75歳以上になると、医療費や介護費の増加、働き方の変化などにより、家計の状況は現役時代とは大きく異なってきます。
年金を主な収入源とする生活のなかで、「夫婦2人で暮らす場合、毎月の生活費はいくらかかるのか」「どの程度の貯蓄があれば安心できるのか」といった疑問や不安を抱く方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、75歳以上の後期高齢夫婦世帯を取り上げ、年金収入の目安や平均的な支出、あわせて同世代の貯蓄状況について、統計データをもとに整理していきます。
老後の家計を考えるうえでの参考として、具体的な数値を順に見ていきましょう。
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1. 【75歳以上 後期高齢夫婦】夫婦世帯なら「月の生活費」はいくら必要?
総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、後期高齢夫婦(75歳以上の無職二人以上世帯)の平均的な家計収支は以下のとおりです。
実収入:25万2798円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付):21万1289円
実支出:28万23円
- 消費支出:24万8460円
・食料:8万33円
・住居:1万6257円
・光熱・水道:2万4312円
・家具・家事用品:1万547円
・被服及び履物:5142円
・保健医療:1万7213円
・交通・通信:2万6294円
・教育:142円
・教養娯楽:2万2322円
・その他の消費支出:4万6198円 - 非消費支出:3万1563円
・直接税:1万1663円
・社会保険料1万9894円
・他の非消費支出:83円
75歳以上の世帯では、月ベースで見ると収入より支出が多く、差額はおよそ2万7000円程度になるケースが確認されています。
こうした赤字の状態が長く続き、手元の貯蓄に余裕がない場合、就労を継続せざるを得ない状況に置かれる可能性も考えられます。
とはいえ、現役期と同じペースや働き方を将来にわたって維持できるとは限りません。
将来に備えて安心して暮らすためには、働いている間に生活費の水準を把握し、計画的に貯蓄や資産形成に取り組んでおくことが大切だといえるでしょう。
2. 【2026年度最新】夫婦2人分の「年金額例」はいくら?
続いて、老後の年金事情について確認していきましょう。
厚生労働省が公表した「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によれば、2026年度の年金水準は前年度を上回り、国民年金は1.9%、厚生年金の報酬比例部分は2.0%の増額となっています。
2026年度の公的年金(国民年金・厚生年金)における支給額例は、以下のとおりです。
- 国民年金※1:7万608円(1人分)
- 厚生年金※2:23万7279円(夫婦2人分)
- ※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
- ※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金の金額は、40年間にわたり保険料をすべて納めた場合に受け取れる「1人分の満額」を前提としています。
保険料の未納期間がある場合には、満額とされる「7万608円」を下回る年金額となります。
これに対し、厚生年金は「標準的な夫婦2人世帯」を想定した支給額であり、厚生年金に国民年金分を加えた合計額です。
2.1 標準的なシニア夫婦の年金額は「23万7279円」
2026年度の厚生年金の支給額例は、個人単位の金額ではなく「標準的な夫婦2人分」を合計した数値である点に注意が必要です。
ここでいう「標準的な夫婦」とは、以下に示す条件を前提として設定されたモデル世帯を指しています。
- 夫婦ともに国民年金を満額受給
- 夫(または妻)が現役時代に平均標準報酬額45万5000円で40年間厚生年金に加入
- 妻(または夫)は厚生年金に加入せず、専業主婦またはフリーランスなどとして活動
上記の条件を満たすケースでは、2026年度における年金受給額は、夫婦2人合計で月額23万7279円とされています。
ただし、この「厚生年金の支給額例」はあくまで代表的な想定に基づくモデルであり、実際の受給額は、年金の加入期間や現役時代の収入水準などによって人それぞれ異なります。
そのため、示されている金額は参考値として受け止め、目安の一つとして捉えることが大切です。
参考までに、次章では70歳代のシニアが実際に受け取っている年金の平均額について見ていきましょう。
3. 70歳代が受け取っている公的年金の「平均月額」はいくら?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、70歳代が受給している厚生年金・国民年金の平均月額は次のとおりです。
3.1 厚生年金の平均月額(年齢:平均年金月額)
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
※厚生年金の支給額には、基礎年金にあたる国民年金分も含まれています。
3.2 国民年金の平均月額(年齢:平均年金月額)
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
厚生年金は、現役期の収入水準に応じて保険料が算出される仕組みのため、世代や個人によって受給額に幅がありますが、平均的には月額14万円〜15万円程度となっています。
これに対し、国民年金は保険料が定額であるため、受給額の平均は月6万円前後にとどまります。
もっとも、これらはいずれも平均値に基づく数値であり、実際の年金額は加入年数や就労形態などによって大きく左右されます。
次章では、こうした年金事情を踏まえつつ、平均的な貯蓄額がどの程度なのかを確認していきましょう。
4. 70歳代・二人以上世帯の「貯蓄額(平均・中央値)」はいくら?
では最後に、70歳代シニアの貯蓄事情について確認していきましょう。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」では、70歳代の二人以上世帯における貯蓄額について、次のような結果が示されています。
※ここで言う金融資産保有額には、預貯金の他に株式、投資信託、生命保険などが含まれます。一方で、日常的な支払いや引き落としに使われる普通預金は対象外です。
- 平均:2416万円
- 中央値:1178万円
なお、平均値は高額な金融資産を保有する一部世帯の影響を受けやすいため、実際の状況を把握するうえでは、中央値のほうが実態に近い指標といえるでしょう。
同調査によると、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額の中央値は1178万円となっています。
平均値と中央値の差が1000万円以上開いている点から、シニア世帯の資産状況には大きな幅があり、貯蓄水準の二極化が進んでいることが読み取れます。
また、参考として、同調査では70歳代・二人以上世帯の貯蓄の保有状況についても公表されています。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
70歳代の二人以上世帯の内訳を見ると、貯蓄額が100万円未満の世帯が約15%を占める一方で、3000万円以上の貯蓄を保有する世帯もおよそ25%にのぼっています。
この内訳から、老後に備えた資金状況は世帯によって差があり、同じ年代でも経済的な状況が大きく異なっていることがうかがえます。
こうした実態を踏まえると、老後の生活を安心して送るためには、年金だけに頼らず、現役世代のうちから自分の収支や資産状況を見直し、無理のない範囲で備えを進めていくことが重要だといえるでしょう。
5. 老後の家計は「年金+貯蓄」のバランスが大切になる
本記事では、75歳以上の後期高齢夫婦世帯を取り上げ、年金収入の目安や平均的な支出、あわせて同世代の貯蓄状況について、統計データをもとに解説しました。
75歳以上の後期高齢夫婦世帯では、年金収入のみで家計を維持することが難しく、月あたり約2万円7000円の赤字となるケースが平均的に見られます。
夫婦2人分の年金額は、標準的な想定では月23万円台とされていますが、実際の支給額は年金の加入期間や働き方によって大きな差が生じます。
さらに、70歳代の貯蓄状況に目を向けると、中央値は1000万円を超えている一方で、資産がほとんどない世帯と3000万円以上を保有する世帯に分かれており、世帯間の差は大きくなっています。
こうした状況を考えると、まずは自分たちの年金水準と生活費の実態を正しく把握することが、老後への第一歩といえるでしょう。
※金額等は執筆時点の情報に基づいています。

