3. 年金加入経歴別【年金パターン5例】も見てみる
働き方や生き方が多様化する今、「将来、自分はどのくらいの年金を受け取れるんだろう?」と気になっている人もいるでしょう。
厚生労働省は、今回の年金改定の発表と同時に、多様なライフコースに応じた年金額例も示しています。
ここでは、年金加入経歴を5つのパターン(男性2パターン、女性3パターン)に分類し、「2025年度に65歳になる人」を想定した年金額の概算が提示されています。

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
3.1 パターン①:男性・厚生年金期間中心
年金月額:17万3457円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万8671円
- 厚生年金:10万4786円
3.2 パターン②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心
年金月額:6万2344円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8008円
- 厚生年金:1万4335円
3.3 パターン③:女性・厚生年金期間中心
年金月額:13万2117円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万566円
- 厚生年金:6万1551円
3.4 パターン④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心
年金月額:6万636円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万2151円
- 厚生年金:8485円
3.5 パターン⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心
年金月額:7万6810円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万7754円
- 厚生年金:9056円
上記のデータからは、厚生年金に長く加入し、かつ収入が高かった人ほど、老後の年金額は多くなる傾向があることが分かります。
現役時代に「国民年金の期間が中心だったか」「厚生年金の期間が中心だったか」により、老後の年金水準が大きく変わるわけですね。
働き盛りの現役世代にとって、いまの働き方や収入は、目前の家計だけではなく、遠い将来の年金額を左右する重要な要素となるのです。
4. まとめ
総務省のデータによると、標準的な65歳以上単身無職世帯は毎月約2万8000円の赤字を抱えており、公的年金だけでは生活が成り立たない実態があります。老後の年金額が現役時代の厚生年金加入期間や収入に大きく左右されることも明らかです。
40代・50代は、住宅ローンや親の介護費用などで支出がかさむ一方、老後生活を変える最も重要な準備期間です。将来の経済的不安を解消するためには、お金・キャリア・健康の3つの柱をバランス良く整えることが不可欠です。
長期的な資産運用に加え、「ねんきん定期便」を確認しつつ、長く働くためのスキルアップや、医療費負担を抑えるための健康維持にも意識的に取り組む必要があります。
「お金」「キャリア」「健康」ともに、一朝一夕では完成しません。早めの行動こそが、将来の安心に繋がっていきます。
また、年金を始めとする公的な支援制度への関心も持っておきましょう。
働くシニアを後押しする「再就職手当」「高年齢雇用継続給付」「高年齢求職者給付金」、老齢年金の「繰下げ受給」や、年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」なども必要に応じて活用する視点を持つことも大切です。
5. 【コラム】最大84%年金が増える「繰下げ受給」増額イメージをグラフで見てみる
老齢年金の受給開始を「繰下げ受給」のしくみを使って後ろ倒しすると、繰下げた月数に応じて年金額が増えます。
繰下げ受給の増額率は、以下の計算式で表すことができます。
増額率(最大84%※1) = 0.7% × 65歳に達した月※2から繰下げ申出月の前月までの月数※3
※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなるため増額率は最大で42%となる
※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になる
※3 65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算される
繰下げタイミングの上限となる「75歳0か月」で受給した場合、増額率は84.0%です。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2024年)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
マネー編集部貯蓄班
