3月は新年度を前に、年金額や各種給付制度の内容を確認しておきたい時期です。物価上昇が続く中で、年金収入を中心に生活する世帯では「思った以上に支出が増えている」と感じる場面も増えているのではないでしょうか。

こうした状況の中で、家計を支える制度として注目されるのが「年金生活者支援給付金」です。

この制度は、一定の所得以下の年金受給者に対して、年金に上乗せする形で支給されるもので、老齢年金だけでなく障害年金や遺族年金の受給者も対象となる可能性があります。

給付金は偶数月の年金支給日にあわせて振り込まれ、2026年度も4月15日に上乗せ支給されるケースがあります。

ただし、対象条件や申請状況によっては支給されないこともあるため注意が必要です。本記事では、制度の仕組みや給付額、申請方法について整理します。

1. 年金生活者支援給付金の仕組みとは?年金に上乗せされる支援制度の全体像

基礎年金を受給中の人で、所得が一定要件を満たす場合、「年金生活者支援給付金」を受け取ることができます。

「年金生活者支援給付金」は、「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3種類です。

1.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件《対象となるのはどんな人?》

老齢年金生活者支援給付金は、下記の支給要件をすべて満たす方が支給対象となります。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)である。

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

1.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件《対象となるのはどんな人?》

障害年金生活者支援給付金は、下記の支給要件をすべて満たす方が支給対象となります。

  • 障害基礎年金の受給者
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 障害年金等の非課税収入は除く

1.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件《対象となるのはどんな人?》

遺族年金生活者支援給付金は、下記の支給要件をすべて満たす方が支給対象となります。

  • 遺族基礎年金の受給者
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く

「年金生活者支援給付金」の支給要件には、いずれの場合も前年の所得額が関わっています。

2. 2026年度の給付額はいくら?基準額と支給水準のポイント

「年金生活者支援給付金」の給付額は、公的年金と同じく物価変動に応じて見直しがおこなわれるルールです。

2026年度の給付額は前年度より3.2%引き上げられ、6月支給分(4月・5月分の給付金)から増額率が適用されます。

2026年度の支給金額は以下の通りです。

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額7025円・2級 月額5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、上記の基準額をもとに保険料納付済期間や保険料免除期間等に応じて実際の給付額が算出されます。

3. 年金生活者支援給付金の申請方法|2つの手続きパターンを解説

「年金生活者支援給付金」は、公的年金と同様に請求手続きを行わないと、受け取ることができません。

該当する人が多い2つのパターンについて、請求手続きの方法を見ていきます。

3.1 パターン1:すでに年金受給中で、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった場合

  1. 例年9月の第1営業日(2025年は9月1日)から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。必要事項を記入し、切手を貼って郵便ポストに投函します。
  2. 原則として、請求した月の翌月分からの支給となるため、早めの手続きをおすすめします。

なお、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた人は、電子申請による提出も可能です。電子申請を行った場合は、郵送での提出は不要です。

3.2 パターン2:新規に老齢年金の受給が始まる人が、年金生活者支援給付金の支給対象となった場合

  1. 65歳になる3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封され、「年金生活者支援給付金請求書」が入った封筒が届きます。
  2. 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出します。

3.3 翌年以降の請求手続きは原則不要

なお、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り翌年以降の手続きは原則不要(※)となり、継続して受給することができます。

※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき、継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(支払いは12月)から1年間反映されます。

4. 年金額には個人差|平均受給額から見る家計の現実

ここからは、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータから、国民年金と厚生年金の平均年金月額を、男女全体・男女別に見ていきましょう。

年金の個人差8/10

年金の個人差

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 厚生年金の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

4.2 国民年金の平均年金月額

〈全体〉平均年金月額:5万9310円

  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

会社員などが受け取る厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額は、現役時代の働き方、厚生年金の加入月数とその期間の収入などより、大きな個人差が生じます。

そのため、平均年金月額が2万円未満の人から25万円超の人まで、幅広い受給額ゾーンにちらばりが見られるのです。

ずっと自営業だった人などで国民年金のみを受給する場合、男女ともに平均年金月額は5万円台です。満額受給できた場合でも、月額7万608円(2026年度)。

国民年金のみを受給する場合、厚生年金ほどの個人差はありませんが、老後資金を手厚く準備していく必要がありそうです。

5. 申請方法は2種類|電子申請と郵送手続きの違い

新たに年金生活者支援給付金の対象となる方に、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が2025年9月1日(月曜)より順次送付されています。

今回の年金生活者支援給付金の申請方法は2つ。

5.1 年金生活者支援給付金の申請方法1.電子申請による提出【2025年から】

今年から電子申請による提出が可能になりました。

電子申請に必要なものは、スマートフォンとマイナンバーカード(※マイナンバーカード受け取り時に設定したパスワード(数字4桁)& 署名用電子証明書パスワード(英数字6桁~16桁)も必要です)。

また、事前にマイナポータルの利用者登録と、マイナポータルとねんきんネットの連携が必要です。

電子申請は、マイナポータルのトップ画面か、マイナポータルに届いたお知らせから入ります。その後、基本情報や内容の確認と、必要箇所の入力をおこない、申請内容の確認をして電子署名の付与で申請をおこないます。なお、電子署名の付与には、マイナンバーカードと署名用電子証明書のパスワード(英数字6桁~16桁)が必要です。

マイナンバーカードの読み取りなどもおこない、「年金生活者支援給付金を請求する(申請完了)」の画面が表示されたら、申請は完了です。

日本年金機構「年金生活者支援給付金の請求手続きは スマートフォンによる電子申請をご利用ください!」10/10

日本年金機構「年金生活者支援給付金の請求手続きは スマートフォンによる電子申請をご利用ください!」

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金の請求手続きはスマートフォンによる電子申請をご利用ください!」

なお、申請後の処理状況については、マイナポータルから確認できます。

年金生活者支援給付金は申請しないともらえない制度です。申請方法の詳細については日本年金機構のホームページなどで確認し、また申請後には申請状況についても確認するようにするとよいでしょう。

※電子申請により提出すれば、郵送による提出は不要です。

5.2 年金生活者支援給付金の申請方法2.郵送による提出

郵送については、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の必要箇所を記入して同封の目隠しシールを貼り、切手を貼ってポストに投函しましょう。

6. 制度のポイントと見落とし防止のチェック事項まとめ

年金生活者支援給付金は、一定の所得以下の年金受給者に対して年金に上乗せして支給される制度で、老齢・障害・遺族年金の受給者が対象となる可能性があります。

給付は偶数月の年金支給日にまとめて行われ、2026年度も4月15日に支給されるケースがあります。日々の生活費の負担が積み重なる中で、こうした給付は家計を支える一助となる制度といえるでしょう。

ただし、対象条件を満たしていても申請が必要な場合があり、手続きを行っていないと受給できない点には注意が必要です。

また、給付額は毎年度見直されるため、最新の基準額を確認しておくことも重要です。3月は制度確認のタイミングでもあります。

自分が対象となるか、申請状況に問題がないかを早めにチェックし、確実に受給できるよう準備しておきましょう。

監修者コメント
年金生活者支援給付金で見落とされやすいのは、「所得判定の基準が見直される」という点です。多くの人が一度対象外と判断されると、その後も対象にならないと思いがちですが、実際には前年の所得や世帯状況の変化によって、翌年度から新たに支給対象となるケースも少なくありません。
また、市町村民税の非課税基準や扶養状況の影響を受けるため、「わずかな収入差」で対象・非対象が分かれることもあります。
「以前ダメだったから申請していない」という理由で受給機会を逃している場合も見考えられます。毎年の基準と自身の状況を照らし合わせて確認することが、確実な受給につながります。

参考資料

橋本 優理