4月は新年度の始まりとともに、公的年金や関連給付の内容を見直すのに適した時期です。
なかでも「年金生活者支援給付金」は、一定の所得以下の年金受給者に支給される重要な制度ですが、「自分は対象なのか分からない」「いくらもらえるのか把握していない」という声もあるでしょう。
また、この給付金は申請が前提となっており、手続きを行わなければ受け取れない点にも注意が必要です。
本記事では、2026年度の給付額の目安から、老齢・障害・遺族それぞれの対象条件、申請手続きの具体的な流れ、さらに電子申請と郵送の違いまで、制度の全体像をわかりやすく整理します。
1. 2026年度の給付額はいくら?基準額と支給水準を確認
「年金生活者支援給付金」は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準に満たない場合に受け取れる給付金です。
老齢年金、障害年金、遺族年金のそれぞれの年金に給付金が設けられており、2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。また、給付額は公的年金と同様に、年度ごとに見直しがおこなわれます。
1.1 年金生活者支援給付金「2026年度の給付額」はいくら?
2026年度の「年金生活者支援給付金」の給付額は、前年度より+3.2%引き上げが決定しており、6月支給分の「4・5月分給付金」から増額率が適用されます。
各給付金の2026年度月額は以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円(※基準額)
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
なお、老齢年金生活者支援給付金については、上記を基準額として、保険料納付済期間などをもとに実際の給付金額が計算されます。
2. 対象になるのは誰?3つの給付ごとの支給要件
「老齢」「障害」「遺族」、3種類ある年金生活者支援給付金には、それぞれの支給要件が定められています。
一つひとつ整理していきましょう。
2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
2.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
2.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
いずれの年金生活者支援給付金も、前年の所得額が支給要件に関わっています。
なお、年金生活者支援給付金は、受給要件を満たしても自動では支給されません。受け取るためには、必ず「請求手続き」が必要です。
3. 申請しないともらえない|請求手続きの具体パターン
年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が郵送されます。
請求書の送付時期や書類形式は、年金の受給状況により異なります。今回は該当する人が多い2つのパターンを見ていきましょう。
3.1 【パターン1】65歳の誕生日を迎え、老齢基礎年金を新規に請求する人
- 65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して送付
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と併せて年金事務所に提出
3.2 【パターン2】基礎年金を受給中で、新たに年金生活者支援給付金を受け取ることができる人
- 毎年9月の第1営業日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送される
- 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は電子申請を利用できます
- 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、切手を貼ってポストに投函
なお、支給要件に当てはまるかどうかが確認できない人には「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」および「所得情報等を確認するための所得状況届」が届きます。
3.3 年金生活者支援給付金の支給日はいつ?
年金生活者支援給付金は、年6回に分けて、偶数月の15日に支払われます。なお、15日が土日または祝日のときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しとなります。
年金の受取口座と同じ口座に、同日、年金とは別に振り込まれます。(通帳にはそれぞれ別の振込として記載されます)
各支払月には、原則、その前月までの2カ月分の年金生活者支援給付金が支払われます。例えば、10月に給付されるのは、8月分・9月分の給付金です。
4. 年金額の違いも重要|平均受給額と個人差
今のシニア世代の年金受給事情についても触れていきます。
厚生労働省が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、60歳以上のすべての受給権者の男女差・個人差に着目してみましょう。
4.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
4.2 国民年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は、男性の平均が16万9967円であるのに対し、女性の平均は11万1413円と、約6万円の開きがあります。
この格差が生じる背景には、厚生年金の計算方法があります。厚生年金は、現役時代の給与や加入期間が年金額に反映されるため、平均勤続年数が長く、生涯賃金が高かった男性の受給額が大きくなる傾向があるのです。
一方で、国民年金は加入月数に応じて受給額が決まる仕組みのため、男女間の受給額に大きな差はありません。
厚生年金受給額が月額2万円未満から30万円超までと幅が広いことからも、一人ひとりの働き方や加入期間が年金額に大きく影響していることがわかります。
5. 申請方法は2つ|電子申請と郵送の違いを比較
新たに年金生活者支援給付金の対象となる方に、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が2025年9月1日(月曜)より順次送付されています。
今回の年金生活者支援給付金の申請方法は2つ。
5.1 年金生活者支援給付金の申請方法1.電子申請による提出【2025年から】
今年から電子申請による提出が可能になりました。
電子申請に必要なものは、スマートフォンとマイナンバーカード(※マイナンバーカード受け取り時に設定したパスワード(数字4桁)& 署名用電子証明書パスワード(英数字6桁~16桁)も必要です)。
また、事前にマイナポータルの利用者登録と、マイナポータルとねんきんネットの連携が必要です。
電子申請は、マイナポータルのトップ画面か、マイナポータルに届いたお知らせから入ります。その後、基本情報や内容の確認と、必要箇所の入力をおこない、申請内容の確認をして電子署名の付与で申請をおこないます。なお、電子署名の付与には、マイナンバーカードと署名用電子証明書のパスワード(英数字6桁~16桁)が必要です。
マイナンバーカードの読み取りなどもおこない、「年金生活者支援給付金を請求する(申請完了)」の画面が表示されたら、申請は完了です。
日本年金機構「年金生活者支援給付金の請求手続きは スマートフォンによる電子申請をご利用ください!」10/10
なお、申請後の処理状況については、マイナポータルから確認できます。
年金生活者支援給付金は申請しないともらえない制度です。申請方法の詳細については日本年金機構のホームページなどで確認し、また申請後には申請状況についても確認するようにするとよいでしょう。
※電子申請により提出すれば、郵送による提出は不要です。
5.2 年金生活者支援給付金の申請方法2.郵送による提出
郵送については、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の必要箇所を記入して同封の目隠しシールを貼り、切手を貼ってポストに投函しましょう。
6. 対象でも申請しなければゼロ円|給付額・条件・手続きの総確認で取りこぼし防止を
年金生活者支援給付金は、一定の所得以下の年金受給者にとって重要な収入の上乗せとなる制度ですが、申請が必要である点が最大の注意点です。
対象条件を満たしていても手続きを行わなければ受給できず、見逃してしまうケースも少なくありません。
また、給付額は一律ではなく、年金の種類や所得状況によって変わるため、自分の状況に応じた確認が欠かせません。
さらに、申請方法も電子申請と郵送の2つがあり、手続きのしやすさも改善されています。
4月の新年度は制度を見直す絶好の機会です。まずは自身が対象かどうかを確認し、該当する場合は早めに申請を進めることが、家計の安定につながります。
7. 【ご参考】2026年4月からの年金新ルール:手取りを増やすために知るべき4つのポイント
2026年度(令和8年度)の幕開けとともに、私たちの「老後の財布」を左右する年金制度の大きな転換期がやってきました。
物価高騰が続く中、保険料の引き上げというシビアな現実がある一方で、国も「受給額のアップ」や「働くシニアへの優遇措置」を打ち出しています。
今年度の年金改定について、すでに前段で解説したものもありますが、4つのポイントを解説します。
7.1 国民年金保険料:月額「1万7920円」への改定と対策
自営業者やフリーランス、学生の方などが納める国民年金保険料。令和8年度は月額1万7920円となりました。
毎月の固定費が増えるのは痛手ですが、ここで重要なのは「払い方」です。
現金やカードでの「前納」や「口座振替」を組み合わせることで、年間で数千円単位の割引を受けることも可能です。
上昇する保険料に対して、いかに「賢く節約するか」が大事になります。
7.2 受給額の引き上げ:厚生年金のモデル世帯は「月23万7279円」へ
物価や賃金の上昇を受け、今年度は受け取れる年金額もプラス改定となりました。基礎年金は1.9%、厚生年金は2.0%の増額です。
具体的な金額の目安(満額受給の場合)は以下の通りです。
- 昭和31年4月2日以降生まれ:月額7万608円
- 昭和31年4月1日以前生まれ:月額7万408円
また、平均的な収入で40年働いた夫と専業主婦の妻という「モデル世帯」の場合、2人分の合計額は月額23万7279円となります。自身の正確な額は、毎年6月に届く「年金額改定通知書」で確認をしましょう。
7.3 低所得者支援:給付金も「3.2%アップ」の5620円へ
年金収入が一定以下の世帯を支える「年金生活者支援給付金」も、物価高に対応して手厚くなります。
令和8年度の基準額は、前年度から3.2%という伸び率で改定され、月額5620円となりました。
ここで最も注意すべきは「申請漏れ」です。新たに対象となる方には日本年金機構から案内が届きますが、ハガキを返送しない限り1円も支給されません。
届いた封筒やハガキは、早めに開封・返送するようにしましょう。
7.4 在職老齢年金:働くシニアの「月65万円の壁」への緩和
現在働いている、あるいはこれから働く予定のシニア世代にとって最大の注目点が、年金カットルールの緩和です。
これまでは「給与+年金」が月51万円を超えると年金が削られていましたが、令和8年度からはこの基準が「月額65万円」へと大幅に引き上げられました。
「年金を減らされたくないから仕事をセーブする」という必要がなくなり、しっかりと稼ぎながら満額の年金を受け取れるチャンスが広がりました。
7.5 【まとめ】制度の追い風を受け、マネープランを再構築しよう
2026年4月の改定は、物価高への備えと、シニア世代の積極的な社会参加を支援する内容が詰まっています。
制度を正しく理解し、自分のライフスタイルに当てはめることで、将来の「手取り」は確実に変わります。
今回の4つのポイントを指針に、今一度ご自身のマネープランを見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」
- Youtube「厚生労働省 年金生活者支援給付金のお知らせ」
橋本 優理