4. 「繰上げ」と「繰下げ」どちらが主流?最新データで見る受給選択の動向
老齢厚生年金(特別支給を除く)の受給権者の間で、繰上げ受給や繰下げ受給がどの程度利用されているか、その状況は近年変化を見せています。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末時点で、繰上げを選択した人の割合は1.2%、繰下げを選択した人の割合は1.9%となり、繰下げ受給の利用が繰上げ受給を上回っています。
繰上げ受給の利用率は、令和2年度の0.5%から少しずつ上昇しているものの、依然として低い水準で推移しています。
それに対して、繰下げ受給の利用率は同期間に1.0%から1.9%へと着実に増加しており、受給開始を遅らせるという選択肢が広がりつつあることがわかります。
4.1 70歳時点での繰下げ選択が広がる背景
70歳時点での受給状況に注目すると、繰下げを選択した人の割合は令和6年度で4.2%に達しており、上昇傾向がより一層顕著になっています。
この背景には、健康寿命の延伸により長く働く高齢者が増えていることや、繰下げ受給による年金額の増額効果が広く知られるようになってきたことがあると考えられます。
また、法改正によって繰下げが可能な年齢の上限が引き上げられたことも、利用者の増加を後押ししている要因の一つとみられます。
一方で、繰上げ受給の利用は限定的であり、老後の生活設計において「早く受け取る」ことよりも「増やして受け取る」ことを重視する傾向が強まっているといえそうです。
今後は、個々の就労状況や家計の事情などを踏まえながら、自身のライフプランに最適な受給開始時期を選択することが、より一層重要になるでしょう。
5. 自身のライフプランに合わせた年金受給計画を
今回は、厚生年金の受給実態と、繰上げ・繰下げ受給の制度内容について解説しました。
厚生年金の平均受給額は約15万円であり、月額20万円以上を受け取れる人は全体の2割弱という状況です。
繰上げ受給は早期に年金を受け取れるメリットがある反面、生涯にわたって年金額が減額されます。
一方、繰下げ受給は年金額を増やせますが、待機期間中の生活費の確保や税・社会保険料の負担増といった注意点があります。
近年の傾向としては、受給開始を遅らせて年金額を増やす繰下げ受給の利用が徐々に増えています。
老後の生活設計を立てる上では、ご自身の健康状態や貯蓄状況などをよく考慮し、いつから年金を受け取るのが最適かを検討することが大切です。
公的年金だけに頼るのではなく、資産形成や働き方の見直しといった準備も併せて進めることが、安心して暮らせる老後へとつながるのではないでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- LIMO4月15日支給日【厚生年金】いちどの支給で「40万円(月額20万円)」もらう人はどれくらいいる?
長井 祐人

