6. 【制度解説】2026年4月から変わる在職老齢年金の仕組み
2025年6月に成立した年金制度改革関連法により、2026年4月から在職老齢年金制度が見直されます。
この改正は、多様化する働き方やライフスタイルに対応できる年金制度の実現を目的としています。改正の内容には、パートなどで働く人の社会保険加入対象拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃)や、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給条件の緩和)などが含まれています。
今回は、特に働く高齢者への影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」に注目します。
6.1 「在職老齢年金制度」の見直し
在職老齢年金制度とは、60歳以降に老齢厚生年金を受給しながら就労している場合、年金額(※)と給与・賞与の合計が一定の基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度です。
(※老齢基礎年金は対象外で、全額支給されます)
この支給停止の基準額は年度ごとに調整されてきました。
- 2022年度:47万円
- 2023年度:48万円
- 2024年度:50万円
- 2025年度:51万円
- 2026年度:62万円
2026年4月から適用される今回の改正では、従来の51万円から62万円へと基準額が大幅に引き上げられます。厚生労働省の試算によれば、この改正によって新たに約20万人が年金を全額受給できる見込みです。
この基準額の引き上げにより、年金の減額を意識して働き方を抑制していた高齢者も、より自由に働く選択肢を持つことができるようになります。
7. まとめにかえて
物価高騰が続く中、老後の家計管理は一段と厳しさを増しています。
現在の70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況を見ると、「持つ世帯」と「持たざる世帯」との間で格差が鮮明になっています。
公的年金だけで生活費をすべて賄うことは難しく、不足分を貯蓄から切り崩す生活が一般的になりつつあると言えるでしょう。
こうした中、2026年4月からは「在職老齢年金」の支給停止基準額が引き上げられ、一定以上の給与収入があっても年金をカットされずに全額受給できるケースが増えるなど、働きながら年金を受け取る選択がより身近になります。
制度の緩和により、就労継続と受給を両立させる柔軟な働き方が広がることが期待されるでしょう。
ご自身の貯蓄額や将来の収入見通しを把握し、世帯の状況に合わせた生活設計を再点検しておくことが、安定した老後資金管理において大切なポイントとなってきそうです。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)12月分及び2025年(令和7年)平均
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
マネー編集部貯蓄班
