皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
私はテニス肘に、ここ2年ほど悩まされていたため、今年に入り約4ヵ月間完全休養していたのですが、5月からテニスを再開予定です。いい季節の中で、久しぶりのコートが楽しみです。
さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。
- 日経平均株価が22,000円を回復した背景としては、好調な中国の経済指標の影響が大きいと思われる。
- マイナス圏に沈んでいた独10年国債利回りも、足もとで急上昇し(価格は下落)、英国のEU離脱など不安定要因は強いものの、ユーロ圏の景気が底割れするというような極端な見方は、いったんは後退したと思われる。
- 個人消費の動向を示す米小売売上高は、昨年12月に大きく悪化した。その後の1月、2月データも、12月データが一時的な要因で悪化しているだけと断言できるほど好調な内容ではなかった。中国、欧州の景況感改善への期待がある中、4月18日に発表される米小売売上高(3月)に注目したい。
日経平均株価が、22,000円台を回復しました。
この上昇には、4月12日に公表された中国の新規人民元建て融資(3月)が1兆6900億元と、前月の8858億元から、急増したことが大きく影響していると思われます(このほかに、中国の貿易統計(3月)で判明した中国の輸出好調も好感されていると思われます)。
中国については、2019年2月28日公開の『大きく落ち込んでいる中国からの工作機械受注』や2019年4月4日公開の『反発している中国の製造業PMI~不安定な経済に変化の兆し?』でご説明したとおり、「レバレッジの縮小(債務の減少)」から「景気対策」に経済政策の軸足を移していました。
そして、今回の融資の急拡大は「一党独裁体制である中国においては、意思決定が迅速に行えるため、各種政策が効果を発揮するまでのラグが短い可能性」(4月4日公開の記事)が、数字となって現れたものであると思われます。最近の日経平均株価は、世界の株価指数の中でのグローバル景気敏感指数と評価されることが多いように思いますが、日経平均株価の22,000円回復は、景況感に関する市場の認識の改善が素直に反映された結果であると思われます。
そして、欧州においても、独10年国債利回りが急上昇しています(図表1)。独10年国債利回りはユーロ圏の景況感に対する市場の認識を敏感に反映しており、3月下旬から4月初旬頃にかけてユーロ圏の景気への懸念を背景にマイナス金利に突入していました。
しかし、中国の回復がドイツの景況感改善に繋がるという連想が働いたと思われ、足もとで利回りは急上昇(価格は低下)しており、英国のEU離脱など不安定要因は強いものの、ユーロ圏の景気が底割れするというような極端な見方は、いったんは後退したと思われます。
それでは、世界経済の中心である米国の状況はどうなっているのでしょう。
私は、雇用が好調な中、 2019年前半までに景気後退に陥るほど米国の個人消費が急減速することを想定していませんでした。しかし米国の小売売上高(昨年12月、前月比)は1.2%減と、2009年9月以来の大幅な減少となり、市場予想(0.2%増)を大幅に下回りました。この数字は、私自身の米個人消費に対する強気の見方を再考する必要があるほどのインパクトがあるデータでしたが、現時点でも私はこの数字が政府機関の一部閉鎖などの特殊要因による一時的なものであると考えています。
そして、12月以降の米小売売上高については、2019年1月は前月比0.2%増となったものの、2月は予想を下回る0.2%減であり、この数字を見るかぎり、残念なことに一時的な要因で悪化しているだけと断言することはできないと思われます。
そして、いよいよ3月データが4月18日に発表されます(市場予想は1%程度の増加)。 「減速する経済成長、再加速は不確実」とされたIMFの世界経済見通し(4月)に関わらず、仮に消費の好調を裏付ける米小売りデータが発表されれば、さらに景況感は改善すると思われます。
4月10日に公表された米連邦公開市場委員会の議事録(3月)では、米国の個人消費について、「the recent softness likely reflected temporary factors(筆者による仮訳:最近の弱さは一時的な要因)」、 「many participants expected consumer spending to proceed at a stronger pace in coming months(同:多くの参加者がこの後数か月に個人消費が加速することを予測している)」とされています。
中国、欧州の景況感改善への期待がある中、米国の小売売上高に注目したいと考えます。
(2019年4月16日 9:30頃執筆)
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柏原 延行