本日はクリスマス。街にはイルミネーションが灯り、年末を意識する季節となりました。
「もし大きな病気になったら、医療費はどれくらいかかるの?」と不安を感じる方もいるかもしれません。そんなとき、家計を支えるのが高額療養費制度です。現在、政府ではこの制度の見直しに向けた議論が進められており、2025年12月には専門委員会から基本的な考え方が示されました。
今回は高額療養費制度の基本、見直しのポイントと「多数回該当」「外来特例」という重要なしくみについて解説します。
1. 【高額療養費制度】自己負担いくらまで?マイナ保険証「手続きなし」で制度利用OK!
高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担が高額になった際に、家計への過度な影響を防ぐための制度です。医療機関の窓口ではいったん自己負担分を支払いますが、後日、上限額を超えた分が払い戻されます。これを「償還払い」と呼びます。
一方、入院や同じ医療機関での外来診療では、窓口での支払いをあらかじめ自己負担限度額までに抑えられる「現物給付」の仕組みも用意されています。
この現物給付を利用する際に便利なのが、マイナ保険証です。従来は、窓口での支払いを限度額以内にするために、事前に「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示する必要がありました。
しかし、マイナ保険証を利用すれば、認定証を準備しなくても、所得区分に応じた自己負担限度額が自動的に適用されます。急な入院や通院でも、手続きの負担が軽くなる点は大きなメリットといえるでしょう。
1.1 「年収約370万円の人」自己負担の上限はいくら?計算例で確認
高額療養費制度では、自己負担の上限額が所得区分ごとに設定されています。そのため、同じ医療費がかかった場合でも、年収などによって実際の自己負担額は異なります。
そのため、同じ医療費がかかった場合でも、所得によって実際の自己負担額は異なります。
たとえば、70歳未満で年収約370万円〜約770万円の区分に該当する方(医療費の自己負担割合が3割)の場合、医療費総額が100万円かかったときの自己負担限度額は、次の計算式で求められます。
- 自己負担限度額
=8万100円+(医療費総額−26万7000円)×1%
※年収約370万~約770万円(3割負担層)の場合の例
この計算式に当てはめると、医療費総額が100万円の場合、自己負担額は約8万7430円となります。医療費が高くなるほど自己負担も増えますが、一定額以上は負担しなくてよい点が、この制度の大きな特徴です。
2. 【高額療養費制度】4回目から負担が軽減・定額「多数回該当」とは?
今回の制度見直しで注目されるしくみのひとつが、長期間にわたる治療が必要な方を支える「多数回該当」です。
2.1 4回目から軽減《多数回該当》「年収約370万円の人」どのくらい負担が減る?
多数回該当とは、同一世帯で、過去12か月のうちに高額療養費の対象となった月が3回以上ある場合、4回目以降の自己負担限度額が大きく引き下げられるしくみです。
この制度があることで、がん治療など、継続的に高額な医療費がかかるケースでも、家計への負担が過度に重くならないよう配慮されています。
たとえば、年収約370万円〜約770万円の区分では、通常の限度額は
- 「8万100円+(医療費−26万7000円)×1%」
となっていますが、多数回該当に該当すると、月額4万4400円の定額負担に軽減されます。
がん治療などで継続的に高額な医療費がかかる場合でも、家計への影響が過度に大きくならないよう配慮されている点が、この制度の重要な役割です。今回の見直し案では、この多数回該当については、現行水準を維持すべきだという考え方が示されています。
3. 【高額療養費制度】「70歳以上限定」外来特例の見直し、今後どうなる?
制度見直しで注目されるしくみのもうひとつが、70歳以上の方を対象とした「外来特例」の見直しです。
3.1 現役世代との公平性が課題に!外来特例とは?
70歳以上の方は、現役世代と比べて通院の頻度が高い傾向があることから、外来診療にかかる医療費について、個人ごとに月額の上限が設けられています。これが外来特例です。
入院とは別に外来の自己負担を抑えることで、定期的な通院が必要な場合でも、医療費が家計の大きな負担にならないよう工夫されています。
今回の見直しでは、世代間の公平性や制度の持続性といった観点から、この外来特例のあり方についても検討が進められています。今後の議論の動向にも注目が集まりそうです。
4. 【高額療養費制度】家計を守るうえで重要なセーフティネット
高額療養費制度は、医療費が高額になった場合でも家計への影響を抑えるための重要なセーフティネットです。今回の見直しでは、「所得区分の細分化で公平性確保」するものとし、負担のあり方を見直す方向が示されています。
一方で、長期にわたる治療を支える「多数回該当」は、現行水準を維持する考え方が示されました。高額療養費制度のしくみや変更点を知っておくことで、万が一のときも落ち着いて対応しやすくなります。この機会に、ご自身や家族の医療費負担について、制度を活用した備えを考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」
- 厚生労働省「「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」とりまとめ」
- 厚生労働省「第8回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」資料・高額療養費制度について」
- 厚生労働省「第8回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」資料・外来特例について(追加資料)」
- 厚生労働省「第8回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」資料・高額療養費制度について(参考資料)」
村岸 理美