このまま国内の景気が悪化して行くのか、一時的な経済指標の悪化にとどまって景気は回復を続けるのか、専門家の間でも見方が大きく分かれています。

ちなみに、ESPフォーキャストというアンケート調査によると、専門家の間では「景気は現時点では拡大を続けているけれども1年以内に下降に転じる」という見方が若干優勢なようです。

筆者自身はいまだに、景気は回復を続ける可能性の方が高そうだと考えていますが、それでも数カ月前と比べると自信が大きく揺らいでいることは疑いありません。もしかすると既に景気は後退し始めているかもしれないと感じている今日この頃です。

そうだとすれば、1年待って様子を見て、「国内の景気が比較的強く、消費税を増税しても景気が後退しない、あるいは失業が増えない」と確信できるようになれば、その時に増税するという方が遥かに安全です。

米中冷戦の行方も見極めたい

米中貿易戦争は、覇権争いに発展し、米中冷戦の様相を見せています。互いに譲らずに意地を張り続けた場合に、どのような影響が世界経済および日本経済に及ぶのか、現時点で予測するのは容易ではありません。

そうであれば、「1年待って、米中冷戦の日本経済への影響がある程度予測できるようになった段階で、改めて消費増税の可否を検討する」方が遥かに安全でしょう。

米中冷戦以外にも、米国や欧州の景気自体にも黄信号が点滅しているという見方も広がりつつあります。米国等で比較的リスクの高い債務が増えていることも、景気が悪化した場合の影響を読みにくくしています。そうであれば、ますます1年待つことのメリットが大きいことになります。

増税して同額を景気対策に用いるという選択肢も

もっとも、増税するのか否かが決まらないと現場は混乱するでしょう。そこで、「増税は決定した上で、1年間は増税分と同額の所得税減税を実施する」といった選択肢も検討されるべきでしょう。

消費税減税よりは子ども手当等々の方が少子化対策として望ましいとは思いますが、本稿では敢えて「何らかの景気対策」と記すだけにしておきましょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義