3. LVMHを飛躍させた「スターブランド」戦略
LVMHがこれほどまでに拡大した背景には、1989年に会長兼CEOに就任したベルナール・アルノー氏の手腕があります。彼は、ブランドが成功するための条件として「4つの要素」を提唱しています。
3.1 タイムレスであること
時代に左右されない価値を持ち、長く続く歴史があることです。LVMHはM&Aにおいて、伝統はあるが経営がうまくいっていない会社を買収することで、一朝一夕には作れない「歴史」そのものを手に入れています。
3.2 現代的であること
常に新しさを保ち、現代の消費者に受け入れられることです。歴史があっても「古臭い」と思われては消費者は離れてしまうため、新しいデザイナーを招聘してデザインを刷新するなどのアプローチを徹底しています。
3.3 急成長していること
現状維持に満足せず、常にビジネスを拡大させていくことです。LVMHが持つセレブリティの活用やデジタルマーケティングの強力なノウハウを投入することで、買収したブランドの成長を加速させます。
3.4 高収益であること
企業として高い利益を出し続けることです。製造から小売(リテール)までを自社で一貫して手がける「垂直統合」モデルにより、中間マージンを抑えて高い収益性を確保しています。
これら相反する要素を両立させるのが、LVMH独自の再生モデルです。伝統はあるが経営がうまくいっていないブランドを安く買収し、新しいデザイナーによる刷新と、グループの強力なマーケティングノウハウを投入します。さらに、製造から小売までを垂直統合することで高い収益性を確保し、買収したブランドを次々と「スターブランド」へと変貌させてきたのです。
4. 収益構造と今後のリスク
LVMHの収益性は非常に高く、営業利益率は約22%に達します。一方で、その販管費率は44%と高めです。これには、ブランドイメージを維持するための広告宣伝費や、一等地の店舗賃料、手厚い接客のための人件費などが含まれています。
足元では、インフレに伴う製品価格の値上げに対し、主要な顧客層である「アッパーマス層(富裕層予備軍)」が価格に敏感に反応し始めています。2024年から2025年にかけて販売数量が落ち込んでいる背景には、こうしたインフレと消費者の購買意欲のバランスが影響していると考えられます。
歴史あるブランドを次々と「スター」へと変貌させてきた同社が、この消費動向の変化という逆風をどう成長の糧に変えていくのか。「ブランド帝国」の次なる一手から、今後も目が離せません。


