5. 貯蓄の取り崩しで赤字を賄うなら2300万円以上が必要に
月3万4058円の赤字やその後の介護にかかる費用を見積もると、概ね2300万円程度の貯蓄が必要です。働かずに余裕のある暮らしをしたい方は、早めに準備を進めておきましょう。
5.1 生涯の生活費の赤字累計は1226万円
先に紹介した通り、月々の支出は合計で28万6877円に対して収入は25万2818円で、毎月3万4058円の赤字が発生します。
仮に65歳から95歳まで30年間生きるなら、総赤字額は1226万880円です。仕事などで別に収入を獲得しない場合は、この金額を貯蓄の取り崩しで捻出する必要があります。
5.2 介護費用は一人当たり平均542万円
長命化するなか、介護サービスを利用する可能性も一定程度あるでしょう。できれば子ども世帯や親族に頼らず、自分で費用負担ができるように備えておくのが望ましいといえます。
公益財団法人「生命保険文化センター」によると、一人あたりの介護にかかる費用の平均値は次のとおりです。
- 一時金の平均額:47万2000円
- 月々の費用は9万円
- 一人の平均的な介護期間:55か月
以上をふまえると、1人あたりの総介護費用は平均約542万円、二人合わせると約1084万円です。
生活費の補てん1226万円と介護費用1084万円を合計すると、およそ2310万円となります。この金額を貯蓄で用意しておけば、仕事をせずとも平均的な老後生活を送ることができます。
6. まとめにかえて
今回は、シニア世代の年金受給額や、60歳代・二人以上世帯で「貯蓄3000万円」を持つ割合、さらに1カ月の生活費について見てきました。
物価が上がり続ける中、年金だけでは将来に不安を感じる方も少なくありません。そんな中、老後の暮らしを支える方法のひとつとして「資産運用」を考える人も増えています。
もちろん、資産運用にはリスクがあります。だからこそ、無理をせず、自分の性格や生活スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。焦らず、長い目で見ながら、少しずつ準備を進めていきましょう。
参考資料
- J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 金融庁「つみたてシミュレーター」
- 総務省統計局「高齢者の就業(労働力調査、OECD.Stat)」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
- 財務省「『固定5年』発行条件」
中本 智恵