スマートベータ(あるいはスマートベータ指数)という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。
機関投資家は当然知っていると思いますが、個人投資家の場合は、投資経験が比較的長い方が耳にしたことがあるという程度ではないでしょうか。
今回はスマートベータの投資信託についてみていきましょう。
スマートベータとは何か?
スマートベータは、一般的には「賢い市場平均連動性」と訳されたりします。
これでは意味がよく分からないので、スマートの意味をさらにかみ砕くと、「特定の目標があり、それをうまく実現することを目的とした市場平均との連動性」となります。
ここでの目標とは、市場平均のパフォーマンスを上回るということです。資産が十分に分散されつつ、つまりリスクを抑えながら市場平均を上回る指数があるのであれば、それは投資家にとっては理想的ですね。
JPX日経インデックス400(JPX400)は代表的なスマートベータ指数
スマートベータ指数として知名度が上がってきているのが「JPX日経インデックス400(JPX400)」ではないでしょうか。
JPX400は、ROE(株主資本利益率)や営業利益、時価総額といった投資リターンおよび収益といった指標の水準や規模を基準に、より選別された「企業収益や財務の質」重視の指数と言えます。
JPX400のような企業の質を重視した切り口以外にも、上場企業の中から、ボラティリティ、つまりリスクが小さくなるような銘柄を定量モデルにより抽出して組み合わせ、定期的に銘柄を入れ替えるなどする低リスク重視のアプローチや企業規模・事業規模などの規模重視アプローチなどもあり、様々です。
スマートベータ指数はアクティブファンドなのか?
スマートベータのそもそもの考え方としては、TOPIXのような時価総額をベースにした指数に対してリスクは同等か抑えると同時に、既存市場平均リターン以上のパフォーマンスをあげることができればよいという考えがあります。
したがって、スマートベータを構成するためには、何らかの切り口をもって銘柄をスクリーニングする作業が発生します。このように、スマートベータそのものに恣意性が入ることを考えればアクティブファンドとも言えます。
ただし、一般のファンドマネージャーがいるアクティブファンドと比べれば、一度ルールを決めてしまえば、その後はルール通りに運用が行われるはずという安心感とともに、管理コストはオペレーション次第では安く済む可能性はあります。
そうしたこともあり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もJPX400のインデックスファンドへの投資を始めたと話題になりました。
スマートベータに死角はないのか
それでは、スマートベータは投資先としては非の打ちどころはないのでしょうか。
注意点としては、先ほども指摘したようにスマートベータは設計側の思想や嗜好といった切り口が起点となるため、相場のトレンドはそうした切り口に合致していればパフォーマンスが良好であることとなりますが、それと合わなければパフォーマンスも期待外れになることにもあるでしょう。
つまり、相場の嗜好が変わることを前提にすれば、株価のボラティリティが増すというようなことも考えられます。
スマートベータに求められる、いかにスマートであるかという切り口に関しては、相場つき(相場の状況)に左右されないような普遍性を求められることにもなり、なかなか難しい側面もあります。
スマートベータが普及すると二極化が加速する
スマートベータが普及するとどのようなことが起きるのでしょうか。
一言でいえば、スポットライトの当たる銘柄とそうでない銘柄の二極化がさらに広がることになります。
JPX400の基準であるROEが高く、事業規模や時価総額の大きな銘柄がますます選好されることとなり、結果としてバリュエーションも高めに評価されることになるでしょう。
一方で、そうした基準を満たさない銘柄は注目を浴びることなく、バリュエーションも経営者が思うほどに株式市場から評価されないこともあるでしょう。
スマートベータは一種のキュレーション。万能ではないが有用
スマートベータは、ごった煮になった株式市場に対して、ある一定の選別、つまりキュレーションを行った結果に見えるのですが、いかがでしょうか。
ただし、そのキュレーションも一定の切り口をもとに行われるので、必ずしも普遍性はなく、相場つき次第ではパフォーマンスでも報われないこともあるでしょう。
結局、突き詰めて超長期で見ると、時価総額ベースで構成されているTOPIXが、企業の上場廃止なども自動的に反映され、新陳代謝も機能している一番スマートだったなんて言うオチもあり得ます。
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LIMO編集部