日々の生活のなかで物価高騰を実感する機会が増え「このまま貯蓄と年金だけで老後を乗り切ることはできるのだろうか」と不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
特に主な収入源が年金となる70代では、現役時のように収入を大きく増やすことは容易なことではありません。
実際に厚生労働省の調査によると、高齢者の5割以上が生活苦を感じているというデータもあります。そこで本記事では、70代夫婦世帯の状況について詳しく解説していきます。
具体的には、平均貯蓄額・月の生活費・年金額の3つを公的なデータに基づいて触れていくので、気になる方はチェックしてみてください。
※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。
1. 高齢者の5割以上が生活苦を感じているという結果に
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の生活意識は下記の結果となりました。
【高齢者世帯】
- 大変苦しい:25.2%
- やや苦しい:30.6%
- 普通:40.1%
- ややゆとりがある:3.6%
- 大変ゆとりがある:0.6%
生活が「大変苦しい」「やや苦しい」と感じた世帯の割合は55.8%になっています。
次章では、公的なデータを活用しながら高齢者世帯の生活をより深掘りしていきます。なお、ここで紹介するのは傾向を示したものであり、各世帯の生活実感や家計状況は大きく異なるという点はおさえておきましょう。
2. シニア世帯の平均年金受給額はいくら?
まずは高齢者世帯の生活を支えている年金受給額について解説していきます。今回は厚生労働省年金局による「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに紹介します。
2.1 国民年金の平均受給金額
【国民年金】
- 全体:5万7584円
- 70〜74歳:5万8421円
- 75〜79歳:5万7580円
2.2 厚生年金平均受給金額
【厚生年金】
- 全体:14万6429円
- 70〜74歳:14万4520円
- 75〜79歳:14万7936円
国民年金と厚生年金ともに、70代の年金受給額は全体の金額から大きな差がないことが確認できました。ただし、国民年金と厚生年金を比較すると受給金額に約9万円の乖離があり、国民年金だけでは生活費を賄うことが難しいと考えられるでしょう。
次章では、年金受給額の実態を踏まえながら、70代の夫婦がどのように家計を維持しているのか見ていきます。
3. 70代の無職夫婦世帯の月の生活費と平均貯蓄額
まずは月の生活費から確認していきましょう。
3.1 月の生活費
総務省統計局の家計調査によると、70代の家計収支は以下の通りです。なお、今回は70代以上の家計収支が含まれないように、75歳以上の数値は除き、70〜74歳の範囲を70代として言及していきます。
【70代(70〜74歳)の平均支出額】
- 消費支出26万9015円、非消費支出3万4824円
【70代(70〜74歳)の平均実収入】
- 27万5420円
【70代(70〜74歳)の家計収支】
- ▲2万8419円
70代(70〜74歳)の家計収支は、実収入よりも支出額の方が上回っているのが現状です。具体的には、平均で約2万8000円の家計赤字となっており、前章で紹介した平均年金受給額を考慮すると、年金収入のみで家計を賄うのは厳しいといえるでしょう。
特に70代の国民年金平均受給額は約6万円であったため、今回の支出額で生活するには年金収入以外の収入源を確保する必要があります。
3.2 平均貯蓄額
次に平均貯蓄額を確認していきましょう。
※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
【70代二人以上世帯の平均貯蓄額】
- 平均:1923万円
- 中央値:800万円
平均では約1900万円ですが、より実態に近い中央値では800万円という結果になっています。中央値が示す800万円という金額は決して低い水準ではありませんが、月の家計収支が▲2万円で維持されると考えた場合には十分とは言えない可能性があります。
加えて、病気や介護といった思わぬ出費が発生することも踏まえると、貯蓄の減りが早まることも想定されます。必要に応じて収入源を増やしたり家計収支を見直したりといった対策を考えるのも選択肢のひとつです。
また、今回の調査によると70代のすべての世帯で十分な貯蓄を保有しているわけではないことも確認できます。このような世帯では、家計赤字が続くと生活が困難になる可能性があるため、より早い段階での収入や支出の見直しが必須といえるでしょう。
4. おわりに
厚生労働省による国民生活基礎調査では、高齢者の約55%が生活にゆとりを感じていないという結果になりました。さらに、年金受給額や月の収支を深掘りしていったところ、年金だけでは生活を賄いきれない世帯がある事実も確認することができました。
また、70代の二人以上世帯では平均約1900万円の貯蓄があるものの、中央値では800万円と大きな乖離があることから貯蓄保有額に大きな乖離があることも読み取れます。
加えて、貯蓄がほとんどない世帯も一定数存在していることからも、昨今の物価高騰の影響を踏まえるとより生活が苦しい状況に直面している高齢者が少なくないと推測されます。
こうした状況のなかで家計の負担を少しでも軽減するためには、公的支援制度を活用するのも選択肢のひとつです。例えば、年金受給額などが一定金額を下回っている場合に支給される「年金生活者支援給付金」などがあげられます。
給付金の支給要件等が定められているものの、該当する可能性がある方はぜひ一度確認してみてください。
参考資料
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金」
湯田 浩平