6. 年金受給者の確定申告は必要?不要?
公的年金は「雑所得」に分類されますが、一定の条件を満たす場合には「確定申告不要制度」が適用され、確定申告をおこなう必要がなくなります。
6.1 確定申告が不要になる2つの条件
以下の両方に該当する場合、計算の結果、納税額がある場合でも所得税等の確定申告は不要です。
- 公的年金等(※1)の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下である
※1 国民年金や厚生年金、共済組合から支給を受ける老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金)、恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金など
※2 生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金など
ただし、所得税の還付を受けたい場合(※3)は確定申告が必要となります。
また、所得税の確定申告が不要な場合でも、生命保険料控除や地震保険料控除など、源泉徴収票に記載されていない控除を適用したいケースや、公的年金などに係る雑所得以外の所得があり住民税の申告が必要となるケースがあります(※4)。
不明な点はお住まいの市区町村に問い合わせましょう。
※3 公的年金から源泉徴収された所得税を、医療費控除や雑損控除などにより取り戻したい場合
※4 所得税の確定申告をすれば、その情報が市区町村に送られるため、改めて住民税の申告をする必要はありません
6.2 スマホで完結!便利になる確定申告の方法
令和7年(2025年)分の確定申告は、スマートフォンとマイナンバーカードの連携が進み、さらに簡単になります。
スマートフォンのマイナンバーカードを利用すれば、マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても、申告書の作成・e-Tax送信が可能です。
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で案内に沿って入力すると完成。自動計算機能によって計算ミスも防げます。
また、マイナポータル連携の機能を使うと、保険料控除証明書や源泉徴収票などの情報を自動取得し、確定申告書へ反映できます。書類を集めて入力する手間が省け、確定申告にかかる時間が大幅に短縮できるでしょう。
注意点:マイナンバーカードと電子証明書の有効期限
便利なサービスを継続して利用するために、マイナンバーカードと電子証明書の有効期限には注意が必要です。期限切れになるとe-Taxでの手続きができなくなります。
確定申告の時期は、市区町村の更新窓口が特に混み合うことが予想されます。時間に余裕をもって早めに更新手続きをおこないましょう。
7. まとめ:年金生活者支援給付金をご存じですか?
2019年10月、年金生活者の暮らしを下支えする目的で「年金生活者支援給付金制度」がスタートしました。
所得が一定額に満たない年金受給者を対象に、年金支給日に給付金を支給します。なお、給付は2カ月に1度のペースで、支給要件を満たす限り継続して行われます。
7.1 支給要件
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
7.2 給付額の計算方法&目安の給付額
2025年度の老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5450円。この基準額をもとに計算され、以下の①と②の合計額となります。
①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5,450円 × 保険料納付済期間※4 / 被保険者月数480月
②保険料免除期間に基づく額(月額) = 11,551円※5 × 保険料免除期間※4 / 被保険者月数480月
参考として保険料納付済期間や全額免除期間ごとに、月額の給付額の目安を確認してみましょう。
- 納付済期間240月・全額免除期間0月:給付額(月額)2725円
- 納付済期間240月・全額免除期間60月:給付額(月額)4169円
- 納付済期間240月・全額免除期間240月:給付額(月額)8501円
- 納付済期間360月・全額免除期間120月:給付額(月額)6976円
- 納付済期間280月・全額免除期間200月:給付額(月額)7992円
- 納付済期間200月・全額免除期間280月:給付額(月額)9008円
上記はあくまで給付額の目安ですが、納付済期間が同じでも、残りの期間が未納か免除申請かによって給付額に大きな差が生じることがわかります。
年金生活者にとって、貴重な収入源となるこの給付金。支給要件を満たしていても申請しなければ受け取ることはできません。
すでに老齢基礎年金を受給中の方で、新たに年金生活者支援給付金の対象となる方には、毎年9月頃に日本年金機構から請求書が送付されます。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
- 国税庁「令和7年分の確定申告はスマホとマイナポータル連携でもっと便利に!」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
マネー編集部年金班

