また、年収2000万円氏の2人のご子息が優秀で、都内の私立中高に通いながら将来はアメリカの大学に進学したいなんて考えているとすると、将来の教育費のために毎月10万円貯金しても全く足らないかもしれません。

こんな状況だと、年収1000万円氏と年収2000万円氏の実質可処分所得はほぼ同じになり、年収に2倍の格差があっても日々の生活感覚はそれほど変わらないことになります。

むしろ年収2000万円氏は重税感と貯蓄プレッシャーにさいなまれる一方で、親の実家に住んでいる年収1000万円氏は毎年ハワイ旅行を楽しんでいるかもしれません(もっとも、年収1000万円でも重税感はあるでしょうが)。

この例は極端かもしれませんが、日本の累進課税では年収が上がれば上がるほど税金がごっそり持っていかれます(所得税+個人住民税の最高税率は55%!です)。年収が1000万円を超えれば生活に余裕が出てきて、旅行だ外食だパーティーだ・・・となりそうですが、ある一定の年収以上になると意外なほど生活感は変わらず、そう贅沢もできません。

もちろん数億円の役員報酬をもらっている経営者や超売れっ子タレントが豪邸を建てたり、超高級車を保有したりするのは普通にあることです。ただ、年収1000万~2000万円程度ではそこまでできません。加えて、給与所得者であれば、会社の経費で自宅や高級車を買うというワザも使えません。

最後に相続税が待っている

ことほどさように、年収1000万円も2000万円も実質的には大差はないのですが、年収1億円だとどんな感じでしょう。王侯貴族の生活をしているのでしょうか? 筆者は想像が付きませんが、豪邸や別荘ぐらいは持っていても、普段は意外と質素な生活をしていると想像します。毎年5000万円近くの税金を払うわけですしね。

もちろん可処分所得は増えますから、それなりの資産を残すことは可能でしょう。ただし、資産を残しても最後は相続税が待っています。

たとえ相続税対策をしても限界がありますし、自分の代で相続税対策が上手くいっても、その次は上手く行かないかもしれません。仮に相続人がいないとすると、結局最後に残った資産は国庫に入ってしまいます。そうなると思い切って使い切るか、寄付するくらいしか使い道はありません。

隣の芝生は青く見えるものですが、実は意外と青くはないのかもしれませんね。

(注)上記の社会保険料・税金等の計算は推定値です。実際には、配偶者の就業有無や家族構成等によって変わりますので、あくまで参考としてください。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)