「人生100年時代」と言われ、平均寿命が延びている今、長生きできる喜びと同時に、老後の生活にお金の不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
11月は、年末に向けて家計や資産を見直す絶好のタイミングです。紅葉が深まり、来年の計画を考えるこの季節、老後資金についても一度立ち止まって考えてみませんか。
内閣府が発表した「2024年度 年次経済財政報告」によると、老後に不安を抱える60歳代・70歳代世帯の60%以上が、その原因として「十分な金融資金がない」ことを挙げています。
「老後資金」と聞いて、かつて話題になった「2000万円」という金額を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、これを貯金だけで準備しようとすると、20年間で毎年100万円、つまり月々8万円以上を貯め続ける計算になり、ハードルが高く感じられます。
そこで本記事では、新NISA制度を活用した積立投資によって、20年間で老後資金2000万円を築くことは可能なのか、具体的なシミュレーションを通じて検証します。将来の安心のために資産形成をお考えの方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
1. 月3万円の積立投資シミュレーション
まずは、NISAを利用して月3万円の積立投資を行った場合に、資産2000万円を目指すことができるのかを見ていきます。
新NISA制度のつみたて投資枠で選択できる商品は、基本的に大きなリスクがなく、安定的な利率が予測されるものとなっています。商品価値の急落や急騰がないため、年利率がそこまで大きくなることもないのが特徴です。そのため、今回のシミュレーションでは安定的な利率として3%と5%という利率を用いてシミュレーションを行います。
1.1 パターン1〜年利3%
【積立条件】
- 積立金額:月額3万円
- 年利率:3%
- 積立期間:20年間
【シミュレーション結果】
- 積立元本:720万円
- 積立後の総資産額:981万円
- 運用収益:261万円
1.2 パターン2〜年利5%
【積立条件】
- 積立金額:月額3万円
- 年利率:5%
- 積立期間:20年間
【シミュレーション結果】
- 積立元本:720万円
- 積立後の総資産額:1217万円
- 運用収益:497万円
1.3 「新NISAで月額3万円」2000万円は可能か
今回の2つのシミュレーションでは、利回り5%でも20年後の資産額は1217万円と、2000万円には及びませんでした。新NISA制度のつみたて投資枠を使用した、安定的な投資をする場合、月額3万円・20年という金額と期間では、そこまでの資産を形成することは難しいことがわかりました。
2. 「資産2000万円」を達成させるための投資シミュレーション
それでは、どのような条件が揃った場合に、積立投資によって2000万円という資産を達成することができるのでしょうか。
利率や投資金額を変えて考えていきます。
2.1 高利率を狙う
1つ目のパターンとして、高利率な商品を狙う場合です。
【積立条件】
- 積立金額:月額3万円
- 年利率:9.5%
- 積立期間:20年間
【シミュレーション結果】
- 積立元本:720万円
- 積立後の総資産額:2032万円
- 運用収益:1312万円
年利率が9.5%で運用をした場合には、月額3万円の投資であっても20年間で2000万円を達成することが可能です。
ただし、年利率9.5%の運用は、基本的にリスクが大きくなりやすい「アクティブファンド」と言われる商品での運用などで狙うことができる、高利率な状態です。
このような商品による運用はリターンが大きい一方でリスクも大きいため、元本割れをする可能性も高く、そもそも新NISA制度のつみたて投資枠では選択肢としてもほとんどない場合が多いです。
2.2 投資額を変える
2パターン目として、月の投資額を変えて2000万円を目指すケースです。
【積立条件】
- 積立金額:月額5万円
- 年利率:5%
- 積立期間:20年間
【シミュレーション結果】
- 積立元本:1200万円
- 積立後の総資産額:2029万円
- 運用収益:829万円
毎月の投資金額を3万円から5万円に変えることで、年利率がそれなりに安定的な5%という数字であっても、20年間で2000万円を達成することも可能です。
しかし、月5万円という投資金額は、決して少なくはないため、無理をして捻出をすると継続が難しくなる可能性もあります。
積立投資は継続をすることでリスクを最大限に減らして安定的な資産形成ができるというメリットが活きてくるため、無理な金額設定はしないことをおすすめします。
生活資金にある程度余裕がある人などで、将来のための資産をしっかりと作りたいと考えている人に向いている投資方法と言えます。
3. 「資産2000万円」は必要か
今回のシミュレーションから、「20年間で2000万円の資産形成」をするためには、比較的リスクの高い投資商品を選ぶか、毎月5万円程度の継続的な投資が必要だということがわかりました。
しかし、世間で話題になった「老後2000万円」という数字は、すべての人に当てはまる絶対的なものではありません。必要な老後資金は、ライフスタイルや住居の状況、年金受給額、健康状態など、個人によって大きく異なります。
重要なのは、自分自身の老後の収支をシミュレーションし、収入と支出のギャップを埋めるために必要な金額を具体的に算出することです。その結果、予想以上の資金が必要と判明した場合は、支出の見直し、働く期間の延長、副収入の確保など、複数の観点から対策を考えることができます。
「2000万円」という数字に縛られるのではなく、できるだけ早い段階で、あなた自身の人生設計に基づいた現実的な目標を立てることが、必要な資産形成への第一歩となるのです。
4. おわりに
本記事では、新NISA制度を活用した積立投資のシミュレーションをご紹介しました。つみたて投資枠の商品は、市場と連動して比較的安定した値動きをするという性質を持つため、大きな資産形成には相応の投資額と時間が必要となります。
しかし、新NISA制度のつみたて投資枠のメリットは、将来を見据えた現実的な目標設定と、無理なく続けられる投資計画によって最大化されます。生活を圧迫するような無理な積立は長続きせず、かえって複利の恩恵を受ける機会を失ってしまいます。
今回のシミュレーションが、皆さまの将来設計の一助となれば幸いです。ご自身のライフプランと照らし合わせながら、無理のない、しかし着実に前進する投資計画を立ててみてください。小さな一歩の積み重ねが、いつか大きな安心へと変わるはずです。




