3. 就職氷河期世代の「貯蓄格差」はなぜ生まれたのか
40歳代・50歳代単身世帯の貯蓄額をみると、平均値は800万~1000万円弱である一方、中央値は100万円台と大きな開きがあることがわかりました。
この差は、一部の高額貯蓄世帯が平均値を押し上げていることを示しており、「同じ就職氷河期世代」の中でも、資産状況に大きなばらつきがある実態を表しています。
その背景の一つが、非正規雇用期間の長期化です。 就職氷河期世代は、キャリアの初期に正規雇用の機会を得られなかった人が多く、昇給や賞与、退職金といった制度の恩恵を受けにくい働き方を長期間続けざるを得なかったケースが少なくありません。結果として、同じ年齢になっても生涯賃金や貯蓄の積み上がり方に差が生じました。
また、雇用形態の違いは社会保険にも影響します。 厚生年金に加入できた期間が短い、あるいは国民年金中心だった人ほど、現役時代に可処分所得が伸びにくく、老後を見据えた資産形成に回せる余力が限られてきました。こうした違いは一時的なものではなく、年を重ねるごとに「積み上げられた差」として拡大していきます。
貯蓄額の平均と中央値の乖離は、単なる数字の問題ではありません。就職氷河期世代の中に、安定した資産形成ができた層と、十分な貯蓄を持てないまま中高年期を迎えた層が併存していることを示す、重要なサインといえるでしょう。
4. 「手取り」から預貯金に振り分ける割合は?
同じ調査をもとに、手取り収入の中からどの程度を預貯金に充てているかを見ていきましょう。
この割合は、家計にどれだけの余力があるのかを知る一つの目安になります。
4.1 40歳代~50歳代単身世帯「手取り」から預貯金への振り分け割合の平均
平均値で見ると、40歳代・50歳代ともに、手取り収入の1割半ば〜後半を預貯金に回している計算になります。
一方で、同じ年代でも預貯金にまったく回せていない(0%)世帯が一定数存在している点には注意が必要です。割合は、40歳代で15.6%、50歳代では24.0%に上ります。
平均では「16〜17%程度」と見えても、実際には貯蓄ができている層と、余裕がなく全く回せない層に分かれていることがうかがえます。
特に50歳代では、約4人に1人が貯蓄に回せる余裕がない状況です。 40~50歳代は、住居費や教育費、老後資金準備が重なる時期でもあり、家計状況による差が表れやすい年代といえるでしょう。
著者
マネー編集部貯蓄班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、大手証券会社やメガバンク等の金融機関にて勤務経験のある編集者が中心となり、金融庁や総務省など官公庁の公開情報等をもとにお金の課題に寄り添う専門チームです。
主なメンバーは野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか、地方自治体職員出身の太田彩子、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、日本生命保険相互会社出身の村岸理美など。
編集者の多くは、金融機関にて個人リテール業務を経験。若年層からシニア層、富裕層に至るまで、幅広い顧客に対し、投資信託・保険を中心とした総合的なライフプランニングを実行してきた。なかには、リテール営業で社内トップの実績を持ち、行内で表彰された実力者も。人材育成や社内教育にも携わるなど、金融知識と実務経験の両面で信頼される編集者が在籍しています。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。(最新更新日:2025年6月23日)
監修者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/
【保有資格】
ニ種外務員資格(証券外務員二種)・相続診断士・認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。
【経歴】
二種外務員資格や相続診断士などの資格を保有し、「お金とくらし」にまつわる情報を専門的かつ丁寧に発信する金融メディア編集者・ライター。
早稲田大学第一文学部史学科卒。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。また、大手人材派遣会社における採用管理業務などの実務経験もある。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。
総務省「家計調査」・厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。
専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも記事執筆をおこなう。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年7月9日更新)