米マイクロンテクノロジーが、組立・テストなど後工程生産における内製化を強力に推し進めている。新たにマレーシア・ペナン工場でNANDおよびSSDの組立・テスト工場の新設に着手しているほか、台湾ならびに日本でも従来のアウトソーシングから自社オペレーションへの切り替えを次々と行っており、大きな戦略転換を図っている。
CEO交代以降、内製化が加速
2017年にサンディスク(ウエスタンデジタルが買収)共同創業者のSanjey Mehrotra(サンジェイ・メイロトラ)氏がCEOに就任して以降、後工程における内製化戦略が続々と打ち出されている。ファブオペレーションなどCOO的な役割を果たすMahish Bhatia(マニッシュ・バーティア)氏も、18年10月のインタビュー時に「現在はアウトソースの割合が過半を超える状況だが、将来的にはインハウスを主体とした生産体制に移行させていく」と語っており、内製化戦略を推進する考えを明らかにしている。
従来、マイクロンの後工程生産はOSAT(半導体後工程の組立とテストを請け負う企業)の活用に軸足が置かれていたが、スケールメリットの追求に加え、リードタイム短縮が図れるとして、こうした戦略転換を図っているものと見られる。
テスト分野では、国内のテラプローブに委託していた広島工場(Fab15)内のDRAMウエハーテストのオンサイトオペレーション事業を18年5月に取得。広島工場内で遊休施設となっていた200mm棟にテスターを移設し、移設によって空いたスペースを今後取り壊して新たに前工程のクリーンルームスペースとして活用するプランを持つ。また、将来的にはウエハーテスト工程そのものを台湾の台中地区に移管する構想もあるようだ。
その台湾では、台中工場(Fab16)の真向かいに後工程工場を新設。18年後半から生産活動をスタートさせた。マイクロンは台湾をDRAM生産における「Center of Excellence」と位置づけており、今後より一層台湾中心のオペレーション体制を強化していく構えだ。
ペナン新工場は19年前半に完成
台湾がDRAM事業の中心拠点であるのに対し、NAND事業はシンガポールがその役割を担う。シンガポールには前工程ファブが集積しており、足元ではメモリー市況の悪化に伴い設備投資を中断しているものの、クリーンルームの拡張に積極的に動いている。
一方、後工程は隣接するマレーシアの役割が高まっている。もともと、ムーア工場を所有していたが、新たにペナンにSSDの組立も兼ねたNANDの後工程工場を建設すると18年11月に発表。向こう5年間で15億マレーシアリンギット(3.57億ドル)を投じて、生産体制を整備する。19年後半には工場が完成、2年後のフル稼働を目指す。
内製化を推進することで、OSATはマイクロンからの委託量減少という事態に直面している。特にメモリーOSAT大手の台湾パワーテック・テクノロジー(力成科技)はもともと、旧エルピーダメモリの時代から主力委託先として機能していただけでなく、中国・西安で合弁の後工程工場を運営するなど関係が深い。パワーテックだけでなく、OSE(華泰電子)などの中堅メモリーOSATも今回の方針転換による影響は無視できず、主要顧客からの売り上げ減少という事態は避けられそうにない。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳