2026年2月18日、第2次高市内閣が新たに発足しました。
これにより、高市総理が政策の柱として掲げる「強い経済」を実現するための総合経済対策が、いよいよ本格的に始動します。
特に注目されているのが、高市総理が実現に意欲を見せる「給付付き税額控除」であり、早期の導入に向けた議論が加速する見込みです。
本記事では、この給付付き税額控除がどのような制度なのか、国民にとってのメリット、そして今後の導入スケジュールについて詳しく解説します。
1. 高市総理の方針:「給付付き税額控除」導入までは「食料品の消費税ゼロ」で対応
2月18日の第2次高市内閣発足に伴う記者会見において、高市総理は給付付き税額控除について、以下の点を表明しました。
- 物価上昇や税・社会保険料の負担増に直面する中・低所得者層の家計を支えるため、「給付付き税額控除」の設計を含む「社会保障と税の一体改革」の検討を進める。
- 「給付付き税額控除」が導入されるまでの間の負担軽減策として、食料品に対する「消費税をゼロ税率」にすることを検討する。
- 食料品の消費税率をゼロにするための財源は、特例公債に頼らない方針である。
- 食料品に絞った消費税率ゼロの措置と「給付付き税額控除」の導入は、並行して議論を進める。
- 「給付付き税額控除」の実現に賛同する野党にも協力を求め、「国民会議」を立ち上げる意向を示す。
- 夏頃までに「国民会議」で中間報告をまとめ、制度を閣議決定した上で、関連法案の速やかな国会提出を目指す。
食料品への消費税率ゼロ措置は、給付付き税額控除が本格的に始まるまでの「つなぎ」としての役割を担っており、政府は両方の施策を同時に推進していく考えです。
2. 「給付付き税額控除」の仕組みとは?
給付付き税額控除とは、所得税から一定額を差し引く「税額控除」と、現金を直接支給する「給付」という2つの仕組みを組み合わせた制度です。
この制度の大きな特徴は、本来納めるべき所得税額よりも税額控除額のほうが大きい場合に、控除しきれなかった差額分が現金で給付される点にあります。
この仕組みによって、所得が少なく納税額が低い方々や、所得が基準を下回り所得税が非課税となっている世帯にも、経済的な支援が行き届くように設計されています。
所得水準に応じて、受けられる支援の形は主に「税額控除のみ」「税額控除と現金給付」「現金給付のみ」の3つのパターンに分類されます。
具体的な例を使いながら、それぞれのケースについて見ていきましょう。
2.1 【具体例】控除額10万円の場合、所得層でどう変わる?3つのパターンを検証
ケース1:中・高所得層
所得税の納税額が、設定された控除額を上回る層がこのケースに該当します。
- 所得税の納税額:30万円(控除額10万円を上回る場合)
- 適用される内容:控除額の10万円全額が税額控除として、納税額から直接差し引かれます。
- 得られるメリット:実際の納税額が20万円に減り、税負担が軽くなります。
ケース2:低所得層
所得税の納税額が、設定された控除額に満たない層が対象です。
- 所得税の納税額:8万円(控除額10万円に満たない場合)
- 適用される内容:まず納税額8万円分が減税され、納税が不要となります。さらに、控除しきれなかった差額の2万円は現金で給付されます。
- 得られるメリット:所得税の支払いがなくなる上に、2万円の現金を直接受け取れます。
ケース3:非課税世帯
所得が基準額に達しておらず、所得税の納税義務がない世帯が対象となります。
- 所得税の納税額:0円の場合
- 適用される内容:所得税を納めていないため、税額控除は適用されず、控除額の10万円が全額現金で給付されます。
- 得られるメリット:従来の減税措置では恩恵を受けられなかった世帯にも、直接的な経済支援が届くようになります。
3. 政府が「給付付き税額控除」を重視する3つの理由
政府は、物価高騰への対策として期待されていた「一律の現金給付」の実施を見送る判断をしました。
一律給付は手続きが簡単でスピーディーという利点がありますが、高市総理は制度設計に時間を要する「給付付き税額控除」の導入を優先する考えを示しています。
迅速性よりも丁寧な制度設計を優先する背景には、どのような狙いがあるのでしょうか。この制度が持つ3つの重要な役割を解説します。
3.1 理由1:一過性ではない、持続可能な支援制度の構築
現金給付は、迅速に実行でき、支援の効果をすぐに実感しやすいというメリットがあります。
しかし、その多くは一度きりの暫定的な対策に終わりがちです。
また、所得が高く必ずしも支援を必要としない層へも一律に支給されるため、財源の効率的な配分や制度の持続性という観点から課題が残っていました。
3.2 理由2:これまでの減税策の対象外だった低所得者層への支援拡大
従来の所得税減税には、「所得税を納めている人でなければ恩恵を受けられない」という根本的な課題がありました。
減税は納める税金を減らすことが目的のため、所得が低く納税義務のない非課税世帯はそのメリットを享受できず、最も支援が必要な層が対象から外れてしまうという問題があったのです。
前述したように、「給付付き税額控除」は、税額控除で引ききれない分を現金で補う仕組みです。
この仕組みにより、所得税の納税額が0円の非課税世帯に対しても、設定された支援額が全額自動的に支給されることになります。
これにより、従来の減税策では難しかった低所得世帯への支援が実現すると同時に、所得がある層にも減税という形で恩恵がもたらされるため、より幅広い層を対象とした制度といえるでしょう。
3.3 理由3:消費税の「逆進性」という課題を和らげる効果
一律の現金給付は、短期的に家計を支える効果は期待できますが、消費税が持つ「逆進性」という根本的な問題の解決には至りません。
「逆進性」とは、所得の多寡にかかわらず同じ税率が適用される消費税の特性上、所得が低い人ほど収入に占める税金の負担割合が重くなる現象を指します。
例えば、以下のようなケースで考えてみましょう。
- 年収1000万円の人が生活費として100万円を使い10万円の消費税を支払った場合、税負担は年収の1%に相当します。
- 一方、年収300万円の人が同じく100万円を消費して10万円の消費税を支払った場合、税負担は年収の約3.3%となり、負担の割合が大きくなります。
このように、同じ金額を支払っても、所得が低いほど収入に対する税負担の割合が高くなるのが、消費税の「逆進性」という課題です。
この不公平感を是正し、格差を是正する手段として期待されているのが「給付付き税額控除」です。
この制度の大きな特徴は、低所得者層に対して「支払った消費税の一部を実質的に還付する」ような効果をもたらす点にあります。現金給付によって直接的に家計を支えることで、自由に使えるお金(可処分所得)を増やし、生活の安定を後押しします。
つまり、給付付き税額控除は、これまでの減税策では支援が届かなかった非課税世帯にも手厚いサポートを可能にする、「税の再分配機能」を正常化させるための有効な仕組みなのです。
4. まとめ
給付付き税額控除は、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、オランダなど、すでに10カ国以上で導入されている制度です。
子育て支援や就労促進、付加価値税の負担軽減など、その目的や細かな仕組みは国によって様々です。
日本においては、この記事で解説したように所得税の減税と、減税しきれない分は現金で給付するという「減税と現金給付の組み合わせ」となる見通しです。
導入までには一定の期間が必要となるため、その間は自民党が衆院選の公約で掲げた「食料品の消費税率ゼロ」でつなぐ方針です。高市総理は、今後「国民会議」を立ち上げ、「給付付き税額控除」と「食料品の消費税率ゼロ」について並行して議論を進めていくとしています。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 首相官邸「高市内閣総理大臣記者会見(2月18日)」
- 自由民主党「高市内閣総理大臣記者会見(2月18日)」
- 財務省「資 料(諸外国の制度について)」
- 厚生労働省「給付付き税額控除の概要(例)」
- 国税庁「給付付き税額控除制度の執行上の課題について」
- 首相官邸「政府与党連絡会議」
- LIMO「【給付付き税額控除】いつから始まる?「現金給付の人」・「税額控除の人」・「両方の人」で恩恵は平等になる?!「国民会議」を立ち上げ早期実現を目指す」
マネー編集部社会保障班

