男性の育児休業取得率とは比較できません。しかし、日本の現状と比較して、決して高いものではないと考えます。そして、38年が経過した2016年にようやく27%になっているのです。
早くから、男性の育児休業制度が取り入れられたスウェーデンでも、長い年月をかけて、仕組みと制度が浸透し、男性でも育児休業を取得しやすい国に変わっていきました。
だから、男性の育児休業制度が誕生したばかりの日本で、突然スウェーデンを目指すことは簡単なことではないのです。
日本の育児休業制度の施行は1992年、所得補償がスタートしたのが95年でした。当時から男女ともに使える制度だったものの妻が専業主婦や育児休業中は、男性の育児休業の取得を拒否できるとする規定を設けている会社が多く、育児休業取得の障壁になっていました。しかし2010年に、配偶者の状態によって育児休業の取得の拒否が禁じられるようになり、ようやく日本の事実上の男性の育児休業制度がスタートしたと言えます。
賤ヶ岳家は、働く女性にとっては理想的な協力体制ですが、まだまだ日本ではすべて家庭が彼女たちのように子育てをするのは難しいでしょう。