2024年にスタートした新NISA制度は、長期的な資産形成の追い風となっています。特に「つみたて投資枠」では、金融庁の基準をクリアした商品が揃っており、投資初心者でも最初の一歩を踏み出しやすい設計になっています。

2025年12月現在、つみたて投資枠で選択可能な銘柄は347本にのぼりますが、多くの投資家から支持を集めているのが「オルカン」と「S&P500」の2つの銘柄です。

つみたて投資枠の対象商品1/3

つみたて投資枠の対象商品

出所:金融庁「つみたて投資枠対象商品」

新しい手帳に今年の目標を書き込む、そんな清々しい空気に包まれる1月です。お正月の賑わいが過ぎ去り、ふと現実に戻って家計簿を見返している時期かもしれません。

そこで本記事では、両者の過去のパフォーマンスを比較分析するとともに、2025年に向けた市場環境を踏まえた上での相違点と選び方のポイントを解説します。これから積立投資を始める方が、ご自身の投資戦略に合った一本を見つけるための判断材料となれば幸いです。

1. 銘柄の特徴

まず初めに、長期投資の選択肢として代表的な「オルカン」と「S&P500」の特徴を説明していきます。

1.1 オルカン(オールカントリー)

オルカンとは、全世界(オールカントリー)株式と連動した値動きをするとした投資信託の銘柄の略称です。

今回の比較では、オールカントリーの代表的な銘柄として、「eMAXIS Slim 全世界株式」を例に挙げて説明します。オルカンは世界中の株式を投資先の対象としており、先進国だけでなく新興国の株式市場も含めて約50カ国、2900社以上の企業が投資先に含まれています。

内訳としては、米国株式が6割を超えるものの、日本やイギリスなどのその他の先進国が3割程度、そして中国・インド・台湾などの新興国が1割程度を占めており、その投資先は幅広くなっています。

地域的にグローバルな分散投資を一つの商品で実現できる特徴があり、アメリカだけでなく世界経済全体の成長を捉えることができます。

1.2 S&P500

S&P500とは、アメリカのトップ500企業で構成される、代表的な株価指数であるS&P500と連動した値動きをするインデックスファンドを指す略称です。今回は代表的なものとして「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を例に挙げて説明します。

S&P500はアメリカの経済状況を反映する指標であるため、連動した銘柄も長期的に安定したパフォーマンスを示してきた実績があります。

ただし、構成される株式の内容がアメリカ一国に集中するため、アメリカ経済の影響を直に受けます。地域分散という観点でのリスクヘッジはできないため、アメリカ国全体が景気下降に陥ったり、ドルの価値が暴落した場合には、損失を被りやすいです。

2. 基準価額の推移比較

次に、「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)」と「S&P500(eMAXIS Slim 米国株式)」について、購入する際の「基準価額」の推移を比較していきます。

【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】

基準価額の推移(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))2/3

基準価額の推移(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))

出所:三菱UFJアセットマネジメント「ファンド情報(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))」を元に筆者作成

  • 7年間の騰落率:+234.26%(2018年10月31日〜2025年12月26日)
  • 直近1年間の騰落率:+20.48%(2024年12月26日〜2025年12月26日)

【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)】

基準価額の推移(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))3/3

基準価額の推移(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))

出所:三菱UFJアセットマネジメント「ファンド情報(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))」を元に筆者作成

  • 7年間の騰落率:+291.94%(2018年10月31日〜2025年12月26日)
  • 直近1年間の騰落率:+15.28%(2024年12月26日〜2025年12月26日)

騰落率の推移を見ると、二つの銘柄はほとんど同じ動きをしており、7年間の最終的な結果としては、S&P500の方が50%ほど大きい成長を見せています。

これは、例えば2018年10月に同額100万円の投資をしていたとすると、運用結果としてオルカンでは約334万円、S&P500では約391万円の資産になったということを表しています。

一方で、直近1年間の騰落率を見てみると、オルカンの方がS&P500よりも5%大きく伸びています。2025年の成長率だけで比較をすると、オルカンへの投資の方が利益が大きかったということを表しています。

3. 2つの銘柄の特徴

今回ご紹介した銘柄は、「初心者でも挑戦しやすい」として紹介されることの多い代表的な銘柄です。その理由として、「値動きがよみやすい」「信託報酬などの手数料が安い」「円安リスクに備えられる」「NISAでの取り扱いがある」といったポイントが挙げられます。

そのため、どちらを選んだとしても比較的安定的に資産を育てることができるという面においては相違はありません。

しかし、比較結果からもわかるように、2つの銘柄には明確な違いもあります。

4. 銘柄比較と投資先の考え方

ここからは、銘柄を選択する際にポイントとなる「違い」について説明します。

4.1 投資対象地域の違い

【オルカン】

オルカンは全世界を投資対象としており、アメリカ株式が約6割を占めるものの、残りは世界各国に分散投資されています。この地域的な分散により、特定の国の経済が低迷した場合でも、全体への影響を緩和することが可能となっています。一国に集中した投資は、その国の景気悪化時に大きく暴落するリスクがありますが、オルカンはこうした地域リスクを分散させることで、より安定的な運用を目指しています。

【S&P500】

S&P500は投資対象をアメリカ企業に特化した投資信託です。様々な業種に分散されているものの、地域的には単一国に集中しています。そのため、地域的な分散は限られて一定のリスクがあります。しかし、アメリカは世界経済を牽引する大国であり、短期的な下降はあるものの、長期的には右肩上がりの経済成長を記録しているため、長期的には安定した成長が期待できる投資対象といえます。

4.2 パフォーマンスの違い

過去の騰落率を見ると、長期的にはS&P500がオルカンを上回る傾向にあります。具体的には、過去7年間の成長率では、S&P500がオルカンより約50%高い結果となっています。これは世界経済を牽引するアメリカ企業の高い成長性を反映していると考えられます。アメリカの主要企業に集中投資することで、世界的な経済成長の恩恵を効率的に享受できる構造になっています。

しかし短期的な視点で見ると、2025年のパフォーマンスではオルカンがS&P500より5%高い騰落率となっています。

これは日本を含む先進国や新興国市場の好調な運用成績が影響していると考えられます。このことから、時期によってはアメリカ以外の国の企業が市場を牽引してパフォーマンスを上げていると言えます。

4.3 投資判断のポイント

積立投資において重要となるのは、短期的な成長率よりも、10年、20年といった長期的な成長です。両ファンドとも安定的な成長を示していますが、長期的な利益率では、今回の数値が表すように一般的にS&P500がより高い水準を維持する傾向にあります。

そのため、地域分散による安定性を重視するならオルカン、アメリカ経済の長期的な成長力に期待をするのであればS&P500が適していると言えます。

5. おわりに

今回は、投資初心者の方でも挑戦しやすい「S&P500」と「オルカン」をご紹介しました。

どちらの銘柄も、比較的安定した成長を続けています。オルカンも投資先の多くがアメリカ企業であるため、大きな視点で見れば、両者の成長には似た傾向が見られます。

しかし、細かく見れば「長期的な成長率ではS&P500に分がある」、「世界分散による安定性ではオルカンが勝る」といったように、それぞれに強みがあります。

大切なのは、ご自身のリスク許容度や投資の目標、続けられる期間などを考え、比較検討することです。ぜひ、あなたにとって最適な一本を見つけてください。

今回の記事が、投資を検討する皆さまの参考になれば幸いです。

参考資料

斎藤 彩菜