日本企業は新卒一括採用が普通なので、新年度となった今月初め、各社一斉に入社式が行われました。この制度は合理的なので今後も変わらないだろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。
就活時期の変化は新卒一括採用とは無関係
経団連が就活のスケジュールを決めなくなると、就活スケジュールが変わり、それによって新卒一括採用の慣習が崩れるかもしれない、と考えている人がいるようですが、そうはならないと思います。
就活スケジュールが変わると言っても、大学卒業時に新卒一括採用をすることを前提として在学中に採用活動をすることは従来どおりであり、その時期を在学中のいつにするのか、というだけの話だからです。
それ以外にも、新卒一括採用が変わらないと考える理由は複数あります。「そもそも新卒一括採用・終身雇用は合理的だから」「新卒一括採用・終身雇用は日本人に合っているから」「新卒一括採用が変化する契機が見えないから」といったところでしょう。以下、順に見ていきましょう。
新卒一括採用・終身雇用には合理的な面も
新卒一括採用は非合理的だから、米国的な採用に変えるべきだ、という人がいますが、どちらも一長一短であり、変えるべきだとは言えないでしょう。
日本企業の新卒採用はポテンシャル採用ですから、「今何ができるか」ではなく、「鍛えれば使い物になりそうか」が問われます。そして入社後は、様々な仕事を経験します。そうした働き方を「メンバーシップ型」と呼びます。
プロ野球の球団が「野球の経験はありませんが、体力と運動神経には自信があるので、立派な野球選手になれると思います」という学生を採用し、投手も捕手も代打も経験させる、といったイメージですね。
多くの人はジェネラリストとなり、あるいは得意分野を見つけてスペシャリスト的な働き方をする人も出てくるでしょうが、いずれにしても様々な仕事を知っているので、視野が広がるとともに、他の部署の事情も理解できるので、部門間の調整等も容易になります。
欧米型の採用には問題も
一方で欧米企業の採用は即戦力採用ですから、「投手募集。投手としての実績のある人優先」というわけですね。「私は投手です。たまたま今はA球団にいますが、給料が高いB球団への移籍を希望します」という人を採用するわけです。こちらの方が日本のプロ野球界に近いですね。
雇う側としては、専門性の高い人材が採用できるというメリットがありますが、働く側は大きなリスクに晒されます。最初にどこかの三流企業で投手として採用され、実績を積めば一流企業に転職する可能性もありますが、最初に三流企業に採用されるまでが大変です。現に欧米では若者の失業率が高くなっていますし、運が悪ければ一生無職で過ごすリスクも小さくありません。
また、たまたま最初の採用が投手だと、一生投手として過ごすことになります。もしかすると、捕手としての才能が素晴らしいものであったとしても、その才能が発見されることがないまま一生を終えることになるわけです。
日本人には終身雇用が似合っている
医学の知識になりますが、日本人は、不安を感じさせる遺伝子(SS型セロトニントランスポーター遺伝子)を持っている割合が高いそうです。災害が多い日本列島で生き延びるには、不安を感じてリスクを避ける人の方が有利だったということなのでしょうか。