日本の公的年金は、自ら手続きをしないと受け取ることができない「申請主義」を採用しています。「マイナンバーに公金受取口座を登録しているから大丈夫」と思われがちですが、それだけでは不十分です。期限までに「年金請求書」を提出しなければ、支給は開始されません。
この記事では、老齢年金の受給手続きで見落としがちな重要ポイントと、スムーズに受給を開始するための具体的な流れを徹底解説します。
1. 日本の公的年金の基本「2階建て構造」とは?
はじめに、日本の公的年金制度の基本である「2階建て構造」について確認しましょう。
1階部分:国民年金
- 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方が加入対象です。
2階部分:厚生年金
- 会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。
どちらの年金も、支給が開始されるのは原則として65歳からです。保険料納付済期間が10年以上などの受給資格を満たしている場合、現役時代の働き方に応じて以下の組み合わせで年金を受け取ります。
- 国民年金のみの加入者:「老齢基礎年金」
- 厚生年金の加入者:「老齢基礎年金+老齢厚生年金」
2. 60歳から65歳までの年金空白期間と、例外的に受給できる2つのパターン
2.1 原則として年金が支給されない「待機期間」
年金保険料の納付は原則として60歳で完了しますが、年金の支給が開始されるのは65歳からです。この年金を受け取れない期間は、一般的に「待機期間」と呼ばれています。
2.2 例外パターン1:特別支給の老齢厚生年金
かつて厚生年金の支給開始年齢は60歳でしたが、制度改正により段階的に引き上げられ、現在は国民年金と同様に原則65歳からとなっています。
その経過措置として、特定の生年月日以前に生まれた方は、65歳になるまで「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることが可能です。
- 男性:1961年(昭和36年)4月1日以前生まれ
- 女性:1966年(昭和41年)4月1日以前生まれ
この制度を利用するには、上記の生年月日に加え、「老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上ある」「厚生年金保険などに1年以上加入していた」「生年月日に応じた受給開始年齢に達している」といった要件をすべて満たす必要があります。
なお、受給開始年齢は性別や生年月日によって異なります。
2.3 例外パターン2:繰上げ受給制度
65歳になるのを待たずに年金を受け取りたい場合、希望すれば支給開始を早める「繰上げ受給」を選択できます。
ただし、1カ月早めるごとに年金額が0.4%減額(最大24%)され、その減額率は生涯にわたって適用される点に注意が必要です。
※1962年(昭和37年)4月1日以前に生まれた方の減額率は0.5%(最大30%)です。

