2026年の年明け、家族が集まる機会に「もしもの時」の備えについて話し合われた方も多いのではないでしょうか。

大切な家族が亡くなった際、避けて通れないのが役所への「死亡届」の提出です。

この手続きに関して、「役所に死亡届を出すと、銀行口座が自動的に凍結されてお金が引き出せなくなる」と思っている方もいるかもしれません。

しかし、実は役所と銀行がリアルタイムで情報を共有しているわけではありません。

元銀行員の経験から申し上げますと、銀行が口座を凍結するのは、あくまで「銀行が独自に名義人の死亡を把握した時」です。

つまり、役所の手続きとは別のタイミングで凍結が起こります。

そのため、凍結前に葬儀費用などをATMで引き出すケースも見受けられますが、ここには元銀行員だからこそお伝えしたい、大きなリスクが隠されています。

1月は、1年の中でも体調を崩しやすい方が増える傾向にある時期でもあり、正しい知識を持っておくことは家族を守ることにもつながります。

本記事では、死亡届の提出と口座凍結の関係、そして「凍結前なら引き出してもいいのか」という疑問に対し、わかりやすく解説します。

1. 【意外と知らない】役所に死亡届を出すと「銀行口座が凍結される」って本当?

役所へ死亡届を提出したあと、亡くなった方の銀行口座がどう扱われるのか、気になる方も多いでしょう。

一般に「死亡届を出すと口座がすぐ凍結される」と思われがちですが、死亡届の提出だけで口座が凍結されるわけではありません。

実際に口座が凍結されるのは、親族などが銀行に対して名義人の死亡を連絡したタイミングです。

つまり、銀行が「口座名義人が亡くなった事実を把握した時点」で、取引が停止されます。

例外として、銀行の担当者が新聞の訃報欄や周囲からの情報で死亡を知り、確認のうえ凍結するケースもありますが、基本的には親族からの申し出がきっかけとなります。

ここで注意したいのは、「名義人の死亡情報が銀行同士で自動的に共有されるわけではない」点です。

複数の金融機関に口座を持っていた場合は、それぞれの銀行ごとに死亡の届出を行う必要があります。

なお、同一の銀行内で複数支店の口座を利用している場合は、一度の届出でその銀行にあるすべての口座が凍結されます。

銀行へ連絡をしない限り口座は凍結されないため、手続き前に現金を引き出すこと自体は技術的には可能です。

しかし、この段階で第三者が資金を引き出す行為には、後々トラブルにつながるリスクがある点には注意が必要です。

2. 【リスクあり】口座凍結の前に「名義人以外」が預金を引き出すことは可能?

結論からお伝えすると、口座名義人が亡くなったあと、銀行に死亡の連絡が入る前であれば、ATMなどを使って名義人以外の人が預金を引き出すことは可能です。

ただし、このような対応には、後々思わぬリスクやトラブルにつながるおそれがあります。

そのため、慎重に対応する必要があるでしょう。

2.1 リスク1:家族間のトラブルが起こる可能性がある

相続の手続きを行わないまま、口座が凍結される前に預金を引き出す行為は、ほかの相続人から「不正な行為」と受け取られる可能性があります。

その結果、相続人同士の信頼関係が損なわれ、感情的な対立が生じ、深刻な争いへ発展するケースも考えられます。

また、引き出された預金は本来、相続財産として遺産分割協議の対象とすべきものです。

無断で引き出された資金の扱いをめぐって、相続人の間で認識の違いが生じやすく、トラブルの原因となりかねません。

こうした点からも、口座が凍結される前に預金を引き出す行為は、基本的に避けたほうがよいといえるでしょう。

とくに、引き出した資金の使途が明確でない場合には、問題がさらに大きくなるおそれがあるため、十分な注意が必要です。

2.2 リスク2:相続放棄ができなくなる可能性がある

故人の財産は、プラスの資産だけでなくマイナスの負債も含めて相続するのが原則ですが、相続放棄を選択することもできます。

その場合は、家庭裁判所への申述が必要です。

一方で、銀行口座が凍結される前に名義人以外の人が預金を引き出す行為は、「単純承認」と判断されるおそれがあります。

単純承認とは、相続人が遺産を受け取る意思を示したとみなされる行為で、これが成立すると、その後に相続放棄や限定承認を選ぶことができなくなります。

つまり、預金を引き出した時点で「故人の資産も負債も含めて引き継ぐ意思がある」と見なされる可能性があるのです。

こうしたリスクを避けるためにも、相続手続きが完了するまでは、預金の引き出しを控えるのが望ましいでしょう。

もっとも、葬儀費用や各種手続きなど、どうしても資金が必要になる場面があるのも事実です。

そこで次に、やむを得ず故人の預金を使う必要がある場合に、どのように対応すべきか、具体的な方法を確認していきます。

3. やむを得ず「故人の預金口座から引き出したい場合」の対応方法は?

やむを得ない事情から「故人の口座からお金を引き出したい」と考える場面もあるかもしれません。

そのような場合には、「預貯金の払い戻し制度」の活用を検討することをおすすめします。

3.1 【知っておきたい】「預貯金の払い戻し制度」について

「預貯金の払い戻し制度」とは、遺産分割が終了していない段階でも、故人の預貯金を払い戻すことができる仕組みで、2019年7月1日から導入されています。

「預貯金の払い戻し制度」とは?1/2

払い戻し制度図

出所:法務省「相続に関するルールが大きく変わります」

この制度を利用すれば、相続人は遺産分割協議が完了する前であっても、故人名義の預貯金の一部を引き出すことが可能となります。

【払い戻しができる金額】

  • 相続開始時の預金額 × 1/3 × 払戻しを行う相続人の法定相続分

ただし、この制度を使って払い戻しを受けられる金額には上限があり、1つの金融機関につき150万円までと定められています。

また、「預貯金の払い戻し制度」の具体的な手続きは金融機関ごとに異なります。

詳しい内容を確認したい場合は、利用を検討している金融機関へ直接問い合わせるとよいでしょう。

次は男性と女性の「平均寿命」は、それぞれ何年なのか見ていきます。

4. 【平均寿命】男性・女性それぞれ何年?

私たちは日頃「平均寿命」という言葉を何気なく使っていますが、これは0歳の平均余命を指します。

厚生労働省が2025年7月25日に公表した「令和6年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年でした。

前年と比較すると、男性は横ばい(▲0.00年)、女性はわずかに下回りました(▲0.01年)。また、平均寿命の男女差は6.03年で、前年より▲0.01年とわずかながら縮まっています。

過去の推移も見てみましょう。

【平均寿命】男性・女性それぞれ何年?2/2

【平均寿命】男性・女性それぞれ何年?

出所:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命

  • 昭和22年:男50.06 女53.96 男女差3.90
  • 昭和25-27年: 男59.57 女62.97 男女差3.40
  • 昭和30年: 男63.60 女67.75 男女差4.15
  • 昭和35年: 男65.32 女70.19 男女差4.87
  • 昭和40年: 男67.74 女72.92 男女差5.18
  • 昭和45年: 男69.31 女74.66 男女差5.35
  • 昭和50年: 男71.73 女76.89 男女差5.16
  • 昭和55年: 男73.35 女78.76 男女差5.41
  • 昭和60年: 男74.78 女80.48 男女差5.70
  • 平成2年: 男75.92 女81.90 男女差5.98
  • 平成7年: 男76.38 女82.85 男女差6.47
  • 平成12年 :男77.72 女84.60 男女差6.88
  • 平成17年:男78.56 女85.52 男女差6.96
  • 平成22年:男79.55 女86.30 男女差6.75
  • 平成27年 男80.75 女86.99 男女差6.24
  • 令和2年 男81.56 女87.71 男女差6.15
  • 令和3年 男81.47 女87.57 男女差6.10
  • 令和4年 男81.05 女87.09 男女差6.03
  • 令和5年 男81.09 女87.14 男女差6.05
  • 令和6年 男81.09 女87.13 男女差6.03

長期的なデータを見ると、男女ともに平均寿命が大きく延びており、「人生100年時代」が現実味を帯びてきたことを実感することができます。

長くなった老後を豊かに過ごすためには、現役時代からの計画的な貯蓄や資産形成、さらには公的年金制度への理解が大切となってくるでしょう。

5. まとめにかえて

本記事では、相続時の銀行預金の取扱いについて解説してきました。

相続手続きは頻発するものではないため、実際に発生した際に慌てることがないようにしっかりと確認しておきましょう。

また、「争族」になってしまわないように、ご自身の資産についても整理しておくことが大切です。

エンディングノートなどを活用して、資産状況を整理しておくという選択肢もあります。

参考資料