次回の年金支給日は12月15日です。何かと物入りな年末年始に向けて、この日を楽しみに待つシニアも少なくないでしょう。
標準的な夫婦世帯では、厚生年金(国民年金を含む)が2人分で23万2784円となります。
ただし、年金からは税金や社会保険料が天引きされることが一般的です。これにより、実際に手元に入る金額は額面よりも少なくなります。
老後生活を考えるにあたって、手取り額も意識した計画が必要になるでしょう。実際、高齢者世帯のうち「生活が苦しい」と回答した割合は5割超にのぼることもわかっています。
本記事では、年金から天引きされる5つの項目についてくわしく解説していきます。
1. 2025年度の年金額「標準的な夫婦」なら月額23万2784円に
現役当時の年金加入実績によって年金額が決まるため、受け取れる老齢年金には大きな個人差があります。
また、賃金や物価の動向を踏まえて毎年度見直される仕組みで、2025年度(令和7年度)の年金額は前年度比で1.9%引き上げとなりました。
国民年金(老齢基礎年金)の満額は6万9308円です。
そして標準的な報酬を得ていた会社員+専業主婦というモデル世帯では、厚生年金(国民年金を含む)が2人分で23万2784円となりました。
ただし、年金から「税金や保険料」が天引きされることにより、実際の手取り額はもっと少なくなることがほとんどです。
次回の支給日である12月15日支給の年金からも容赦なく天引きされるお金について解説します。
2. 年金から天引きされる「税金・保険料」の正体とは?
毎月の給与や賞与からも天引きされている、税金や社会保険料。額面と手取りのギャップに落ち込む人は多いと思いますが、年金からも同様に天引きされるのです。
公的年金から天引きされるお金は、主に次の5種類です。
- 所得税と復興特別所得税
- 住民税と森林環境税
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
※国民健康保険料か後期高齢者医療保険料かどちらか一方のみとなり、同時に天引きされることはありません。また、上記のお金が年金から天引きされるにはそれぞれ要件があるため、天引きされないこともあります。
くわしく見ていきましょう。
2.1 所得税・復興特別所得税
所得税は個人の所得に対してかかる税金で、課税所得※に税率を適用して計算します。平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生ずる所得について、源泉所得税を徴収する際は復興特別所得税も合わせてかかります。
※課税所得は、年金支給額から基礎控除・公的年金等控除・配偶者控除や扶養控除などを差し引いた所得額です。
所得194万9000円までであれば、復興特別所得税を含む所得税率は5.105%です。
2.2 住民税と森林環境税
住民税は、1月1日時点に住んでいる自治体に納める税金です。前年中の所得に応じて課税される「所得割」と、一律で課税される「均等割」にて計算されます。
2024年10月からは、個人住民税と合わせて森林環境税も年金から天引きされています。
2.3 介護保険料
65歳以上になると、介護保険料を単独で支払うことになります(それまでは健康保険料に上乗せする形で納付)。金額は居住地や所得によって異なります。
一例として、東京都江戸川区では所得段階が19段階設けられており、あてはまる段階に応じた保険料を納めることになります。
なお、要介護認定を受けて介護状態になっても、介護保険料は一生涯支払うことになります。
2.4 国民健康保険料
国民健康保険に加入する年金生活者の場合、国民健康保険料も年金から天引きされる可能性があります。
国民健康保険料は「医療分」「支援分」「介護分」で構成されており、それぞれ決められた「所得割」と「均等割」で計算されます。
前述のとおり、65歳以上になると介護保険料を切り離して納めることになるため、介護分はなくなります。
お住まいの自治体によって、所得割の税率や均等割額が異なります。
2.5 後期高齢者医療保険料
原則として75歳を迎えると誰もが後期高齢者医療制度に加入し、その保険料も要件を満たせば年金から天引きされます。
所得割と均等割にて算出され、都道府県によって若干異なります。
参考までに、2025年度の都道府県別の保険料について、「年金収入が195万円だった単身世帯」の例を見ていきましょう。
- 全国:5673円
- 北海道:6325円
- 青森県:5415円
- 岩手県:4808円
- 宮城県:5216円
- 秋田県:5042円
- 山形県:5283円
- 福島県:5056円
- 茨城県:5358円
- 栃木県:4991円
- 群馬県:5567円
- 埼玉県:5067円
- 千葉県:5008円
- 東京都:5355円
- 神奈川県:5440円
- 新潟県:4850円
- 富山県:5033円
- 石川県:5573円
- 福井県:5458円
- 山梨県:6003円
- 長野県:5156円
- 岐阜県:5400円
- 静岡県:5275円
- 愛知県:6117円
- 三重県:5475円
- 滋賀県:5371円
- 京都府:6180円
- 大阪府:6495円
- 兵庫県:6134円
- 奈良県:5833円
- 和歌山県:6125円
- 鳥取県:5892円
- 島根県:5618円
- 岡山県:5758円
- 広島県:5438円
- 山口県:6408円
- 徳島県:6033円
- 香川県:5892円
- 愛媛県:5719円
- 高知県:6100円
- 福岡県:6641円
- 佐賀県:6250円
- 長崎県:5792円
- 熊本県:6259円
- 大分県:6509円
- 宮崎県:5675円
- 鹿児島県:6592円
- 沖縄県:6410円
同じ年収の場合でも、都道府県によって保険料に月額約1800円の差が生じています。
3. 高齢者世帯の5割超が「生活が苦しい」と回答
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の5割超が「生活が苦しい」と回答したことがわかっています。
- 大変苦しい:25.2%
- やや苦しい:30.6%
- 普通:40.1%
- ややゆとりがある:3.6%
- 大変ゆとりがある:0.6%
「大変苦しい」「やや苦しい」を合わせた、いわゆる「苦しい」と回答した人の割合は55.8%に達しています。
つまり、高齢者世帯では「普通」と答えた人よりも、生活に厳しさを感じている人のほうが多い状況となっています。
さらに同資料によると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である高齢者世帯は43.4%となっています。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
半数以上は年金以外で補填しているとも捉えられます。
4. まとめ:手取りを意識した老後設計を
2025年度の年金額は1.9%増額されましたが、年金からも容赦なく「税金・保険料」が天引きされるため、手取り額は額面よりも少なくなります。
年金から天引きされるのは、主に以下の5項目です。
- 所得税・復興特別所得税
- 住民税・森林環境税
- 介護保険料
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
実際、高齢者世帯の5割超が「生活が苦しい」と回答しており、年金に頼る世帯が半数近くを占める中で、手取りを意識した計画的な老後生活設計が不可欠です。
次回の年金支給日である12月15日を前に、ご自身の天引き額を確認し、老後資金計画を見直しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から 1.9%の引上げです」
- 江戸川区「介護保険料について」
- 江戸川区「国民健康保険料の計算方法」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」
太田 彩子