2026年が幕を開けました。振り返ると、昨年は物価高が家計に影響を及ぼす一年だった一方で、年末にかけてはガソリン価格の低下など、負担がやや和らぐ動きも見られました。こうした環境の変化の中で、とくに影響を受けやすいとされるのが住民税非課税世帯です。

これまで国や自治体は、物価高や景気変動への対応として、さまざまな現金給付を実施してきました。では、過去10年でどのような給付が行われてきたのでしょうか。また、2025年冬の経済対策には、どんな支援策が盛り込まれたのでしょうか。

この記事では、住民税非課税世帯への現金給付の流れを振り返りながら、今冬の経済対策のポイントをわかりやすく解説します。

1. 住民税非課税世帯、「いつ・どんな給付金があった?」過去10年を振り返る

まずは、2014年以降の約10年間で、住民税非課税世帯へ支給された給付金を振り返ってみましょう。

2014〜2016年:臨時福祉給付金

  • 1人あたり最大1万8000円
  • 消費税率8%への引き上げに伴う負担緩和

2016年:年金生活者等支援臨時福祉給付金

  • 1人あたり3万円
  • 賃金引上げの恩恵が及びにくい低年金受給者への支援・年金生活者支援給付金の前倒し的な位置づけ

2020年:特別定額給付金

  • 1人あたり10万円
  • 新型コロナウイルス感染症による全国民対象の緊急経済対策

2021年:住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金

  • 1世帯あたり10万円
  • コロナ禍長期化による困窮への対応

2022年:電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金

  • 1世帯あたり5万円
  • エネルギー・食料品価格等の高騰による負担増への対応

2023年〜2024年:低所得者支援の給付金

  • 1世帯あたり10万円(3万円+7万円追加給付)
  • 物価高から生活を守るための支援

2025年:低所得者支援の給付金

  • 1世帯あたり3万円
  • 物価高から生活を守るための支援

大きく分けると「消費税増税」「コロナ禍」「物価高」の3つに対応するために、支給されているといえます。

金額は1万8000円や3万円、5万円といった額が多いですが、コロナ禍のような未曾有の時期や、物価高が顕著になった2023年頃は、10万円ほどの給付金も支給されました。

一方で、コロナ禍では「全国民10万円」の翌年に「非課税世帯のみに10万円」が支給されたり、2023年頃からの物価高については「10万円→3万円」と給付回数が増えるたびに金額が減額されています。給付は一時的な措置ですが、回数を重ねるほど形骸化してしまうリスクがあるともいえるでしょう。

では、今冬の経済対策で、住民税非課税世帯への給付は行われるのでしょうか。次章で解説します。

2. 今冬の経済対策、物価高への対応「現金給付はある?」

昨年11月21日に政府が発表した経済対策で公表された内容は、以下のとおりです。

  • 子どもへの1人2万円給付
  • 電気・ガス代の補助
  • 自治体独自の支援(電子クーポンや水道料金の一定期間無償化など)

今回の経済対策には、住民税非課税世帯への給付はありません。2023年から毎年のように実施されてきた非課税世帯への給付ですが、今回でその流れは切れ、新たな支援フェーズに入ったといえそうです。

なお、上記はいずれも非課税世帯も対象となる給付・支援です。たとえば、住民税が非課税の子育て世帯には、世帯の子ども1人あたりに2万円が支給されます。また、電気やガス代の支援、自治体独自の支援についても、住民税非課税世帯も受けられる施策です。

では、非課税世帯への給付がなくなった理由はなんでしょうか。次章で解説します。

3. 住民税非課税世帯への給付、今回の経済対策で行われない背景とは

住民税非課税世帯への給付が今回の経済対策で行われなかった理由としては、さまざまなことが考えられます。そのひとつが、世論の潮流です。

物価高や増税の影響は、住民税非課税世帯だけでなく課税世帯にも及びます。しかし、給付金が課税世帯にまで及んだのは、直近10年だと2020年の特別定額給付金のみです。

とくに、現役世代は税金や社会保険料を負担しているにもかかわらず、恩恵のない施策が続いたことで不満を抱える人が増えました。今夏の参議院選挙においても「給付よりも減税」という世論のスタンスがあらためて明らかになりました。こうした影響から、今回の経済対策では非課税世帯ではなく、課税世帯も対象となる「子育て世帯」にスポットを当てた支援を決めたと考えられます。

また、給付金の支給には、自治体への支給概要の説明や準備に時間がかかるため、どうしても一定の時間がかかります。今回の経済対策で行う電気・ガス代の補助は、請求額から直接値引きされる形で支援をするため、給付金の支給よりも多少手間が省けます。手間がかからない分迅速に支援を届けられることから、給付金よりも光熱費補助のほうが合理的な施策だと政府が判断した可能性もあるでしょう。

次章では、給付金のもうひとつの課題である「資産額の基準」について解説します。

4. 住民税非課税世帯、資産3000万円超でも給付対象?「貯蓄のある世帯」への支給に疑問の声

住民税が非課税かどうかは、前年の所得によって決まります。あくまで1年間の収入額が基準となり、個人で保有する資産額は関与しません。そのため、資産を多く保有していても、その年の収入が少なければ住民税非課税になり、給付金を受け取れます。

給付金の本来の目的は「負担増の影響を受けやすい世帯へ直接的に支援すること」です。しかし、資産のある住民税非課税世帯に支援をしても、給付金は貯蓄にまわり、本来の目的を果たせないのです。

例として、60歳代と70歳代の二人以上世帯の金融資産保有額を見てみましょう。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月18日に発表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の2人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)で確認します。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

2人以上世帯・金融資産保有額

2人以上世帯・金融資産保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

《2人以上世帯・金融資産保有額》
■60歳代

  • 平均:2683万円
  • 中央値:1400万円
  • 資産3000万円以上:27.2%
  • 資産非保有:12.8%

■70歳代

  • 平均:2416万円
  • 中央値:1178万円
  • 資産3000万円以上:25.2%
  • 資産非保有:10.9%

金融資産のない世帯も一定数いますが、ほぼ同数3000万円以上の資産を保有する世帯も存在します。こうした世帯へ非課税世帯向けの給付金を支給することは、本来の目的に沿わないため、給付事業自体の見直しや給付以外の施策実行が求められているのです。

5. まとめにかえて

住民税非課税世帯への給付は、これまでも何度も行われてきました。しかし、現役世代や課税世帯の負担の大きさから、給付金のあり方が疑問視されてきています。

これまでの給付金のようなシステムに頼らず、どのような人を対象に支援するか、どういった形で支援するのかが、今後の経済支援では重要になるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ