最近、「資生堂が過去最大の赤字へ転落」「株価急落」などニュースやSNSでショッキングな話題を目にし、不安に感じている投資家も多いのではないでしょうか。

日本を代表する化粧品メーカーに、一体何が起きているのでしょうか。

今回は、経済・投資専門YouTubeチャンネル『イズミダイズム』より、元機関投資家でアナリストの泉田良輔氏が、資生堂の決算を徹底分析した内容を紐解いていきます。

1. なぜ巨額赤字になったのか? 犯人は「のれん減損」

まずは、衝撃的な数字の正体を確認しましょう。

2025年12月期の第3四半期決算短信によると、1月〜9月の累計で約440億円もの最終赤字となっています。さらに通期(1年間)の予想でも、約520億円の赤字になる見通しです。

泉田氏は、この赤字の最大の要因は本業の不振ではなく、「のれんの減損」という会計上の処理にあると指摘します。

「のれんの減損」とは? 簡単に言えば、「過去に買収した企業の価値を見直し、帳簿上の価値を減らすこと」です。

資生堂、「過去最大の赤字」でも倒産リスクがほぼゼロの理由を動画で見る

資生堂は2019年にアメリカのスキンケアブランド「Drunk Elephant(ドランク エレファント)」などを買収しました。当時は高成長を見込んで高値で買収しましたが、市場環境の変化で計画通りに利益が出なかったため、「価値を下方修正(減額)」したのです。

今回、この修正額だけで約468億円にものぼります。これが赤字の主因です。

のれんの減損損失46818百万円を計上1/5

のれんの減損損失46818百万円を計上

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

2. 「損益計算書は真っ赤」でも「キャッシュフローは黒字」のカラクリ

ここで泉田氏が最も強調するのが、「会計上の赤字(PL)」と「お金の出入り(CF)」は全く別物であるという点です。

  • PL(損益計算書): 「のれん減損」という損失を計上したため、見かけ上は巨額の赤字(真っ赤)です。
  • CF(キャッシュフロー): しかし、「減損」はあくまで帳簿上の数字を書き換える処理であり、実際に銀行口座から現金が出ていくわけではありません。

実際に「営業キャッシュフロー(本業で稼いだ現金)」を見ると、第3四半期までで615億円のプラスになっています。投資活動などを差し引いた「フリーキャッシュフロー(自由に使えるお金)」も300億円以上のプラスです。

資生堂、「過去最大の赤字」でも倒産リスクがほぼゼロの理由を動画で見る

つまり、「計算上は赤字だけど、手元の現金はむしろ増えている」というのが今の資生堂の実態なのです。

手元の現金はむしろ増えている2/5

手元の現金はむしろ増えている

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

3. 実は「日本」と「中国」はしっかり稼いでいる

ニュースでは「赤字」ばかりが報じられますが、地域別に見ると好調なエリアも存在します。

  • 日本事業: 売上はほぼ横ばいですが、利益(コア営業利益)は前年比で100億円以上増益し、稼ぐ力が明確に回復しています。
  • 中国・トラベルリテール(免税店など): 景気悪化で苦戦していると言われつつも、利益額で見ると約467億円を稼ぎ出し、依然として資生堂の最大の収益源です。

一方で、足を引っ張っているのが米州(アメリカ)事業です。売上が減少し、赤字幅も拡大しています。ここをどう立て直すかが今後の課題と言えるでしょう。

日本と中国が好調3/5

日本と中国が好調

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

4. 資生堂の「体力」は驚くほどある

「赤字続きで、会社が傾いたりしないの?」という心配に対して、泉田氏はBS(貸借対照表)に注目します。

2025年9月末時点で、資生堂が持っている「現金及び現金同等物」は約780億円。さらに、すぐに現金化できるような「その他の金融資産」を含めると、1,000億円以上の流動性を持っています。 これだけの資産があれば、短期的に資金繰りに困るようなことはまず考えにくいでしょう。財務体質は依然として盤石です。

巨額赤字でも、約780億円の現金が残っている4/5

巨額赤字でも、約780億円の現金が残っている

出所:各種データをもとにイズミダイズム作成

5. 今後の注目ポイントは「M&Aの手腕」

では、資生堂の株価や業績が今後本格的に回復するには何が必要なのでしょうか? 泉田氏は「海外企業のM&A(買収)とその後の経営」が鍵になると語ります。

国内市場が成熟している以上、さらなる成長には海外企業の買収が不可欠です。しかし、今回の「のれん減損」のように、高い買い物をして失敗してしまうリスクもあります。

  • 良い会社を適正な価格で買収できるか
  • 買収した後、現地の経営陣とうまく連携して成長させられるか

今後は、この「経営者の手腕」が投資家から厳しく問われる局面になりそうです。

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6. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今5/5

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料