3. 「年収106万円の壁、いよいよ撤廃へ」年金制度改正法成立、私たちの暮らしと年金はどう変わる?

ご自身の年金見込額を確認したら、次に考えたいのはるべきは世帯全体の年金収入ですね。特に、配偶者の働き方次第で将来の年金額は大きく変動します。

この世帯の老後設計に劇的な変化をもたらすのが、2025年に成立した年金制度改正です。

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、アルバイト・パートなどの働き方と関わりが深い、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が含まれています。

3.1 「年収106万円の壁」とは?

「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自分自身で保険料を支払う義務が発生する目安です。

保険料負担で手取りが減ることから、収入が基準額を超えないよう労働時間をコントロールする「働き控え」が生じる原因の一つとされてきました。

また、社会保険の適用対象となる企業規模はこれまで段階的に拡大されてきて、2024年10月からは「51人以上」の事業所となっています。

今回の改正では「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件の段階的撤廃」がおこなわれることが決まりました。

3.2 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

2025年7月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の改正により、このうち4の「賃金要件」と5の「企業規模要件」が撤廃されます。

いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、3年以内に廃止へ。社会保険に加入する企業の規模は、10年かけて段階的に拡大されます。

4. まとめにかえて

今回は、年金制度の基本に触れたあと、男性の厚生年金受給額事情を見てきました。

50歳代に入り、よりリアルな年金見込額を知った今だからこそ、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご自身の見込額を確認し、現状と理想のギャップを埋める対策を、具体的に考えていく必要があります。

また、先ほど触れた「年収106万円の壁」の撤廃は、働き盛り世代の老後設計を大きく見直すチャンスです。

これまでは手取り減を避けるため、パートタイムの配偶者が働き控えをするケースも一般的でした。

しかしこの先、夫婦ともに積極的に社会保険に加入して働くことで、「年金の2階部分(=厚生年金)」を確実に積み増していける可能性が高まります。一時的な手取りの減少よりも、終身給付である老齢年金収入の安定を考えてみる視点も大切となるでしょう。

ご自身の年金だけで老後資金を賄うのではなく、世帯全体でどう働き、どう備えるか。NISAなどを活用した資産形成とあわせ、最新の制度を踏まえたマネープランの再構築が、豊かな老後を迎えるための鍵となります。

参考資料

マネー編集部年金班