2026年度(令和8年度)がスタートし、新生活が本格的に動き出す4月。そろそろ、5月〜6月頃に届く「住民税の決定通知書」が気になり始める時期ではないでしょうか。
昨年(2025年)11月に高市内閣が打ち出した新たな経済対策では、デフレ脱却と消費喚起を掲げ、ガソリン税の二重課税解消や電気・ガス料金の割引など、家計支援を目的とした「積極財政」が推進されています。
こうした国や自治体による生活支援・物価高対策のなかでも、特に手厚い優遇措置の対象となりやすいのが「住民税非課税世帯」です。
本記事では、住民税非課税世帯が対象となる主な優遇措置を5つに整理してご紹介します。さらに、給与収入や年金収入がどの程度で住民税非課税になるのか、具体的な目安についてもわかりやすく解説します。
1. 【住民税非課税世帯】が対象の「優遇措置」5選!
物価上昇や感染症対策を背景に、これまで国や自治体は、住民税非課税世帯を中心とした支援策を継続的に実施してきました。
こうした世帯は、所得が一定水準を下回ることで住民税が課されないため、給付金や負担軽減策の対象になりやすい特徴があります。
支援内容は現金給付に限られません。医療・年金・子育て・教育といった生活の基盤に関わる分野で、複数の優遇措置が用意されています。
本章では、2026年4月時点で整理できる代表的な5つの制度を確認します。
1.1 優遇措置1:国民健康保険料(応益割)の減額
- 応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額
1.2 優遇措置2:介護保険料の減額
- 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる
1.3 優遇措置3:国民年金保険料の免除・納付猶予
- 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか
1.4 優遇措置4:保育料の無償化
- 0歳から2歳までの保育料が無償化
これにより、0~5歳までの保育料が無料になる
1.5 優遇措置5:高等教育の修学支援新制度
- 授業料・入学金の免除または減額
- 返還を要しない給付型奨学金
上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化
これらに加え、自治体独自の施策が上乗せされる場合もあります。
次章では、そもそも「住民税非課税世帯」とは何を指すのか、その定義を整理します。
2. 「住民税非課税世帯」はどんな世帯?住民税の仕組みを知ろう!
住民税非課税世帯を正しく理解するには、最初に住民税そのものの仕組みを確認しておく必要があります。
ここでは、住民税がどのような税金で、どの状態を「非課税」と呼ぶのかを整理していきます。
住民税は、都道府県や市区町村といった自治体が徴収する地方税で、地域住民が等しく行政サービスを受けるための重要な財源です。
道路や上下水道の整備、福祉・教育サービスなど、日常生活を支える幅広い分野に充てられています。
個人に課される住民税は、「均等割」と「所得割」の2つで構成されています。
- 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割:所得に応じて税額が決まる部分
この「均等割」と「所得割」の双方が課されない状態を指して、「住民税が非課税」と呼びます。
さらに、世帯を構成する全員が非課税である場合、その世帯全体が「住民税非課税世帯」に該当します。
なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、給付金や各種支援制度の対象になるかどうかは自治体ごとに判断が分かれます。
制度の適用可否は、お住まいの市区町村が定める基準を必ず確認するようにしましょう。
3. 住民税が免除される条件は?全国共通の判定パターン3つ
では、どのような世帯が住民税非課税となるのでしょうか。その条件は、大きく分けて次の3つに整理できます。
- 生活保護を受けている
- 障がい者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
- 前年の所得が各市区町村の基準を下回る
1つ目と2つ目の条件は全国共通ですが、3つ目の所得基準については市区町村ごとに異なります。
そのため、同じ収入水準でも、居住地によって課税・非課税の判定が分かれる点には注意が必要です。
4. 失業・病気・介護で働けなくなったら住民税はどうなる?
現役世代でも、突然の失業や長期療養、家族の介護などによって収入が途絶えることは珍しくありません。こうした局面で多くの人が気になるのが、「この状態でも住民税は払い続けなければならないのか」「非課税世帯になれるのか」という点でしょう。
まず押さえておきたいのは、住民税は“今の状況”ではなく“過去の所得”をもとに決まる税金だということです。
4.1 収入がなくなっても、すぐに非課税にはならない理由
住民税は、毎年1月1日時点で住民票のある自治体が、前年1年間の所得を基準に課税・非課税を判定します。
そのため、年の途中で仕事を失ったり、病気や介護で働けなくなったとしても、その年に請求される住民税は、原則として前年の収入を前提に計算されたままです。
つまり、収入が急にゼロに近づいても、制度上は「まだ稼いでいた人」として扱われ、住民税の負担が続くことになります。
4.2 非課税になるかどうかは「翌年」に決まる
失業や大幅な収入減の影響が、住民税の非課税判定として反映されるのは、基本的に翌年度です。前年の所得が非課税基準以下になった場合、そこで初めて「住民税非課税世帯」と判定されます。
このため、生活が最も苦しいタイミングと、制度上の救済が適用される時期がズレてしまい、「収入はないのに税金だけは請求される」という状況に陥るケースも少なくありません。
4.3 当面の負担は「減免・猶予制度」で対応する
当年分の住民税について何も手立てがないわけではありません。収入が急減した場合には、住民税の減免や納付猶予といった制度を利用できる可能性があります。
たとえば、
- 会社都合による失業
- 倒産や事業停止
- 病気や介護による就労困難
といった事情がある場合、自治体の判断で負担が軽減されるケースもあります。
制度の有無や条件は自治体ごとに異なるため、「自動的に適用される」とは限りませんが、申請しなければ何も変わらないのが実情です。一度、自治体窓口や公式情報を確認しておく価値はあります。
4.4 「将来の非課税」と「今の支払い」は分けて考える
- 非課税世帯になるかどうかは翌年度の判定
- 目の前の住民税負担をどうするかは当年の減免・猶予制度
この2つは別物として考える必要があります。現役世代が予期せぬ事情で働けなくなったときこそ、制度のタイムラグを理解したうえで、使える支援を一つずつ確認していくことが重要です。
5. 所得いくらだと「住民税非課税」になる?所得ベースの水準をチェック
住民税非課税世帯に該当するかどうかは、「所得」が基準となります。ここでは、具体例として兵庫県神戸市の基準をもとに確認してみましょう。
神戸市では、次の算式で算出された金額以下であれば、住民税(市民税・県民税)が非課税となります。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、前年の合計所得金額が48万円以下で、納税義務者と生計を一にする配偶者を指します。
このように、非課税の判定は「家族構成」を前提とした計算式で行われる点が大きな特徴です。
6. 給与収入・年金収入に置き換えた場合は?住民税非課税になる目安を確認!
所得は、収入額そのものではなく、各種控除を差し引いた後の金額で算出されます。
そのため、実務上は「収入ベースでの目安」を把握しておくことが重要です。
ここでも神戸市の基準を用いて、世帯構成別に整理します。
6.1 単身世帯
合計所得金額が45万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が100万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
6.2 同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合
合計所得金額が101万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)
単身世帯の場合、収入源が給与のみであれば、おおむね年収100万円以下が住民税非課税のラインとされています。また、65歳以上で公的年金収入だけに依存しているケースでは、非課税となる目安は年金収入155万円以下です。
これに対し、同一生計の配偶者や扶養親族を抱える世帯では、非課税判定に用いられる収入基準そのものが引き上げられます。世帯全体で生活を支えている点が考慮されるためです。
特に注目したいのが、65歳以上で年金収入のみの夫婦世帯などの場合です。このケースでは、非課税となる年金収入の目安が211万円以下まで拡大します。単身世帯と比べると、適用条件が大きく異なることが分かります。
このように、住民税が課されるかどうかは単純な年収額だけでは判断できません。世帯構成に加え、給与か年金かといった収入の性質によって、非課税となる基準は大きく変わります。
7. 「非課税世帯」は年齢が上がるほど増える?実態を確認!
厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」をもとに、年代別に住民税が「課税されている世帯」の割合を確認してみましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む
住民税が課税されている世帯の割合を年代別にみると、30〜50歳代ではおおむね9割弱と高い水準にあります。
しかし、60歳代に入るとこの割合は79.8%まで低下し、現役世代と比べて課税世帯の比率が明確に下がります。
さらに高齢期に進むとその傾向は一層顕著です。65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%と課税割合が下がり、裏を返せば「住民税が非課税となっている世帯」が過半数に近づいていくことがわかります。
このように、年齢が上がるにつれて住民税課税世帯の割合が段階的に減少していく背景には、収入構造と税制の両面での変化があります。
多くの人は65歳前後を境に年金中心の生活へ移行し、現役時代と比べて収入水準が下がります。加えて、65歳以上には公的年金等に対する所得控除が設けられており、課税所得が抑えられやすい仕組みになっています。
また、遺族年金が非課税である点も重要です。これらの制度的要因が重なり、年金を主な収入源とする高齢者世帯は、結果として住民税非課税世帯に該当しやすい状況に置かれているといえるでしょう。
8. 気になる老後生活。年金収入だけで暮らせている世帯はどのくらい?
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している世帯のうち、収入のすべてを年金・恩給に依存している世帯は43.4%にとどまっています。
言い換えれば、老後の生活費を公的年金や恩給だけで賄えている世帯は、全体の半数に満たないということになります。
総所得に占める公的年金・恩給の割合を区分してみると、構成は次のようになっています。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
年金の受給額には個人差があるものの、高齢者世帯では収入と支出のバランスが必ずしも取れていないケースが少なくありません。
支出が収入を上回る赤字状態に陥っている世帯もあれば、最低限の生活費であっても収入が追いつかない状況に置かれる世帯も見受けられます。
特に後者の場合、公的年金・恩給のみで生活を維持することは難しく、別の補填手段を前提に考えざるを得ません。この分布からは、多くの高齢者世帯が年金以外の収入源を何らかの形で組み合わせながら生活している実態が浮かび上がります。
私的年金や預貯金、運用資産に十分な余力がない場合には、就労による追加収入、家族からの支援、各種生活支援制度の活用などを含め、早い段階から現実的な選択肢を検討しておくことが重要になります。
9. まとめにかえて
本記事では、住民税が非課税となる収入水準について、給与収入や年金収入の目安を中心に整理してきました。
住民税が非課税となる主な要件は、大きく分けて次の三つです。
一つ目は生活保護を受給している場合、二つ目は障害者・未成年者・寡婦(夫)・ひとり親で前年所得が135万円以下の場合、三つ目は前年の所得が各市区町村ごとに定められた基準を下回る場合です。
たとえば、病気やケガで仕事を辞め、治療のために就労できていない方や、退職後に次の仕事が見つからず前年より所得が大きく減少した方は、住民税非課税の要件に該当する可能性があります。
そのため、自分が住む自治体の基準を事前に確認しておくことは、家計管理のうえで欠かせません。
また、現役時代と比べて収入が大きく減りやすい高齢期には、住民税非課税世帯に該当するケースも少なくありません。
住民税非課税世帯を対象とした優遇措置は、本記事で取り上げたもの以外にも複数存在します。
どのような支援や軽減策が利用できるのかを把握しておくことは、老後の家計負担を少しでも軽くするための重要な視点です。
気になる点があれば、お住まいの自治体の公式サイトを確認したり、市区町村の窓口で相談してみるとよいでしょう。





