新年を迎え、気持ちも新たに将来の生活設計について考える方も多いのではないでしょうか。

特に50代以降の方々にとっては、年金制度への関心が一層高まる時期かもしれません。

物価の上昇が続くなか、公的年金だけで生活していけるのか、不安を感じることもあるでしょう。

実は、年金の収入額などが一定の基準に満たない場合に、年金に上乗せして給付金が支給される「年金生活者支援給付金」という制度があります。

この記事では、どのような方が対象となり、いくら受け取れるのか、そして手続きはどうすればよいのかを詳しく解説します。

ご自身が対象になるかを確認し、利用できる制度をしっかり活用していきましょう。

1. 年金生活者支援給付金とは?制度の基本的な仕組み

公的年金などの収入やその他の所得を合わせた額が、定められた基準額を下回る年金受給者の生活を支えるために「年金生活者支援給付金」という制度が設けられています。

これは一度きりの給付ではなく、支給要件を満たす限り、年金に上乗せする形で継続的に支給される点が特徴です。

この給付金は、受給している基礎年金の種類によって、以下の3つに分けられます。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

最初に申請手続きが必要ですが、一度手続きを済ませれば、要件を満たしている間は2か月に1度の頻度で年金と同じ口座に支給されます。

2. 年金生活者支援給付金の支給対象となる方の条件

年金生活者支援給付金は3種類あり、それぞれに所得などの支給要件が定められています。

ここでは「老齢年金生活者支援給付金」と、「障害年金生活者支援給付金・遺族年金生活者支援給付金」の2つに分けて、詳しい要件を見ていきましょう。

2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件

老齢年金生活者支援給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入額(※1)と、その他の所得の合計が、生年月日に応じた基準額以下であること
    • 昭和31年4月2日以降に生まれた方:80万9000円以下
    • 昭和31年4月1日以前に生まれた方:80万6700円以下(※2)

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入額には含まれません。
※2 上記の基準額をわずかに超える方にも、収入額に応じて「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。具体的には、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円超~90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円超~90万6700円以下の方が対象です。

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

2.2 「障害年金・遺族年金生活者支援給付金」の対象者

障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金は、以下の要件を満たす方が対象です。

  • 障害基礎年金または遺族基礎年金の受給者であること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて基準額は増えます)

※ 所得には、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。

なお、いずれの給付金も、定められた要件をすべて満たすことが必要です。

3. 年金生活者支援給付金で受け取れる具体的な金額

年金生活者支援給付金は、公的年金に上乗せされる形で支給されます。

ここでは、「老齢」「障害」「遺族」の3種類それぞれについて、具体的な支給額を確認していきましょう。

年金生活者支援給付金の支給金額

年金生活者支援給付金の支給金額

出典:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

3.1 2025年度の支給額について

2025年度の給付額は、前年度から2.7%の引き上げとなりました。

  • 老齢年金生活者支援給付金(月額基準額):5450円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級 6813円、2級 5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円

3.2 参考:2024年度の支給額

参考として、2024年度の支給額は以下の通りでした。

  • 老齢年金生活者支援給付金(月額基準額):5310円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級 6638円、2級 5310円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5310円

ただし、老齢年金生活者支援給付金については、全員が一律で月額5450円を受け取れるわけではありません。この基準額を基に、保険料を納めた期間などに応じて個別の支給額が計算されます。

上記の金額は月額であり、実際の支給日には2か月分がまとめて公的年金の受取口座に支給されます。例えば、月額5450円を満額受給できる場合、1回の支給で1万900円、年間では約6万5000円が支給される計算になります。

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円という実績でした。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付月額です。

4. 給付金を受け取るための申請手続きと流れ

では、この給付金を受け取るためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

「手続きを忘れてしまいそうで心配」と感じる方もいるかもしれませんが、ご安心ください。年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性のある方には、日本年金機構から請求に関する書類が郵送されます。

基本的には、その書類に必要事項を記入して返送するだけで手続きは完了します。

ただし、年金の受給状況によって書類の形式や手続きのタイミングが異なるため、ここでは3つのケースに分けて手続き方法を解説します。

年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

4.1 【ケース1】これから老齢年金の受給を始める方

まだ年金を受け取っておらず、これから受給を開始する方には、受給開始年齢になる3か月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が緑色の封筒で届きます。

その際に、「年金生活者支援給付金請求書」が同封されていますので、必要事項を記入し、年金の請求書と一緒に提出してください。

注意点として、この請求書は年金の受給が開始される年齢の誕生日の前日以降でないと提出できません。

4.2 【ケース2】すでに年金を受給している方

すでに基礎年金を受給している方でも、所得額の変動などによって、新たに年金生活者支援給付金の対象となることがあります。

こうした方々には、毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が薄緑色の封筒で郵送されます。

はがきに必要事項を記入し、同封されている目隠しシールを貼り付け、差出人欄にご自身の住所・氏名を書いてから、切手を貼って投函すれば手続きは完了です。

※支給要件に該当するかどうか確認が必要な方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付される場合があります。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出典:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

4.3 【ケース3】老齢基礎年金を繰上げ受給中の方

最後に、老齢基礎年金を繰上げ受給している方の手続きについてです。

年金生活者支援給付金の受給対象になると見込まれる方には、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの場合は前月初旬)に、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が薄橙色(うすだいだいいろ)の封筒で届きます。

この書類が届いたら、必要事項を記入し、目隠しシールを貼ってから切手を貼付してポストに投函してください。

※このケースでも、支給要件の確認が必要な方にはA4サイズの請求書と所得状況届が届くことがあります。

初回の手続きさえ済ませれば、その後は支給要件を満たす限り自動的に支給が継続されます。

もし所得が増えるなどして要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給は停止となります。

なお、2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が届いた方は、郵送だけでなく「電子申請」での提出も可能になっています。

電子申請を利用した場合、郵送での提出は不要です。

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出典:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

5. 年金受給額には個人差がある点に注意

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均受給月額は、国民年金(老齢基礎年金)が約5万9000円、厚生年金(国民年金部分を含む)が約15万円です。

ただし、これはあくまで平均値であり、実際に受け取る年金額は人によって大きく異なる点に注意が必要です。

特に厚生年金は、現役時代の収入や加入期間によって受給額に顕著な差が出ます。

「厚生年金に加入していれば安心」と思われがちですが、実際には月額30万円以上を受け取る方がいる一方で、月額1万円に満たない方もいるなど、受給額は非常に幅広くなっています。

そのため、ご自身の年金収入とその他の所得を合わせても、一定の基準を下回る場合には、「年金生活者支援給付金」の支給対象となる可能性があります。

厚生年金保険(第1号) 男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数

厚生年金保険(第1号) 男女別年金月額階級別老齢年金受給権者数

出典:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

6. まとめ

今回は、年金生活者の暮らしを支える「年金生活者支援給付金」について詳しく解説しました。

この制度は、公的年金の収入だけでは日々の生活に不安を感じる方にとって、大きな支えとなり得るものです。

対象となる可能性のある方には、日本年金機構から手続きに関する案内が届きますので、見落とすことのないよう注意しましょう。

もしご自身が対象かもしれないと思われたら、送られてきた書類の内容をしっかりと確認し、忘れずに手続きを進めることが大切です。

物価の上昇が家計に影響を与えるなか、こうした公的な支援制度を正しく理解し、賢く活用することが、心穏やかなシニアライフを送るための重要な鍵となります。

この記事が、あなたのこれからの生活をより豊かにするための一助となれば幸いです。

参考資料

石津 大希