4. アナリストの期待値上昇と、テクノロジーがもたらす脅威
リクルートの稼ぎ頭である北米のHRテクノロジー事業が2桁成長を遂げているとなれば、当然ながら市場の期待も高まります。
実際、証券会社のアナリストたちが予測する「コンセンサス予想(市場の平均的な業績予想)」も、決算発表を経て上方修正されています。
会社側が発表した通期の営業利益予想が5906億円であるのに対し、アナリストのコンセンサスはそれよりも高い水準に切り上がっており、投資家がリクルートの今後の業績に対して強気な見方をしていることがうかがえます。
しかし、業績が好調で期待値も上がっているにもかかわらず、リクルートの株価は今年に入ってから下落基調が続くという不思議な現象が起きています。その理由について、泉田氏は「外部環境の大きな変化」を挙げました。
要因の一つとして動画内で議論されたのが、「AI(人工知能)の進化によるテクノロジーの脅威」です。
現在、アメリカを中心に生成AIの技術が凄まじいスピードで進化しています。これまで人間が行ってきたプログラミングや経理などの業務をAIが代替できるようになれば、「企業が人を採用する必要性」そのものが減少する可能性があります。
もしアメリカの労働市場で「人がいらない」という状況が生まれれば、北米の求人市場に大きく依存しているリクルートのHRテクノロジー事業は直接的な打撃を受けかねません。泉田氏はこの構造について、次のように警鐘を鳴らします。
「株式を見るときには、今やってるビジネスが新しい技術で競争のルールが変わっちゃうんじゃないかみたいなところは、常にリスク要因として見とかないといけないんです。特に勝ってる人は。」
現在圧倒的なシェアと利益を誇っているからこそ、イノベーション(技術革新)は最大の脅威となります。
株式市場は常に先を読んで動くため、足元の業績がどれだけ良くても、将来のビジネスモデルが崩れるリスクを感じ取れば、株価は敏感に反応して下落するのです。
ただし、このAIの脅威が実際にどれほど業績に悪影響を与えるかは、まだ誰にも分かりません。泉田氏も市場の過剰反応の可能性について触れています。
「来期に本当に下がるかどうか分かんないから、マーケットはリスクを織り込んで株価を売ってるんだけども、ただ時間経ってみたらいやそこまでじゃなかったと、業績はそんなに鈍化してないとかなんなら伸びてるっていうことも全然あり得るんで。」
投資家は不確実性を嫌うため、リスクが浮上した段階で一旦株を手放す傾向があります。しかし、時間が経って「心配したほど業績にインパクトはなかった」と確認されれば、再び買われるケースも多々あります。
だからこそ、投資家にとって重要なのは、ニュースを見たときに「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、どの企業にどんな影響が及ぶかを想像する力です。泉田氏はこれを「連想ゲーム」と表現し、その重要性を強調しました。
「このニュースが意味するとこはこうだよね、このニュースが意味するとこはこうだよねって連想ゲームしていくと、投資のアイデアにもつながるのよ。」
AIの進化というニュースから、アメリカの労働市場の変化を予測し、そこから北米依存度の高いリクルートの業績リスクへと連想を広げる。こうした思考のプロセスを持つことが、株式投資において非常に強い武器になるのです。
【動画で解説】リクルート決算を元機関投資家が分析!なぜ本当の稼ぎ頭は北米なのか?
5. まとめ:リクルートの今後の注目ポイント
リクルートの決算分析を通じて、巨大企業を見る際のポイントが明らかになりました。
私たちが普段接している身近なサービスではなく、利益の大半を稼ぎ出している「北米のHRテクノロジー事業」こそが、リクルートの心臓部です。
そして、その心臓部が今後も力強く動き続けるのか、それともAIなどの新たなテクノロジーによって脅威にさらされるのかが、今後の最大の注目ポイントとなります。
投資家としては、次回の決算発表で「HRテクノロジー事業の売上や利益がどう変化したか」を定点観測し、会社側がテクノロジーの変化に対してどのような戦略を打ち出してくるのかを冷静に見極める必要があります。
動画では、今回ご紹介した決算の読み解きに加え、投資における連想ゲームの具体的なトレーニング方法など、機関投資家ならではの深い洞察がさらに詳しく語られています。
参考資料
- リクルートホールディングス「2026年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕」(2026年2月9日)
- リクルートホールディングス「2026年3月期 第3四半期決算説明会資料」(2026年2月9日)
- リクルートホールディングス「2026年3月期 第3四半期決算電話会議要旨」(2026年2月9日)
- Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
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