日ごろからこのような言葉のシャワーを浴びていると、少しずつ「育てるなら女の子がいいな」と心が傾く女性もいるのではないかと思うほどです。これらの言葉に共通するものとしては

  • 「男の子より女の子がいい」という経験の押し付けがある
  • こちらの気持ちや境遇を決めつけている節がある

という2点です。

とはいえ、それぞれの人には決して悪意はないはずなので、最近は「いろんな考え方がある」と受け止め、全くといっていいほど意に介さなくなりました。

一方で、「これから本当に楽しみね!」と目をキラキラさせて言ってくれる人、会うたびに「かわいいかわいい」と言ってあやしてくれる人、わんぱくな次男の泥にまみれたクツの裏を洗ってくれて「子どもは元気じゃなきゃ!」と笑う近所のおじさんもいます。

こちらの心に寄り添った言葉は、時々涙が出るほどうれしく、心の中に深く染み入ります。

筆者には男の子を育てた経験しかありませんが、3人とも性格が異なり、それぞれに愛おしく、毎日目がまわるような忙しさではありますが、「女の子がいなくてかわいそう」というニュアンスを含んだ言葉は少々心外でもあります。

厳しくなる「落ち着きのない子」「わんぱくな子」への眼差し

男女格差が叫ばれている日本において、「女児が1人はいることが望ましい」という考えを持つ不思議な風潮は確かに存在します。その理由のひとつとしては、「女の子のほうが育てやすい」というものがあるのではないでしょうか。

一昔前に比べ「わんぱくな子」「元気の良い子」「落ち着きのない子」への眼差しが厳しくなっています。同時に「落ち着いた子」「手のかからない子」「育てやすい子」がより好まれる傾向が強まっているようにも思います。

男女平等とはいっても、子どものころから性別ごとに言動や嗜好の傾向があり、大人の考える「育てやすさ」の物差しでは、女の子のほうが当てはまる部分が大きいのかもしれません。また、母親が多くの家事・育児を担う現場においては、同性である女の子のほうがより行動を予想しやすく負担が少ないという側面もあると推測できます。

余談ですが、女の子の内孫が3人いる顔見知りの中国人女性は、「ウラヤマシイヨ! 男がイイヨ! 男がスキダヨ!」と、折に触れて威勢のいい片言の日本語であいさつ代わりに言ってきます。国によっても人によっても理想の性別に対しての考え方はそれぞれ。男の子を育てている相手に対して、「女の子のほうがいい」と言うのは、そろそろやめにしませんか?

【参考】「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査」(国立社会保障・人口問題研究所)

北川 和子