2. 「年収の壁」税金・社会保険に関わる壁が立ちはだかる
「年収の壁」には、税金、社会保険、そして企業独自の「配偶者手当」に関わるものなど、複数の種類が存在します。
今回の改正案で引き上げられる178万円は、主に所得税に関わる壁を指します。
今回は、多くのパート労働者に影響し、政府の引き上げ合意の対象となった「税金」と「社会保険」の壁を中心に見ていきます。
※企業が独自に支給する「配偶者手当」の年収制限については、企業各社の規定をご確認ください。
2.1 パート労働者に影響する主な「年収の壁」とは
106万円(社会保険に関わる壁)
従業員51人以上の企業で、月額8.8万円以上の給与がある場合に社会保険が適用されます。一時的に手取りは減りますが、将来の年金が増えるメリットもあります。
130万円(社会保険に関わる壁)
配偶者の扶養をはずれ、自身で国民年金・国民健康保険に加入義務が生じます。社会保険料の負担が生じ、手取り収入が減少します。
160万円→178万円(税金に関わる壁)
本人に所得税が賦課され始めるライン(基礎控除+給与所得控除などの合計)今回の合意で178万円に引き上げ。税金面での逆転現象(働き損)は起きにくい設計となっているようです。
2.2 今後の注目:106万円の壁が「撤廃」へ
現在、社会保険への加入基準となっている「106万円の壁(月額8.8万円以上の賃金要件)」ですが、政府はこれを最低賃金の引上げ状況をみて3年以内に廃止する方向を固めています。
撤廃後は、金額に関わらず「週20時間以上働くこと」が主な加入条件となり、さらに働く企業の規模(51人以上など)という要件も段階的に廃止されていく予定です。
これにより、今後は「いくら稼ぐか」だけでなく「週に何時間働くか」が、手取り額や将来の年金受給額に大きく影響してくることになります。ご自身のライフスタイルに合わせた働き方を、より柔軟に選べる時代が近づいています。

