売値を上げられない(場合によっては下げざるを得ない)から、賃金を上げることができず、いつまでも労働力不足に悩み続けている、という企業も多いでしょう。
そうした企業が、最低賃金という「官製カルテル」によって賃金を上げざるを得なくなれば、労働力不足は解消するでしょうし、売値を引き上げることも可能になるでしょう。ライバル企業も同様の官製カルテルで人件費が高騰し、値上げせざるを得ないはずだからです。
これは、デフレからの脱却を確実なものにする、という意味で日本経済にとっても素晴らしいことですね。もちろん、日銀にとっても、ですが(笑)。
不況期に最低賃金を下げることが絶対必要
最低賃金を大胆に引き上げると、現状の問題は解決するでしょうが、次の不況の時に大量の失業者が発生してしまう可能性があります。したがって、絶対に必要なのが、次の不況期が来たら柔軟に最低賃金を引き下げる、ということです。
「失業率が上がったら最低賃金を下げる」というルールを作っても良いのですが、失業率は景気が後退し始めて数カ月後に上昇し始める場合も多いですし、最低賃金を引き下げてから雇用が増えるまでも時間がかかるでしょうから、「1年後の失業率が上がると予想される時には最低賃金を下げる」といったルールが望ましいですね。
1年後の失業率を予想するのは容易なことではありませんが、たとえば日銀の金融政策は少し先の物価や景気などを予想しながら行われているわけですから、それと同様に、最低賃金も柔軟に上下させれば良いのでしょうね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義