新しい年を迎えるにあたり、お正月は家族と過ごす楽しい時間ですが、お年玉や帰省費などで出費が増える時期でもあります。そんな年末年始は、来年の家計やこれからのマネープランを見直す絶好のタイミングです。

特に、現役を退き年金生活が中心となる70歳代にとって、物価高が続く中での家計管理は切実な課題でしょう。「老後2000万円問題」が話題になる中、同世代の貯蓄額が気になる方も多いはずです。ただ、ニュースで目にする「平均貯蓄額」は、一部の富裕層が数字を押し上げていて、実感とはかけ離れていることもあります。実態を知るには「中央値」を見ることがポイントです。

本記事では、総務省や厚生労働省の最新データをもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額の平均と中央値、さらに気になる年金受給額の目安についてわかりやすく解説します。

1. 老後設計の鍵となる「平均寿命」と「健康寿命」のギャップとは

2025年6月13日に国会で可決・成立した年金制度改正法は、多くの人々の老後設計に影響を与える可能性があります。

この改正では、現役世代への保障拡充に加え、年金を受給しながら働く高齢者への配慮や私的年金制度の強化など、多岐にわたる見直しが行われました。

特に、在職老齢年金の支給停止基準が大幅に緩和されたことは、就労意欲のあるシニア世代にとって重要な変更点と言えるでしょう。

実際に、総務省「2024年(令和6年)労働力調査」によると、65歳以上の就業者数は前年から16万人増えて930万人に達しており、高齢者の就労が拡大していることがうかがえます。

一方で、厚生労働省の統計に目を向けると、平均寿命(※1)と健康上の問題なく日常生活を送れる期間を示す健康寿命(※2)には、男性で約8年、女性では約12年もの隔たりがあるのが現状です。

この期間は医療や介護のサポートを必要とする可能性が高まるため、老後の生活設計において「資金的な備え」の重要性が一層増す時期といえます。

このような背景を考慮すると、現役時代から計画的に貯蓄や資産形成に取り組むことが、70歳以降の安心した生活につながる鍵となります。

※1 平均寿命:2022年は男性81.05歳、女性87.09歳。2023年は男性81.09歳、女性87.14歳(厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」より)
※2 健康寿命:2022年は男性72.57歳、女性75.45歳(厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」より)