本日は今年最初の年金支給日です。2026年度の公的年金額が引き上げられ、遺族基礎年金は月額7万円を超える水準へと改定されます。
しかし、遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」で対象範囲に大きな開きがあり、実際の受給者数にも数百万人規模の差が生じているのが現状です。さらに注目すべきは2028年度からの改正で、適用は「2028年4月1日以降に発生した事案」からと定められました。これから受給する可能性がある世代にとって、有期給付化を含む新ルールの理解は避けて通れない課題といえるでしょう。
1. 遺族基礎年金、2026年度年金額の例「月7万608円」←対前年度+1300円アップ
厚生労働省は、2026年度(令和8年度)の年金額改定を発表しました。物価や賃金の動きを踏まえ、遺族年金や関連手当は全体的に引き上げとなります。
1.1 遺族基礎年金
配偶者を亡くし、18歳年度末までの子がいる家庭が対象となる年金です。
- 2026年度の月額:7万608円←対前年度+1300円
年間では約1万5600円の増額になります。基礎年金額に2人目以降の子の加算額が上乗せされます。
※遺族基礎年金は、老齢基礎年金の満額と同じ水準です。
※昭和31年4月1日以前生まれの方は月額7万408円です。
あわせて、遺族厚生年金(報酬比例部分)も改定率+2.0%の引き上げとなります。
1.2 「遺族基礎年金9万人、遺族厚生年金584万人」受給者数に大差あり
令和6年度の遺族年金の受給状況を見ると、制度ごとに大きな差があります。
- 国民年金(遺族基礎年金):約9万人
- 厚生年金(遺族厚生年金):約584万人
とくに遺族厚生年金の受給者数が大きく上回っています。遺族基礎年金には約22万人の「受給権者」がいますが、老齢年金との併給調整により全額支給停止となるケースも多く、実際に受け取っている人は約9万人にとどまります。
また、遺族基礎年金は原則として「18歳年度末までの子がいる配偶者」またはその子に限られる制度です。一方、遺族厚生年金は子どもの有無にかかわらず配偶者が対象となり、一定の条件を満たせば父母なども含まれます。こうした対象範囲の違いから、遺族厚生年金の受給者数は約584万人と大きな差が生じています。
2. 遺族年金生活者支援給付金、2026年度「月5620円」年金に上乗せ
遺族年金生活者支援給付金は所得など一定要件に該当する基礎年金の受給者を支える給付金です。
- 2026年度の月額:5620円←対前年度+170円
大きな増額ではありませんが、食費や光熱費などの生活費の補てんには助かる金額です。
2.1 遺族年金生活者支援給付金の受給世代(令和7年3月時点)
遺族年金生活者支援給付金の受給者総数は 7万7707件ですが、受給世代はどんな世代が多いのでしょうか。年齢別に見てみましょう。
- 30歳未満:6216件
- 30~39歳:7881件
- 40~49歳:3万4072件(最多)
- 50~59歳:2万7828件
- 60歳以上:1710件
もっとも多いのは40代、子育てと生活の両立が最も大変な世代です。給付金が、子育て世代の家計を支える重要な役割を果たしている現状が見えてきます。
3. 遺族厚生年金の見直し、いつ・誰に影響がある?「影響を受けないのはどんな人?」
2025年6月、年金制度改正の一環として「遺族厚生年金の見直し」が公表されました。今回の見直しは将来の新規受給者を対象とするもので、すでに遺族厚生年金を受給している人には影響はありません。
改正後の制度が適用されるのは、2028年4月1日以降に亡くなった方の遺族、および施行日に40歳未満の受給権者などが対象となる見込みです。制度の移行は数十年の経過措置を設けて段階的に行われます。今回の見直しは、「男女差の解消」で社会情勢や働き方の変化に合わせた制度の適正化が大きな目的です。
これまで、
- 女性は比較的長期に受給できる仕組み
- 男性は受給できないケースも多い
という男女の差がありました。これを整理する形になります。
3.1 影響を受けるのは誰?
対象となるのは、子どものいない若年・中年層の配偶者です。
女性
夫死亡時に40歳未満の妻。現在は30歳未満が5年の有期給付ですが、40歳未満まで拡大(段階的)されます。これにより、新たに対象となる30代女性は年間約250人と推計されています。
男性
妻死亡時に60歳未満の夫。現在は55歳未満だと受給できないのですが、今後は受給可能になります。対象者は年間約1万6千人と見込まれています。
3.2 どう変わる?
今回の見直しでは、子どものいない配偶者への遺族厚生年金の仕組みが大きく変わります。
まず、これまで生涯給付となるケースがあった制度を見直し、原則として「5年間の有期給付」へと改められます。対象は、子のない妻(一定年齢未満)と子のない夫(60歳未満)です。
ただし、単に給付期間を短縮するだけではありません。5年間の給付期間中は「有期給付加算」が新設され、モデルケースでは現在の約1.3倍に増額されます。長期保障型から、一定期間に手厚く支える「短期集中型」の仕組みに転換するのが今回の改正の特徴です。
さらに、5年経過後も一律で打ち切られるわけではありません。
継続給付の対象となるケース
- 障害がある場合(障害年金受給者など)
- 所得が一定基準以下の場合(単身で年収約122万円以下が目安)
収入が増えるにつれて段階的に減額され、概ね月収20~30万円を超える水準で支給終了となる仕組みです。
3.3 影響を受けない人
制度改正と聞くと不安が広がりがちですが、次の人には影響はありません。
- すでに遺族厚生年金を受給している人
- 配偶者死亡時に60歳以上の人
- 18歳年度末までの子がいる人
- 2028年度時点で40歳以上の女性
とくに子育て世帯については給付期間の変更はなく、むしろ遺族基礎年金の子加算は増額方向とされています。
4. まとめにかえて
遺族基礎年金の「対前年度+1300円」という増額は、物価高騰が続く中での大切な生活の支えとなります。
しかし、遺族厚生年金との受給者数の差に見られるように、加入している年金の種類によって保障の厚さは大きく異なります。さらに2028年度からは男女差の解消を目的とした改正が行われ、適用日を境に給付期間などのルールが一新される点に注意が必要です。
今回の記事で紹介した基準額や適用条件は、万が一の際のキャッシュフローを予測する上で極めて重要なデータとなります。最新の情報を味方につけて、前向きに将来の備えを整えていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
村岸 理美