2024年から新NISAがスタートし、将来に向けて積立投資を始める人が増えています。こうしたなか、新NISAで積立投資を始める人の多くが迷うのが、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきかという点です。
どちらも人気の高い投資先ですが、値動きの特徴やリスクの取り方は異なります。そのため、自分の資産形成の目的やリスク許容度によって「どちらが合うか」が変わってきます。
本記事では、両ファンドの特徴や過去の運用実績を具体的なデータで比較し、長期投資で“負けにくくする”ためのポイントを解説します。
記事を読み終える頃には、「自分はどちらを選ぶべきか」が自然と見えてくるはずです。資産形成をよりスムーズに進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 「オルカン」と「S&P500」は何が違う?まずは基本を整理
NISAの積立投資で選択肢としてよく挙がるのが、「オルカン」と「S&P500」です。どちらも人気の高い投資先ですが、投資対象や値動きの特徴には大きな違いがあります。
「名前は知っているけれど、どちらを選べば良いのか分からない」という方も多いでしょう。
まずは、それぞれがどの市場を対象としているのか、基本的な特徴から整理していきます。
1.1 オルカン(全世界株式)の特徴
「オルカン(オール・カントリーの略)」とは、世界中の株式に分散投資できるファンドを指します。
日本・米国・欧州に加え、新興国も含めた数千銘柄に投資しているため、1本で世界全体に分散投資できるのが最大の特徴です。
もっとも大きなメリットは、分散効果により値動きが安定しやすいことです。ある地域の景気が落ち込んでも、別の地域が支える構造になっており、長期投資との相性が良い点が評価されています。
さらに、世界経済の変化に合わせて構成比率が自動的に調整される仕組みのため、「どの国が伸びるのか」を個人が予測する必要がありません。
安定性を重視しながら、世界経済全体の成長をコツコツ取り込みたい人に向いたファンドといえるでしょう。
1.2 S&P500の特徴
S&P500は、米国を代表する大企業約500社で構成される株価指数です。
アップル、マイクロソフト、エヌビディアなど、世界を牽引する企業が多く含まれており、米国経済の成長をダイレクトに取り込める点が魅力です。
長期の運用実績を見ると、S&P500は世界の株価指数の中でもトップクラスのリターンを上げてきました。
特にIT・ハイテク分野の成長が押し上げ要因となり、「資産を大きく増やしたい」と考える投資家から強い支持を得ています。
一方で、投資対象が米国に集中しているため、米国景気の影響を大きく受けるという側面もあります。株価が好調なときには大きく伸びますが、調整局面では値動きの振れ幅が大きくなりやすい点は注意が必要です。
成長性の高さとリスクの大きさをどうバランスよく受け入れるかが、S&P500を選ぶ際の判断ポイントといえるでしょう。
2. 「オルカン」と「S&P500」過去の運用成果を比較
「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとする投資信託は数多くありますが、本稿では特に人気の高い三菱UFJアセットマネジメントの以下2本を取り上げ、実績を比較します。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
2.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、米国を中心に欧州、日本、新興国まで世界中の株式市場に分散して投資するファンドです。
米国株が強い局面ではS&P500よりやや控えめなリターンとなるものの、地域分散の効果で値動きは比較的落ち着く傾向があります。
三菱UFJアセットマネジメントが公表している月次レポート(2025年11月28日現在)を見ると、以下のような騰落率になっています。
- 過去1ヵ月:1.2%
- 過去3ヵ月:11.9%
- 過去6ヵ月:24.5%
- 過去1年:23.0%
- 過去3年:92.2%
- 設定来(2018年10月31日~):227.1%
2.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績
これに対して「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に集中投資するファンドです。
米国はIT・ハイテク産業の存在感が大きく、長期的に企業収益が伸びたことから、非常に高いリターンを実現してきました。
同じく月次レポート(2025年11月28日現在)を見ると、以下のような騰落率になっています。
- 過去1ヵ月:1.6%
- 過去3ヵ月:12.0%
- 過去6ヵ月:26.1%
- 過去1年:19.2%
- 過去3年:101.2%
- 設定来(2018年7月3日~):289.8%
2018年に設定されてからほぼ右肩上がりに上昇しており、騰落率は289.8%にまで達しています。
2.3 2つのファンドの違いと選び方の考え方
過去の成績を見ると、リターンの大きさではS&P500が優勢です。ただしその分、米国市場に依存する形になるため、米国の景気後退や金利変動の影響を大きく受けるリスクがあります。
一方のオルカンは、米国偏重とはいえ広範な地域に分散していることで、値動きが比較的安定しやすいというメリットがあります。
結論としては、安定性を重視したい人は「オルカン」、成長性・リターンの高さを重視したい人は「S&P500」という選び方が一般的です。
もちろん、どちらか一方に決める必要はなく、リスク許容度に応じて両方を組み合わせる方法もあります。投資目的や投資期間を踏まえながら、自分に合った配分を考えていくことが大切です。
3. “負けない資産運用のコツ”3選
積立投資で成果を出すうえで大切なのは、「当てにいく」ことよりも「大きく崩れない」運用を続けることです。
相場の先行きを正確に読むのは、プロでも簡単ではありません。だからこそ新NISAの積立投資では、相場環境に左右されにくいルールを作り、長く続けることが結果につながりやすくなります。
ここでは、オルカンやS&P500のようなインデックスファンドを積み立てる際に意識したい“負けにくくする”コツを3つ紹介します。
3.1 積立を途中でやめない
積立投資の最大の強みは、時間を味方につけられる点です。
相場が下落した局面では評価額が減り、不安を感じやすくなりますが、こうした局面こそ安い価格で口数を増やせる期間でもあります。
短期的な値動きに振り回されず、あらかじめ決めた積立を継続することが、結果的に負けにくい運用につながります。
3.2 高いリターンを狙うより「続けやすさ」を優先する
高いリターンを狙える商品は魅力的ですが、価格変動も大きくなりがちです。値動きが激しいと、精神的な負担が増え、積立をやめてしまう原因になりかねません。
NISAの積立投資では、「自分が長く持ち続けられるか」という視点が重要です。
もちろん商品選びは重要ですが、リスク許容度が低い場合は値動きが緩やかな商品を選び、「続けやすさ」を優先することも大切です。
3.3 新NISAの非課税メリットを最大限に活かす
通常、投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で得た運用益は非課税です。この違いは、運用期間が長くなるほど大きくなります。
積立投資で複利効果を狙う場合、税金による目減りがないことは大きな利点です。短期売買を繰り返すよりも、長期で積み立て、非課税の恩恵を活かし続けることが、負けにくい資産運用の基本といえるでしょう。
4. 自分に合った投資先を選ぼう
オルカンとS&P500は、どちらも長期投資との相性が良い優れたファンドですが、特徴は大きく異なります。
世界全体に分散した安定感を求めるならオルカン、米国の成長力を積極的に取り込みたいならS&P500が向いています。
過去のリターンではS&P500が上回ったものの、今後も同じ結果になるとは限りません。市場環境は常に変化するため、自分のリスク許容度や投資期間をふまえたうえで判断することが大切です。
また、積立投資では「続ける仕組み」をつくり、新NISAの非課税メリットを活かしながら淡々と積み上げていく姿勢が成果につながりやすくなります。
どのファンドを選ぶにしても、無理のない範囲でコツコツ取り組んでいきましょう。
参考資料
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 月次レポート(2025年11月28日現在)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート(2025年11月28日現在)」
- 金融庁「資産形成の基本」
- 金融庁「NISAを知る」
加藤 聖人