物価の上昇が続くなか、老後の生活資金をどう確保するかは、かつて以上に切迫したテーマとなっています。
「老後2000万円問題」が象徴するように、年金だけで暮らすことの難しさは広く知られるようになりましたが、実際の70代夫婦の家計状況は一様ではありません。
貯蓄に十分な余裕を持つ世帯がある一方で、金融資産をまったく保有していない世帯も一定数存在し、老後の資産状況は明確に二極化しています。多くの世帯では、年金収入だけでは毎月の生活費を賄いきれず、不足分を貯蓄の取り崩しで補う状態が続いているのが実情です。
本記事では、70代夫婦世帯の貯蓄額の分布や家計収支の実態をデータから確認するとともに、2026年4月から見直される在職老齢年金制度の内容と、その影響についても具体的に解説していきます。
1. 【70歳代】ふたり以上世帯「老後資産」はいくらある?平均と中央値から見る実像
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとに、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有状況を確認します。
※ここでいう金融資産には、預貯金のほか、株式や投資信託、保険商品などが含まれ、日常的な決済に使う普通預金残高は含まれていません。
同調査によると、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円です。ただし、この平均値は一部の高資産世帯によって引き上げられており、一般的な生活実態を反映しているとは限りません。
より実態に近い指標とされる中央値は1178万円で、多くの世帯がこの水準前後に集中していることがわかります。
世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
貯蓄額の分布を見ると、貯蓄額が200万円未満の世帯が20.5%を占める一方で、3000万円以上の金融資産を持つ世帯も25.2%存在しており、老後の資産状況には大きな開きがあります。
そのほか、100万円未満から300万円未満といった少額層も一定数存在する一方、1000万円以上の資産を保有する世帯も複数の階層に分かれて分布しています。
貯蓄額は、退職金の有無や現役時代の収入状況、相続の影響、さらには健康状態など、多くの要因によって大きく差が生じます。また、公的年金の受給額も、現役時代にどの程度加入していたかによって個人差があるため、同じ年齢でも家計の余裕にはかなりの開きがあります。
こうした条件下では、金融資産が少ない世帯の場合、年金だけで日々の生活費をまかなうのは困難となる場合も少なくありません。
そのため、老後の生活を安定させるには、各世帯の状況に応じた計画的な家計設計が重要です。具体的には、健康で活動可能なうちにパートやアルバイトで収入を補ったり、不動産や金融商品による副収入を確保したりするなど、早期から多様な選択肢を準備しておくことが安心につながります。
