この記事の読みどころ
2015年も残すところ1か月を切りました。毎年恒例で1月3日の日本経済新聞に掲載される「経営者が選ぶ有望銘柄」の騰落率が、12月30日大納会で決まります。
決算プレビューというものがあります。決算発表直前にアナリストが数字を予想、発表するものです。今回は、経営者が選ぶ有望銘柄の騰落率のプレビューを試みてみました。
その結果、経営者が選ぶ有望銘柄トップ3がいずれも日経平均の上昇率を下回っています。
新春恒例の日経「経営者が選ぶ有望銘柄」の今年の銘柄群
毎年1月3日、日本経済新聞誌には、その年の経済や日経平均株価の見通し、そして経営者が選ぶ有望銘柄(1人当たり5銘柄)が掲載されます。
電気、自動車、商社、金融といった分野の代表的な経営者にアンケートを出す形で結果を公表しています。新春ということもあるのか、仕事場で話題になることが多いようです。
2015年1月3日に掲載された有望銘柄数は17企業。名前を挙げられた数の多い順に、1位:トヨタ自動車、2位:信越化学工業、3位:日立製作所と続きます。
ちなみに、2015年と2014年の銘柄の顔ぶれを比べてみると、上位10銘柄では5銘柄が同じで残る5銘柄が新規といった具合です。
毎年顔を出す企業も多く、常連メンバーであるトヨタ自動車、信越化学、日立製作所は、2014年、2015年ともトップ3にノミネートされています。
経営者の代わりに実際にこのアンケートに答えたスタッフの方たちにとって、奇抜な銘柄選別はご法度なのでしょう。このアンケートの避けられない欠陥だと思われます。
2015年の有望銘柄のプレビューは、上位ランクほど厳しいパフォーマンス
図表1は2014年12月末(大納会)と、2015年11月30日の終値ベースの騰落率を示しています。本来は今年12月の大納会(12月30日・水曜日)の終値と比較すべきですが、敢えて残り1か月を切ったタイミングでの検証をプレビューとします。
この間の日経平均株価は+13.2%の上昇でした。大和ハウス(1925)、富士フィルムホールディングス(4901)、東日本旅客鉄道(9020)、東レ(3402)が日経平均株価の上昇率を上回っています。
一方、トヨタ自動車は+1.3%、デンソー(6902)+3.9%の上昇に止まっており、日経平均株価を下回るパフォーマンスとなっています。
信越化学工業や日立製作所に至っては、2桁の下落率となる厳しいパフォーマンスです。また、東芝の▲41.2%はご存知の通りの背景です。
また、有望銘柄と同時に発表された経営者が予想する日経平均株価の高値は、概ね12月頃に21,000円前後のレンジに集中していますが、この通りになれば全ての有望株がそれなりの上昇を示したかもしれません。
まだ株価上昇の可能性はあるが、その確率は低いと推測
しかし、まだ1か月弱のチャンスがあります。何が起こるか分かりませんし、例えば、12月に実施が見込まれる米国の金利引き上げ幅が市場コンセンサスを上回って、為替が130円/ドルまで一気に円安が進み、輸出株が活況になる可能性がないとは言い切れません。
一方、原油、為替などのファンダメンタルが足元のレベル前後で推移するとしたら、残す1か月での株価水準はあまり変わらないかもしれません。
12月末を決算期とする機関投資家運用のファンドにとって、ワラにもすがる思いでしょう。何となく「経営者が選ぶ有望銘柄」の結果が見え始めたように思われます。
石原 耕一