新NISAが始まって2年目。非課税保有期間の無期限化や年間最大360万円の投資枠拡大を背景に、利用者は急増しています。
「運用益が非課税」というメリットが注目される一方で、もし口座の名義人が亡くなった場合、その資産はどう扱われるのでしょうか。今回は、金融庁・国税庁の公表資料をもとに、NISAの最新利用状況と、見落としがちな相続時のポイントを整理します。
1. NISA、資産形成の定番制度へ「2696万口座に拡大!」
少額投資非課税制度(NISA)は、株式や投資信託の運用益が非課税となる仕組みです。2024年から制度が刷新され、非課税保有期間は無期限に。つみたて投資枠と成長投資枠を併用することで、年間最大360万円まで投資できるようになりました。
金融庁の公表データによれば、2025年6月末時点でNISA口座数は約2696万口座に到達。総買付額も累計63兆円を超え、資産形成のインフラとして定着しつつあります。
1.1 「都市部から地方まで」全国に拡大するNISA
NISAの広がりは一部の都市部に限りません。東京都が約393万口座と最多ですが、神奈川・大阪・愛知などの大都市圏に加え、北海道から沖縄まで全国各地で数十万単位の口座が開設されています。
地域差はあるものの、居住地を問わず利用が進んでいる点が特徴です。
1.2 「60~70歳代以上」が約3割の地域も!シニア層でも広がるNISA
利用者の年齢層も幅広く、30〜50代が中心である一方、60代が約15〜18%、70代以上が1〜2割弱を占める地域もあります。
老後資金の運用や資産の整理を目的に活用するシニア層も少なくありません。いまやNISAは「若年層向け」ではなく、全世代型の制度へと変化しています。
2. NISA、口座の名義人が亡くなる「非課税→課税」に変わる!NISA相続の基本ルール
NISA口座の名義人が亡くなると、その時点で非課税の扱いは終了します。口座内の株式や投資信託は、いったん課税口座(特定口座または一般口座)へ移され、その後、相続人名義の口座へ移管される流れとなります。
NISA口座そのものを家族が引き継ぐことはできません。
NISAの相続ルールとは?

LIMO編集部作成
手続きの流れとしては、まず故人の名義のまま課税口座へ移し、相続が確定した後に相続人(受け取る家族)名義の課税口座へと移管するのが一般的です。この際、スムーズな手続きのためには「原則として引き継ぐ側も、故人と同じ金融機関に口座を持っている必要がある」という点に注意が必要です。
2.1 取得価格「死亡日の終値」にリセット
相続人が受け取る際の取得費は、故人が購入した価格ではなく「亡くなった日の終値」が基準になります。将来売却する際の税金は、このリセット後の価格との差額で計算されます。
3. NISA、資産も相続税の対象。基礎控除と法定相続人の考え方
NISA口座内の資産も、預貯金や不動産と同様に相続税の対象となります。ただし、遺産総額が基礎控除内であれば相続税はかかりません。
遺産に係る基礎控除額の計算式
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
3.1 法定相続人の範囲と順位
相続人の範囲は民法で定められており、配偶者は常に相続人、子が第1順位、子がいない場合は父母、さらに兄弟姉妹へと順位が移ります。
- 配偶者:常に相続人となる
- 子(第1順位):配偶者とともに相続人となる。子が死亡している場合は、孫(直系卑属)が相続人となる。
- 父母(第2順位):子や孫がいない場合に、配偶者とともに相続人となる。父母が死亡している場合は、祖父母(直系尊属)が相続人となる。
- 兄弟姉妹(第3順位):子や孫、父母や祖父母がいない場合に、配偶者とともに相続人となる。兄弟姉妹が死亡している場合は、おい、めい(兄弟姉妹の子)が相続人となる。
なお、相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」です。
相続の手続きをスムーズに進めるためにも、ご両親などがNISA口座をどの金融機関で開設しているかなど、普段は話す機会が少ないお金の情報も、少し意識して共有しておくと、もしもの時に安心です。
4. まとめにかえて
今回は、新NISAの利用拡大の状況と、相続時に押さえておきたい基本ルールを整理しました。NISAは2696万口座に広がる一方、名義人が亡くなると非課税扱いは終了し、取得価格は死亡日の終値に切り替わります。また、口座資産は相続税の対象にもなります。
制度のメリットだけでなく、将来の手続きや税務面も理解しておくことが大切です。資産形成の「始まり」だけでなく「引き継ぎ方」まで見据え、家族と情報を共有しておくことが安心につながります。
参考資料
- 国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」
- 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
- 国税庁「財産を相続したとき」
- 国税庁「相続税のあらまし」
- 金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
- 金融庁「 NISAの利用状況の推移(グラフ)」
- 金融庁「都道府県別のNISA口座開設状況(グラフ)」
長井 祐人