年金は老後の重要な収入ですが、受給が始まると、確定申告を行う必要があるのか迷う人は少なくありません。

年金受給者の中には、一定の条件を満たすことで確定申告が不要となる「確定申告不要制度」が適用される場合があります。

ただし、この制度はすべての年金受給者が対象となるわけではないため、注意が必要です。

本記事では、年金受給者を対象に「確定申告が必要となるケース」と「申告を行わなくてよいケース」を整理して解説します。

1. 年金からも「税金」が特別徴収(天引き)されているって本当?

住民税は、地域社会の公共サービスやインフラ整備を支える重要な財源です。

この住民税は、給与所得だけでなく、老齢年金から差し引かれるケースも少なくありません。

ここでは、年金から住民税が差し引かれる仕組みについて、押さえておきたい基本的なポイントを解説します。

年金からの特別徴収は、高齢者と自治体の双方にとって手続きの負担を軽減できる仕組みとして設けられています。

公的年金からの特別徴収(年金特別徴収)について1/6

公的年金からの特別徴収(年金特別徴収)について

出所:東広島市「公的年金からの特別徴収(年金特別徴収)について」

1.1 高齢者の方にとっての天引きのメリットとは?

年金支給時に自動で差し引かれるため、銀行や郵便局で納付手続きを行う必要がありません。

その結果、支払い忘れを防げる点もメリットといえるでしょう。

年金から天引きされるもの5つ

  • 介護保険料
  • 国民健康保険料(税)
  • 後期高齢者医療保険料
  • 住民税
  • 森林環境税

老後になると、年金から保険料や税金などが自動的に控除されるケースが多い点を押さえておく必要があります。

次に、確定申告について説明します。

2. 確定申告は2月から!そもそも「確定申告」って何?

令和7年分確定申告「納付の期限などのお知らせ」2/6

令和7年分確定申告「納付の期限などのお知らせ」

出所:国税庁「令和7年分確定申告特集」

確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの所得をもとに、所得金額とそれに対応する税額を確定させるための手続きです。

原則として、申告期間は翌年の2月16日から3月15日までとされており、この間に所得税および復興特別所得税の申告手続きを行います。

なお、令和7年分の確定申告は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)までが申告期間となっています。

3. 年金受給者は「確定申告」が必要?不要?

公的年金である国民年金や厚生年金は、老後の主な収入源であり、税法上は「雑所得」に区分されます。

そのため、原則として所得税および復興特別所得税の確定申告が必要です。

一方で、一定の要件を満たす場合には、「確定申告不要制度」が適用され、申告を省略できるケースもあります。

3.1 年金受給者の確定申告が不要になる「確定申告不要制度」とは?

次の2つの条件をいずれも満たしている場合は、「確定申告不要制度」の対象となります。

  1. 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
  2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

3.2 「公的年金等」に含まれる所得には何がある?

  • 国民年金や厚生年金
  • 共済組合
  • 恩給
  • 厚生年金基金
  • 国民年金基金 など

3.3 「公的年金等に係る雑所得以外」の所得には何がある?

公的年金等に係る雑所得以外の所得4/6

公的年金等に係る雑所得以外の所得

出所:国税庁「公的年金等を受給されている方へ」

◆給与所得(例:給与・賞与・パート収入など)

  • 給与等の収入金額ー給与所得控除=給与所得

◆公的年金等以外の雑所得(例:個人年金・原稿料など)

  • 総収入金額ー必要経費=公的年金等以外の雑所得

◆配当所得(例:株式の配当金・投資信託の分配金など)

  • 収入金額ー株式などの元本取得に要した負債の利子

◆一時所得(例:生命保険の満期返戻金)

  • (総収入金額ー収入を得るために直接要した金額ー特別控除額【最高50万円】)×1/2

所得とは、得た収入から必要な経費を差し引いた後の金額を指します。

各所得についても、この考え方に基づいて算出されます。

4. 確定申告が必要かどうかは「公的年金等の源泉徴収票」を見て判断可能

確定申告の対象となる期間に受給した公的年金の金額は、「公的年金等の源泉徴収票」で確認することができます。

以下は記載内容の一例です。

(1)「支払金額」には、税金や社会保険料が差し引かれる前の、1年間に受け取った年金の総額が示されています。

この金額が400万円以下で、かつ他の所得が年間20万円を超えない場合には、確定申告は不要とされています。

4.1 【素朴な疑問を解決】「公的年金等の源泉徴収票」はいつ・どこで確認できるの?

公的年金等の源泉徴収票は、郵送で受け取れるほか、マイナポータルやねんきんネットからも確認できます。

以下は、令和6年分について日本年金機構が2024年12月27日に公表した発行予定スケジュールです。

  • 郵送:1月上旬頃より順次発送
  • マイナポータル:1月上旬頃にマイナポータルの「お知らせ」に電子送付
  • ねんきんネット:1月上旬頃より確認可能

5. 【最新資料】シニアが受給している「国民年金・厚生年金」の平均月額いくら?

国民年金や厚生年金などの公的年金について、年間の受給額が400万円を上回る場合には、確定申告を行う必要があります。

では、年金収入が400万円を超える人は、実際にはどの程度いるのでしょうか。

ここでは、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に見ていきます。

5.1 「国民年金」の平均月額はいくら?

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

年金月額階級ごとの受給者数

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

国民年金は、満額で受給した場合でも月額6万9308円にとどまり、年間ではおよそ83万円です。

この水準であれば、年金以外の所得が年間20万円を超えない限り、確定申告は不要となります。

5.2 「厚生年金」の平均月額はいくら?

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含む

年金月額階級ごとの受給者数

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金は、現役時代の収入水準や加入期間によって受給額に大きな差が生じるため、月額33万円程度となり年額400万円を超えるケースも想定されます。

ただし、実際に月30万円以上を受け取っている人は1万9283人にとどまっており、全体から見るとごく少数です。

このことから、公的年金以外の所得が年間20万円を超えない場合、年金収入のみを理由に確定申告が必要となる人は、限定的だといえるでしょう。

6. 年金受給者が知っておきたい「確定申告の留意点」は何がある?

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beauty-box/shutterstock.com

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確定申告不要制度に該当する場合でも、所得税や復興特別所得税の還付を受けたいときは申告手続きが必要です。

また、公的年金による雑所得以外の所得が20万円以下で、所得税・復興特別所得税の申告義務がない場合でも、住民税の申告が求められることがあります。

確定申告は所轄の税務署で、住民税についてはお住まいの市区町村で確認・相談するようにしましょう。

7. 確定申告をもっと手軽に。スマホで完結する申告方法

前章で触れたとおり、確定申告不要制度の対象となる場合でも、状況によっては確定申告を行ったほうが有利になることがあります。

もっとも、「確定申告」と聞くと、手続きが煩雑で難しいという印象を持つ人も少なくないでしょう。

しかし近年は、スマートフォンとマイナンバーカードの連携が進み、確定申告を行いやすい環境が整ってきています。

スマートフォンのマイナンバーカード機能を使えば、カードを読み取らなくても申告書の作成やe-Taxによる提出が可能です。

また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、案内に従って入力するだけで申告書を作成でき、計算は自動で行われるため、計算ミスを防ぐことができます。

さらに、マイナポータル連携を利用することで、源泉徴収票や保険料控除証明書などの情報を自動で取得し、申告内容に反映させることができ、書類準備や入力の負担を大幅に減らせます。

申告期間中は窓口が混雑しやすいため、早めに準備を進めておくと安心です。

8. 年金受給者の方は「申告が必要か」事前に確認しておこう

本記事では、年金受給者を対象に「確定申告が必要となるケース」と「申告を行わなくてよいケース」を整理して解説していきました。

公的年金の金額が所定の範囲内で、かつ他の所得も基準以下であれば確定申告は不要とされていますが、いずれかの条件を上回る場合には申告が求められます。

申告の要否は、「公的年金等の源泉徴収票」を確認することで判断できます。

最近では、スマートフォンを利用して申告手続きを進められる環境が整っているため、迷った場合は早めに窓口で確認し、自分に合った対応を取るようにしましょう。

参考資料

橋本 優理