3. 年金収入だけで医療費が「3割負担」になる人はどのくらい?
前述のとおり、医療費が3割負担になる目安は、単身世帯で約383万円以上、夫婦世帯で約520万円以上の収入がある場合です。
では、年金収入だけでこの「現役並みの所得」に該当する人は、どの程度いるのでしょうか。
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、全体・男女別の平均年金月額と、受給額ごとの受給権者数を見てみましょう。
【国民年金の平均月額】
- 全体 5万7584円
- 男性 5万9965円
- 女性 5万5777円
【厚生年金の平均月額】
- 全体 14万6429円
- 男性 16万6606円
- 女性 10万7200円
※国民年金部分を含む
仮に単身で月額14万円(年間約168万円)の年金を受け取っている場合、他に収入がなければ医療費の自己負担は1割負担にとどまります。
一方で、年金だけで「月額30万円以上」を受け取っている人はごく少数です。
そのため、3割負担となる多くの高齢者は、年金に加えて給与所得・事業所得・利子・配当などの副収入を得ているケースが中心とみられます。
再雇用やパート勤務などで一定の収入を得ている場合には、所得区分が変わって医療費負担が増える可能性もあるため、年金額と併せて年間所得を正確に把握しておくことが重要です。
4. まとめ
後期高齢者医療制度において医療費が「3割負担」となるのは、単身で約383万円以上、夫婦世帯で約520万円以上の収入がある人です。
多くの年金受給者はこの基準を下回るため、1割または2割負担に該当しますが、再雇用やパート収入などがあると区分が変わる可能性があります。
また、2025年9月末で2割負担者への経過措置が終了し、10月以降は医療費負担が実質的に増えています。
将来の医療費リスクを抑えるためにも、年金や副収入を合わせた年間所得を把握し、負担割合や医療費上限を早めに確認しておきましょう。
参考資料
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
加藤 聖人
