新NISAのスタートを機に、投資信託による積立投資を始めた方も多いのではないでしょうか。そうした中で、運用に慣れてくると「もっとリターンを狙いたい」「リアルタイムで取引してみたい」と、ETF(上場投資信託)に興味を持つ方も増えてきています。
しかし、投資信託と同じ感覚でETFを始めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
本記事では、ファンドアナリストの篠田尚子さんが金融経済YouTubeチャンネル「ミライド」で解説した内容をもとに、投資信託ユーザーがETFデビューする際に押さえておきたい「3つのポイント」について解説します。
1. 投資信託とETFは「得意な分野」が異なる
そもそもETF(Exchange Traded Fund)とは、証券取引所に上場している投資信託のことです。投資信託の一種ですが、「株式と同じようにリアルタイムで取引できる」という特徴があります。
投資信託とETFの違いを踏まえた上で、初心者がまず押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
2. ETFは目的を決めて「プラスアルファ」で活用する
まず1つ目のポイントは、「投資の目的を明確にすること」です。篠田さんは、「投資信託とETFでは得意な分野が異なる」と説明します。
・投資信託:1日1回公表される価格(基準価額)で取引。「時間」を味方につけた長期・分散・積立投資が得意。資産形成の土台に最適。
・ETF:リアルタイムで価格が変動。市場の動きを見ながらの臨機応変な取引にも対応可能。小口積立よりも、まとまったお金を一括で投資するのに向いている。
篠田さんは「ETFは、資産形成の土台となる投資信託に『プラスアルファ』として組み合わせるのが効果的」だとアドバイスします。
積立は投資信託、市場のタイミングを捉えたい場合はETFを活用するといった具合に、それぞれの特徴を踏まえた使い分けが重要です。
3. 初心者はまず「国内ETF」から始める
2つ目のポイントは「商品選び」です。日本で取引できるETFには、日本の法律に基づいて組成される「国内ETF」と、海外の法律に基づいて組成される「海外ETF(米国ETFを含む)」があります。
国内(東京証券取引所)に上場しているETFは、すべて円建てで売買されます。これに対し、海外ETFは、大部分が海外の取引所に上場していて、外貨建てで売買を行います。米ドルなどの外貨を準備する必要があるため、篠田さんは、「初心者の方は、円建ての『国内ETF』から始めること」を推奨しています。
国内ETFの中でも、「日経平均株価」や「TOPIX」に連動するものから始めるのがわかりやすい選択といえるでしょう。
4. 最低限の「用語」と「リスク」を知る
3つ目のポイントは、株式投資特有の「用語」と、そこから読み取れる「リスク」を正しく理解することです。ここは、これまで投資信託しか購入したことのない人が、最もつまずきやすいポイントでもあります。
4.1 ETFの価格は「基準価額」より「現在値」
投資信託の価格は「基準価額」の1つだけですが、ETFには「基準価額(理論上の価格)」と「現在値(市場で売買されている価格)」という2つの価格があります。
ETFの売買では、市場で刻一刻と変動する「現在値」を見て売買のタイミングを判断することになります。
4.2 流動性を表す4つの用語
スムーズな売買のためには、その銘柄がどれだけ活発に売買されているか(流動性)を見極める必要があります。篠田さんは、以下の4つの用語を確認することが大切だと解説します。
・売買代金: 実際に動いたお金の量。市場にどれだけ資金が入っているかを示す指標。一般的に、流動性を見る際はこちらを重視する。
・売買高(出来高): 取引が成立した数量。市場の賑わい度合いがわかる。
・板(気配値):「いくらで売りたいか、買いたいか」という注文状況が並んだもの。板が薄いと、大口注文で価格が大きく動く可能性がある
・窓(チャートの空白):価格に空白が生じている状態。その価格帯で売買がほとんど成立していないことを意味し、流動性が低いサインとなることがある。
4.3 「板が薄い」「窓が開く」銘柄に潜むリスク
では、なぜこれらを見る必要があるのでしょうか。それは、流動性が低いETFには、売買時に目に見えにくい「隠れコスト」が発生するリスクがあるためです。
例えば、注文数が少ない「板が薄い」状態や、チャート上で所々空白になっている「窓が開いている」状態は、市場参加者が少なく、取引が成立しにくい、または成立していないことを意味します。
このように流動性が低い状態では、自分が「この値段で買いたい」と指値(さしね)注文を出しても、相手が見つからず、なかなか取引が成立しません。
また、値段を指定しない成行(なりゆき)注文を出した場合には、自分の意図とは異なる水準まで価格が動き「想定より不利な価格で約定してしまう」といった隠れコストが発生する場合があります。
一般的に、「TOPIX」や「日経平均連動型」のようなメジャーなETFなら、取引量が多いため、「板が厚く(注文がたくさんある)」、スムーズに売買ができます。
5. ETFは「株式と同じ仕組み」で取引される
ここまで、ETFを活用する際のポイントを見てきました。さらに理解を深めるために、ETFの取引の仕組みについても確認しておきましょう。
投資信託は、銀行や証券会社などの販売会社を通じて購入します。一方、ETFは証券取引所に上場しており、株式と同様に、証券会社を通じて市場で売買されます。
そのため、売り手や買い手が少ない場合には、株式と同じく、希望する価格ですぐに取引できないこともあります。こうした特徴を理解し、板の厚さや流動性を確認しながら売買することが、ETFを活用する上で重要なポイントです。
6. ステップを押さえればETFは怖くない
投資信託の経験しかない方にとって、ETFはハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、今回ご紹介したようなステップを一つずつ押さえていけば、ETFは決してハードルの高いものではありません。現在は商品ラインナップも非常に充実しており、仕組みを理解すれば、個人投資家にとっても扱いやすい商品といえます。
まずは基本を理解した上で、新NISAなどを通じて、自身の資産運用にETFを活用してみてはいかがでしょうか。
7. ポイントまとめ
・ETFは投資信託の「プラスアルファ」として、積立投資と併用しながら、一括投資やタイミング投資に使う
・初心者は、まずは為替変動の影響を受けにくく、売買もしやすい「国内ETF(日経平均・TOPIX)」から始める
・売買時には「板(注文状況)」を確認し、注文が極端に少ない(板が薄い)銘柄は避ける
・流動性が極端に低いと、希望価格で売買できず「隠れコスト」が発生するリスクがある
動画はこちらからご覧下さい。
ミライド