電車内で会社員風の女性が、会社員風の男性に話しかけていました。
「佐藤、これどうするんだっけ」
しつこいようですが、発言者は女性です。話しかけられたほうの男性は、特に気をとめるような素振りもなく、丁寧に返答していました。
男性から、女性に話しかけることもありました。
「木村さん、あそこにあったよね」
またまた、しつこくて恐縮ですが、発言者は男性です。
二人とも真新しいスーツに身を包んでいるところから察するに、社会人一年目の会社員。見るからに初々しく、さわやかな雰囲気の男女でした。
「女性上位」「肉食女子」は、すでに過去へ
同様の光景は、新入社員を迎えた会社でも、たまに見られるのだそうです。先輩社員の目には、カルチャーショックではあるようですが、概して批判的に語られることは少ないようです。
カルチャーショックを感じる世代にとっては、会社内でも男性が女性を呼び捨てにすることはあっても、その逆はありえないことでした。その後、女性の上司や先輩が、男性の部下や後輩を呼び捨てにしたり、「くん」付けにしたりする風潮が話題になったこともありました。
現在は、これら過去の風潮とは少し異なっています。まず、女性が呼び捨てにするのは、同輩の男性のみだという点です。それも、二年目、三年目になると自然に消えていくそうです。つまり後輩の男性であっても、呼び捨てにすることはなく、「さん」あるいは「くん」付けに変わっていきます。
次に、従来が「女のくせに」や「女だてらに」だったとしたら、現在は「女だから」といった感じで、ごく当たり前のように行われている点が過去と異なっています。
ひと昔前の「くん」付け女子には、女性上位や男女同権、社会進出といった背景が垣間見られていました。また肉食女子といった気負いすら、呼び捨て女子には感じられません。周囲の目に批判的なものが少ないのは、この自然さのせいかもしれません。